
ちょっと前から行きたくて仕方がなかったんですよ。記憶に残る味、と言うのはこういうお店のこういう味なんだろうなあと思っています。
カレーですよ。
どうも自分のブログを読み返すと「また行かなきゃならん」が多くて困るのです。なにしろ厳選していいお店、文句のないお店ばかりを書いているからね。それをわたしの視点で書くわけで、そんなものどれもこれもあとで読み返せば行きたくなって当たり前かそりゃそうか。そうやって再訪するお店も多いです。

JR中央本線豊田駅。その裏手の線路ぎわにあるお店です。中央線が通ると音と振動がイスに伝わるのがなかなかに心地よくてね。それくらいの距離に電車が通っています。
「きりんこ」
という不思議な名前の屋号の看板が出ています。私邸をお店に改装したという風情の場所でね、カウンター席のみのホールとそれに不釣り合いな広くて動線がしっかりした厨房の対比が面白いんです。

厨房の奥の壁に油絵が飾ってあったり、もともとここは広いリビングだったのではないかしら、などちょっと想像力を掻き立てられる感じの店内なんです。だからかな。それほど広くないカウンターですがなぜか快適なんだよね。


カレーを注文しましょう。いや、注文ではなく券売機の形式だわ。ここのおかみさんが一人で回すお店です。なので券売機で食券を買って自分で冷水機から水を注いでテーブルに着きます。
以前も確かこの注文をしたはず。
「カリーセット」
に決めました。


チキンカリー、キーマカリー、エビカリーの3種がはいるセット。これとごはん(これが興味深いものなのです)とタマネギマリネ(あの赤いタマネギアチャールの類だね)がついてきます。さて、カレーの時間だよ。
キーマ

鰹出汁の効きっぷりが尋常じゃないぞこれ。すごい旨味と香りでパンチ強く、インド料理の手法なのにまるでラーメンをすすっているような気分。いやーすごくおもしろい。グリンピースが入ったクラシックなキーママタルスタイルなんだけど、なのにこうくるか!と驚かされます。しかも好バランスでクセになるんだよ。これはたまらない。やられたな、のひとこと。バカウマ確定です。圧倒的です。
チキン

チキンカレーもとても良いんです。肉カレーなんだけどこちらも魚介出汁しっかりでね。肉の旨みと魚介だし。これは素晴らしいものになるに決まっているでしょ。甘み旨みがタマネギから滲み出て魚介出汁と合体して肉エキスも入ってたまらぬ美味しさ。濃厚でとろみがうれしいもの。これまたやられた感。
エビ

いかにも海老殻を出汁にしたという感じで深くて濃いエビ味がたまらんです。いやぜんぶ素晴らしいぞこれは。ものすごい素材とかではなくて、程よい素材を手間暇かけて仕上げてゆき、結果すごいものになる、というタイプの良質なカレーだと感じます。うんまいなあ。ずっと食べていたい。


3種類あるカレー、特にどれが大きく辛いと言うわけではないんですが、食べ進む間に知らぬ間にたくさん汗をかされています。スパイスが口とか舌じゃなくてからだの内側から効いてくるタイプ、良いカレーの条件だと思います。そしてどれも強く出汁が効いていて、よくあるインドカレーとは一線を画す個性と美味しさ。これは素晴らしいなあ。


ごはんも特筆。色をつけた和えごはんなのかそれとも炒めごはんなのか。そんなふうに思っていたら、実は炊き込みごごはんなのだとか。スパイスをたくさん使った炊き込みご飯。ははあ、それはつまりビリヤニではないかしら。これにはびっくりしました。こんなブームが来るずっと前からこのスタイルを続けてらっしゃるのを知っているからね。

しかも今になってビリヤニなどと急に呼ぶのは失礼なのではと思う、カレーに合わせた塩分や風味のチューニングがある純粋なこの店のオリジナル。ここだけの味です。出汁カレーなんて言葉が使われる昨今とは関係なく、どことか誰とかなにとかではなく、ずっとこのスタイル。ああもうたまらないな。もうちょっと丁寧に通わなくっちゃいけないな。

私邸をお店に仕立てた感、隠れ家的住宅街のお店、線路裏の音と揺れの風情、そして子供お断り(高いカウンターとスツールチェアで子供じゃ無理があるからね。そして長居するお店ではないから。お断りが正しいぞ)のスタイル。きちんと決め事を持ってやってらっしゃる様子は清々しいです。
客たちも余計なことは言わずにさっと旨いものを食べてスーッと席を立ってゆくカッコいい連中が多いな、と感じます。おかみさんもやんわりした空気を醸し出して気分がいいですよ。
ここはやっぱりいい。特別のお店だと改めて知りました。そうだ、店主の旦那様がやってらっしゃるラーメン店にも行かなくちゃ。八王子スタイルのラーメン。
