カレーですよ5615(市ヶ谷 スパイス欧風カレー PAIKAJI)ハンバーグと黒糖プリン。

カレーという料理をなめるなよ、と思うんです。カレーは全部がカレーライスなのではないからね。カレーライスもあれば美しいソースとしての、西洋料理としてのひと皿もあるからね。食べて気が付かないのは、それは愚というものです。

 

 

カレーですよ。

 

 

ひと仕事終えました。現場は四ツ谷。四ツ谷でなにか探すかなあ、と思ったんですが(試食でお腹いっぱいだったけど/笑)少し歩くことにしました。腹ごなしであるよ。試食は実質2食分食べました。美味しかった。

しかしそれは仕事腹。プライベートカレーを食べねばならぬ、ということです。久しぶりになってしまった(最近このセリフばかりだよ)市ヶ谷へ。

 

「スパイス欧風カレー PAIKAJI」

 

です。

店に入ると14時近くなってもちゃんと席がうまり、お客がまわるという素晴らしさ。推しも推されぬ繁盛店、人気店だよねえ。他のお店とは違う香ばしい香り漂う店内。これはハンバーグかバーグカツか。お肉のエキスのいいにおいが幸せな気持ちにさせてくれます。スパイスの香り以上に漂うこのお肉のいいにおいで俄然やる気が湧いてきたよ。

カレー専門店ですが流石の元ビストロ。いいにおいにやられて本当は例のオリオンビールで煮込んだラフテーのカレー(神田カレーグランプリ決定戦2025でのマイスター賞受賞作品)にしようと決めていたものの、あっさりと、

 

「ハンバーグカレー」

 

に鞍替え。仕方がないんです。だってすごくいい匂いだから。

「PAIKAJI」はレストランとしてちゃんとしてる、といつも思います。料理とサービス、両輪あってのレストラン。やす子さんの気遣いがそこここに光る。こうね、なんというか、当たり前なんだけどきちんと心からありがとうございますが出ていて、お見送りがあったり声掛けがあったり。そう言うのできてないお店のなんと多いことか。

間違ってもらっちゃいけないんだけど、そういうのがあるかないかで優劣がってのとはまた話しが違うんだよ。レストランとして営業しているのか、それとも食堂、キャンティーンでやっているのか。そのスタイルの在りどころでいい悪いが決まるからね。

レストランとしてやりたいのならそういうものは当たり前にないとダメだし、たとえば押上のスパイスにはそれがかっちりとあります。デリーは面白くて、銀座店はレストランとしてそういうものを持っており、上野店は食堂であるからしてそういうのは必要ない。棲み分けができていて、さすがの有名店、老舗であるなあ、と感心します。ただ漫然とやってないんだよね。

ここ「スパイス欧風カレー PAIKAJI」はベラボットや接客マニュアルに嫌気が差したら行くべきお店。それこそがレストランだと思います。差が出るところとは柔らかで思いあるな気遣いなどこういう部分。

案内いただいた席で椅子に背中をまかせてリラックス。ゆっくりと待ちたくなる空気感です。ああ、漂うこのにおいはきっと自分の分のハンバーグが焼ける匂い。たまらない時間だなあ。

さてやってきたのがこれ。まずはカレーソースの香りがとてもいいのです。喉鼻を吹き抜ける風のような青々しさも心地よい香り。欧風であるにもかかわらず軽やかさを感じさせる、美しく繊細な味。副菜のニンジンラペの柑橘の爽やかさがまた花を添えてきます。ああ、いいなあ。

その一方、スパイス使いはちゃんと「南の島から来たカレーだなあ」と感じさせてくれる凄みがあります。言葉じゃなく味でそういうのをこちらに送ってよこしてくるの、すごいな。黙って食べてそれがぐいっと伝わるんですよ。お客が勝手に「このカレーの色は石垣サンセットオレンジ」とかポエムをつぶやくんではなかろうか。そんな感じです。

そしてハンバーグ。これがどうにも良いハンバーグなんであるよ。良いお肉をいただくこの喜び!その美味しさでぐいっと押してくる、そういう圧に気持ちよく押し潰されながらハンバーグを食すわけです。たまらんたまらん。本当に美味しくてカレーソースに浸すの勿体無い!と思ってしまうんですが(ハンバーグ好き)さにあらず。ごはんとハンバーグでも美味しいい!カレーを合わせてもたまらない!万能バーグでありました。

テーブルにやってくるお水のコップ、白湯も選べるのはとても助かります。からだに穏やかでこういうところからも気遣いが感じられます。そういうものも含めてとにかく要素ひとつひとつ、すみずみまで行き届いたテーブル、行き届いた皿なのです。

 

食事が終わってお客さんたちが帰って。戸塚シェフとやすこさんがテーブルに来てくださいました。しばしおしゃべり。おふたりと話し始めると、お店の営業中の柔らかな空気感から少しエッヂが効いた空気に切り替わります。

わたしが専門家であることと、厨房の中のことをやっていた時代がある背景からすこしハードコアな話しに。お二人の情熱が見え隠れする会話で、なんというか気分がいい。どんなお店でもそうでしょうが、やるからには成功を求めねばいけないし、そこが根幹になって幅広い話題に広がっていきます。こんなおしゃべりができるのも醍醐味です。

ここカレーライスが食べたい人ではなくて、美味しいものを食べたい人にすすめたい。そして早いとこミシュランの星とか取っちゃってほしい。

わたし的には「スパイス欧風カレー PAIKAJI」のカレーはそっと食べておうちに帰って2日たって。そこでふんわり思い出してそこからはっきりした記憶のまま文章を紡ぎ出せるカレーでもあり、しかし辛抱たまらずその場でスプーンをくわえたままガリガリとメモを超えた文章がほとばしってしまうカレーでもある。

ああ、たまらない。

 

追記

プリンをご馳走になっちゃった!

ハンバーグカレーを食べ終わって、すんごい満足で、でもちょっと気がついて「あっ!黒糖プリンとかメニューにあるじゃん!頼まないとダメじゃん!」とか思ってたら。絶妙なタイミングでやすこさんがすーっとプリンを持ってきてくださって!!「マジか!読心術か?!うぎゃー!!」となりました。ごちそうさまでした。

目尻に涙がにじんじゃうような、黒糖の味と香りが奥深いかためのプリンで好みすぎて悶絶しました。