
行かねば!と思いつつなかなかタイミングがやってこなかったお店があります。京成大久保駅のそば。偶然のお導きでありました。
カレーですよ。
千葉の実家に向かう途中でした。奥さんと一緒だったんですが、彼女と少し前に勝田台の「葉菜」にいったばかり。それできょうはたまたま近くを通りかかってちょうど昼時でありましたた。こりゃもう行かなくっちゃね。

「葉菜」吉田シェフのお弟子筋にあたるお店なのでそんなタイミングもちょっと面白いわけです。食べ比べってのもアレなんですが、ちょっとやはりどう似ていてどう違うのかは気になるわけですよ。
「南インド食堂 葉菜子」
は習志野、京成大久保駅そばにあります。わたしが好きだった、今は無くなってしまった古い洋食店「ナポリ」がある商店街「ゆうロード」とは線路を挟んで逆側、中央公園を望む建物の2階にあります。実は崖縁に建つ建物で、公園を見下ろすと結構な高さだとわかります。面白い立地だな。


重厚な扉の奥にはほっと穏やかな空気。公園を見下ろす大きな窓とカウンター。自然光が差し込み快適です。メニューはシンプルにメインのミールス2種。スタンダードとスペシャル。初めての訪問であったのでお店のスタンダードである、
「HANACO VEGE MEALS」
としまた。これが素晴らしいものだったんだ。


ピンキリという言い方も下世話ではありますが、ミールスもいろいろあるよね。カトリ(インドの食器、こ風呂のステンレス製でフチの高い器)の数が2つほどのシンプルなものもあれば2桁のカトリが並ぶおせちのようなものもあります。


「南インド食堂 葉菜子」のそれは可愛らしく華やかなものでした。7つのカトリとチャトニが2種にポディがかかったごはん、パパドにワダもついてくる充実の内容。そうだなあ、ジュエリーケースを開いたような華やか感じかな。シュッと敷かれた短冊のバナナリーフがターリではなくミールスだよ、と主張してきます。

さて。
これがなくては始まらないサンバルとラッサム。共にきちんと個性があります。サンバルとラッサムにも標準的な味というのはある程度あると思うんですが、やはり個性があるものに出会うと嬉しくなるよね。

「葉菜子」のサンバルはあまりこういう感じに当たったことないな、と思わせる自然な甘みを感じてわたしの子供舌に堪らぬ快感を送り込んできます(甘うまダイスキ!)。ああ〜これ大変に好み、美味しい。南インドテイストの中に日本人の舌をくすぐってくるなにかが潜む感じでたまらんおいしさ。

ここにメドゥワダを沈めてやってサンバルワダを楽しむのもいいんです。サンバルが美味しいから他と合わせずストレートに食べたい気もしてね、ちょっと勿体無い感じもあるんですが。ご安心あれ。ライス、ラッサム、サンバルは、1回のみおかわり無料なのであるよ。なんとありがたいことか。

ラッサムはバランスよく行き過ぎのない刺激です。酸味辛みが程よく香りのスピード感と爽やかさを感じさせる味。とてもいい。キツすぎないのいいなあ。バシッと辛酸っぱくて細胞いっこいっこが目を覚ます感じのも好きだけど、こういうお皿全体との調和があってその流れにしなやかに沿うようなやつ、いいなあ。

ダールのとろけ具合が大変好みで言うことなし。春っぽい苦みものせてあります。これは看板にも菜の文字がある、菜花だよね。大変良いなあ。これはもうずっと食べていたくなる。食べるのをやめたくない。そういう感じです。ダールってお店の、コックさんの個性がよく出ますよね。

イシチューは特筆。ココナッツミルクの風味が素晴らしい。クセではなくちゃんと美味しい要素としてのココナッツミルクだなあ。クリームシチューの牛乳部分を上手に置換して尚且つ違和感ないと言う感じの味わいです。じゃがいもにしっかりと下味をつけてあるのも効いているな。いやこれすごいよ。おかわりしたい。

セロリのアチャールは鮮烈なマスタードオイルの風味。しかしエグ味やクセが上手に削いであってどうなってるんだ?と驚かされます。すごい。日本人にとっては大体キツくなっちゃうインド料理のマスタードオイル使い。これは風味の舌離れよく嫌な後味が残らないことにハッとさせられます。マスタードオイルが強く主張してあばれるのはよくあることですが、セロリのクセと合わせてやってそのあばれを矯正する感じかなこれは。驚くべき手法。他の料理と混ぜて食べて生きるものだとわかってるんですが、ギリギリ単独で行けちゃう。いやあ、これはちょっとまいった。

チャトニ2種もすごくいい。ジンジャーチャトニには中毒性すら感じるあまじょっぱ、なんですよ。日本人の舌に刺さって抜けないトゲなのだよ、あまじょっぱ。これはたまらないな!万能だと感じます。例えばチャーハン(ここではプラオ、か)の端に添えてもいいし、揚げ物になすってもいい。いや、ごはんの友でもいけるかな。すごい。
それとココナッツチャトニに痺れ要素が入るのにはにはまいった。ココナッツ山椒チャツネです。細部までオリジナリティとアイディアを注ぎ込んであるのが手に取るようにわかります。

どれもこれも、これはちょいと芸術品クラスだと思う。ライタひとつ、ポディひとつにまで妥協をしていない味付け個性付けがあるんです。なのにアーユルヴェーダの範囲から逸脱しないというね。圧倒的です。

ミールスというやつ、いろいろ食べてきましたが、混ぜて完成させる、混ぜて好みを作るという特性もあるので、一品ずつの味のエッヂを大幅には越えないラインというのがある気がしています。いや、んー、この言い方も少し違うか。とにかくここの料理は一品ずつの個性がきちんとあって味の輪郭に際立ちというものがあります。独立してその味だけで立っていられる完成度、おいしさを持っていて、なおかつ混ぜてやるとちゃんと他の味と融和して調整をしていける糊代もしっかりとあって、いろいろと圧倒されます。

有機、ないし無農薬野菜を使い、ベジミールスを基本として区分けとしては「ラクトベジ」のスタンスでやってらっしゃるそう。ビーガン対応もできるようで、現代の日本においては助かる人は少なくないと思うよ。アーユルヴェーダの考えを反映、消化のことなど食べてる時のことだけではなく食べた後のことまでで考える料理の数々、お水も冷たくないものが出てきます。

美味しいだけではなくそれ以上の価値のある食事だったなあ。公園の緑が窓から大きく目に入るというのも、なんというのかしら、からだにいい気がするんです。なにかからだや心で困ったら、きっと思い出すよなあ。
葉っぱと菜っぱのこども。その屋号にも強く深い想いが浮き上がるなあ、と感じます。
