お誘いを受け、通称「後藤ラボ」におじゃましました。ここはとても来たかった場所。
後藤さんは「スパイスビレッジ」代表。
移動販売車でのカレーのお弁当販売を軸としてお仕事をしていらっしゃる腕利きシェフです。その後藤さんの秘密基地がここなのです。
ここはなかなかにすごい場所で、カレーなどの食品の調理、加工、殺菌、パッキング、冷蔵冷凍という食品加工製造の一連の工程すべてが完結しているフードファクトリー。
ひと目で圧倒される内容のカレーとスパイスの工房です。
知っているあんなブランドやこんな看板のスパイスまみれの製品が目の前でどんどん生み出されているのを目の当たりにしました。
おやおや、ここの製品もこのラボ生まれなのか、というものがいっぱいあります。感心してしまうねえ。
もちろんラボオーナー、スパイスヴィレッジを主催する後藤代表のカレーも生産されるわけです。
なにしろスパイスヴィレッジの秘密基地、総司令部でありますから。
この日は東新宿の人気店「サンラサー」の有澤店主が自店舗の製品を製造する日でした。サポートにスリランカ料理研究家の安藤まどか先生が入っています。後藤代表も含めてこれはとても強靭なチーム編成ですねえ。
ご存知の方はご存知の武蔵境チームです。その筋金入りの強靭さは業界の方々の周知のところです。
新生、サンラサーのECサイトで、入荷告知の瞬間に売り切れる看板商品「バイマックルーキーマ」がどんどん作られてゆくのを一から十まですべて見せてもらいました。
店主自らが手を動かして作る、正真正銘の「サンラサー、有澤シェフのカレー」というわけです。
お店とおんなじ。もうこれだけでもとんでもない価値。そりゃあ一瞬で売り切れるよね。
なにしろ「サンラサー」は一日30食限定の店。営業時間、日数、共に限られたサンラサーのお店のあのカレーをおうちで食べられるわけです。これはファンには堪えられないものでしょう。
工程や作業を見せてもらうと、なんと言いましょうか、その空気感、勢いというものを感じられる時間でした。すごかったよ、いろいろと。
これ、なにがすごいかというと、調理の調整です。
当たり前なのですが、通常の店での仕込みは30食分。ここでは数百食を1日で作ります。当然なんですがコリアンダーいつもは10粒のところを単純に10倍に増やせばいいわけではないのです。
食材の量だけの話ではありません。製造オペレーションの組み立ても違うでしょう。いつも使っている寸胴ではないサイズの鍋を使うとき、火加減や時間、食材投入や火を止める、かき混ぜるタイミング、そういうひとつひとつ、すべてを調整し直さねばなりません。それを顔色一つ変えずにやっています。
プロフェッショナルの仕事、なわけです。お金を払う価値がある、魂ある製品が出来上がってゆきます。
何という楽しい、尊い現場でありましょうか。
今回の新型コロナウィルス・covid-19の蔓延、グローバルパンデミックという人類未曾有の事態。全ての産業に影響が波及しています。
日本の外食業界も壊滅的な打撃を受けているのが事実。実際わたしの耳にも皆さんからの悲鳴が聞こえてきており、それを聞いていると大変胸が痛みつらさがつのります。
が、このラボはこの日生き生きしていたのです。ちょっと眩しい感じがしました。
もちろんここに集う人たちも厳しい状況は同じ。人気店ほど数字の大きな落ち込みは堪えるはずです。
しかしそういう空気はここにはなかった。今を切り抜け、なおかつ未来を見る力や気持ちがある、そういうことです。
わたしまで気持ちがホッとさせられました。
いろいろな動きと流れが渦巻く中、世界がどう変わって自分の仕事がどうせすれば人の役に立つかを考える気概。
そういうものを持つ人から順番に道が開かれるのではないかと思っています。
期待せずにはいられない空気がここにはありました。