
実家に行くとたまにてんやものをご馳走してもらえることがあるのです。だいたい家の掃除とか補修作業などをやった時に「夕食を食べていかないか」といわれます。義父さんからのねぎらい。
カレーなしよ。
いつも義父さんが電話で注文をしてくれます。赤いざらっとしたエンボスの厚紙に文字だけの古めかしいメニューが実家の電話台の下に置いてあって、それをみながらの注文。わたしと奥さんの注文をメモして義父さんが電話をかけます。

こういう感じ、好きだなあ。実家って感じで恒例って感じでなんか楽しい。
「中華料理 仙華」
は配達と持ち帰りのみの中華料理店。地元で長く愛されている、名店です。てんやものは「中華料理 仙華」と決まっています。ここの家ではそうなっています。わたしも「仙華」でなくては困るのよ。大好きすぎる味の大好きすぎるお店だから。
今で言うところの「町中華」的な輪郭強い味と、しかし粗雑ではない丁寧な仕事が同居する素晴らしき料理の数々。どの料理にもそういうものが感じられます。食べるととてもよくわかるんだよね。なんでも店主が横浜中華街の有名な中華料理店出身なんだとか。なるほど、この味はそういうことかあ。

極私的餃子史上ベストなのが仙華の餃子なんです。これ本当にほかに代え難い。大きなサイズともっちり厚手の皮、中の餡はニンニク強めでみっちりとしておりジャスティスなザ・ギョウザなんだよ。うーん、これはまったく文句のつけようない逸品。たまらない。

炒飯や定食類も隙がないんです。そして全部旨いので注文を選ぶのがとても困るんだよ。みんな食べたいから。炒飯なぞその魅力でいつもめろめろにさせられるわけで。エビチャーハンはこれでもかというくらいエビが入ってて、贅沢で目が潰れそうであるぞ。

そう、炒飯が全部旨いので頼みがちなんですが、この日はそこをグッと我慢して定食に行ってみる。定食なかなか食べるチャンスなかったから。つい炒飯食べちゃうから。炒飯が立ちはだかって定食への道を阻むのでなかなか辿り着かないのですよ。

よし、いちばん中華と関係なさそうなやつにするぞ、と
「生姜焼き定食」
としました。
いや、まいった。肉の量。枚数がすごい。厚切りの豚(どうやら塊から都度切り出しているらしいんだ!)は実に美味。味付けも程よく濃い目でこのお汁を白メシにぶちまけたくなる誘惑を抑えるのに苦労します。いや、やっちゃってもいいよな。でもごはんお代わり必至だなそれ。そりゃまずいな。


生姜焼きは味の方向、大きく分けると2種あると思っているんですが(甘あじ方面と生姜でキリリ系)、わたしのこのみの甘い方向でしかも甘すぎずに後味だらだらと甘味が残らないの。いやあ、まったく素晴らしい。夏に食べた冷やし中華も良かったよなあ。あれ、通年でやってくれないかしら。寒くても冷やし中華はいつでも食べたいのです、わたし。



配達できてくださる奥様も感じが良く、義父さんのことを心配してくれます(93だからね)。そういう地域の繋がりのようなものありきでやってらっしゃって、現在の形態も以前は通常のイートイン形式だったのをやめる時に常連さんとの繋がりを大事に考えて、店をやめるのではなく、地域を限定しての出前方式に変えたんだとか。こういうものこそ価値だと思うんです。
ううーん、餃子は自宅に持ち帰る分も注文すればよかったな。
