
シンガポール肉骨茶そば、復活です。富士そば、やるなあ。
カレーなしよ。
2025年12月初頭から始まった期間限定のメニュー。12月いっぱいまでやっているとのこと。2019年、2022年に2回にわたって展開され好評を博したメニューです。みたびの再登場となりました。

松屋の一連の大使館共同開発メニューとか今回の
「富士そば」
のこういうのを見ていると、食に対する日本人のスタンスが一切ブレなく脈々と続いていることがわかります。換骨奪胎、アレンジ力も高く、海の向こうからやってきた料理たちを自らのものとしてどんどん取り入れるというやり方。

そういうものが明治以来ずっと続いている感があります。
「肉骨茶(バクテー)そば」
は790円。値上がり著しい外食産業の中にあって3桁で面白いものを食べられる富士そばに心穏やかな気持ちを覚えます。


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「シンガポール発祥のローカルフードを富士そば流にアレンジした忘年会シーズン限定メニューをぜひ、ご賞味ください。」
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とありました。なんとなく、二日酔いに効くよ、とか飲み会後の〆はこういうのがいいだろ、ラーメン的な。みたいなニュアンスを感じるのはわたしだけかしら。忘年会シーズン、ニンニク・コショウのぐいっと強めなパンチで二日酔いをやっつけろ、ということかね。

民族と食の交差点とも称されるマレーシア・シンガポール。その中にあって華系の民族料理である肉骨茶というもの。中国語で肉骨/豚肉、茶/汁という意味でポークスペアリブを漢方スパイスとニンニクなどで調整、煮込んだものです。醤油ベース豚骨と言ってもいいかもしれないな。

ルーツは肉体労働者を支える豚スペアリブ、内臓肉等が煮込まれた荒っぽい料理だったようです。マレーシアでは黒バクテー、醤油ベースで全体的に濃厚な仕上がり。シンガポールは白バクテー、今回の富士そばがモチーフとした胡椒をたっぷり効かせた色が薄め、洗練された味わいのものという2種に大別されます。
やってきた「肉骨茶(バクテー)そば」はひとめ見て「あれっ!」とおもわせる見た目です。

蕎麦屋の、関東風の見た目ではまったくないんだよね。スープが白濁しています。白いのだよ、うむむ。そこに大量のニンニクチップが浮かび、豚バラどどんと乗っかってネギが山盛り。ははあ、いかにもやる気を出させるビジュアルだねえ、鼻の下が伸びるねえ。うまそうです。が、やっぱり違和感を感じるんだよね。何しろここは「富士そば」だからさ。「富士そば」と言えば真っ黒なつゆ。これ、蕎麦じゃないな。蕎麦のことは忘れよう。

ニンニクの香りがうわっとあがってきます。たしかに麺は蕎麦の色をしているんですが、とんこつラーメンという言い方の方がしっくりくるかなあ。食べても同じ感想。こりゃあ並行世界にある「もうひとつの豚骨ラーメン/そば」だなあ。すすっている麺がまったくそばではないと感じてしまうんですよ。かと言ってラーメン感もないのね。なんだこりゃおもしろいぞ。

とはいえスープの強さに背中を押されてさらさらと完食まで持って行かれました。いやあ、まったくこれおもしろいなあ。
ちゃんと肉骨茶のニュアンスを残しながらやっぱり富士そばアレンジの世界観があります。コショウのパンチは強いけどさらにテーブルのコショウを重ねて強化するのもアリだと思うよ。

面白いものを食べた、と言う感が残りました。たまにはこういうのもいいよね。
