カレーなしよ(木更津 お食事とコーヒー 木かげ)奇跡の500円定食。

いましがた奇跡が起こったので記録しておこうと思います。令和7年の出来事です。

 

 

カレーなしよ。

 

 

定食屋が好きなんだよ。地域の、土着の、その場所に根を張ったなんでもない一膳飯屋のような、そういう定食屋さんがとても愛おしい。なるべく目立たない、なるべく新しくないお店がいいと思う。その土地のことをよくわかっていて、地を這うようにそこに長くあるようなお店。そういうメシ屋がたまにあるんです。

見てくれではなくて、空気感を感じとっていくと見えてくるんです。

 

「お食事とコーヒー 木かげ」

 

という店でした。木更津にありました。

なんか、ちょっと面白そうだったんだよね。「勘」のようなものかなあ。ちょっと寄ってみたくなりました。その勘がまさかあんなおどろきにつながるとはなあ。いつもなら味や雰囲気、そういうもので勘が当たったなど無邪気に喜ぶんですが。

何気ない定食店です。ロードサイドの、道からちょっと奥まった場所に立っている平屋の個店。定食屋というよりも喫茶店風の洒落た外観。店内はさっぱりとしていて華美にならず、家庭的です。うんうん、極々真っ当な商売をしてらっしゃるという空気があるね。いいと思う。よさそうだぞ。

日替わりの定食は4種、ホワイトボードに書いてありました。タラの塩こうじ焼き、串カツ・ハムカツ、カキフライ、生姜焼き。それ以外にレギュラーメニュー。カレーもあった気がしたけど、今夜は

 

「串カツ・ハムカツ定食」

 

としてみました。良いものだったんです。

ハムカツのハムは厚切りでふわふわ。串カツのネギと肉の並びも肉ネギ肉ネギときてそこで終わらずに肉が最後に来るうれしさよ。サービスをありがとう!付け合わせの冷奴も良い感じです。甘い煮物もついてきました。ご飯の量もしっかりで、もうね、いうことなしだと思う。

お茶なぞ啜って見るともなくテレビを眺めて。さて、と。お会計です。

500円。500円ポッキリなんであるよ、支払った金額が。「えっ?、、、」なにも考えずに1000円札を取り出してお母さんに渡しました。それで500円玉が返ってきた時に理解が追いつかずに混乱したんです。おどおどしてしまったぞ。そこではたと気がついたのです。ホワイトボード。

 

あ、確かにホワイトボードには「今日の定食 500」と書いてあったよな。500というのが値段と結び付かなかったんだ。そうだよ、そりゃそうだ。だってまさかそんなことがあるわけない、と頭が自然と500という文字を値段の項目から外して理解してたんだ、きっと。500と円が結び付かなかったんです。なんということだ。

なにかこう、申し訳ない気持ちでお店を出ました。わたしがすまない気持ちになったりする必要はないことはわかっているんだけどね。が、なんだかそういう気分になったよ。きっとなにか想いがあって、例えば近隣の人々への人助けであったり、何かの恩返しであったり。きっとわたしはそのメンバーに該当していないんではないか、部外の人間は入ってはいけない場所であったのでは、とね。

世情、ただお得を見つけたと喜べない時代になっている感があります。

もしかすると夢だったのかなあ。