江ノ島の怪カレー店(褒めてる)ビッグサーのマスターが亡くなってもう一年が過ぎました。
マスター死してレトルトを残す。本当にありがたいことなのです。
カレーですよ。
たしかにわたしの住んでいる場所からではちょいと遠い、江ノ島という場所。しかしそこにわざわざ食べにいきたくなるお店があって、カレーがあって、マスターが待っている。だからたまにではありますが、通いました。そんなマスターが亡くなって、なんだか気が抜けちゃって。
でも奥様がレトルトカレーは販売続けますよ、とおっしゃってくださって、どれくらい嬉しかったことか。
「ビッグサー」
は、お店は無くなってしまったけれど、マスターは亡くなってしまったけれど、でもマスターが手をかけた、彼自身と言ってもいいようなあの味がいまでも手に入るのです。
マスターからの大いなる遺産であるビッグサーのレトルトカレー。よくぞこれをこちらの世界に置き土産として残してくださった。本当にありがとう。
もしもタイミングが半年ずれていたら世に出なかった可能性だってあった、このカレー。
そしてマスターのご家族がそれを守って製造と販売を続けてくれているのです。
なんという尊いことか。本当に、感謝してもしきれないです。
少し前にTwitterのビッグサーアカウントへダイレクトメッセージの機能を使って連絡、レトルトカレーを購入しました。
温めてごはんにかけます。
封を切ってかけるときに、いつも「あ、キーマだったね」とハッとするんです。なんかやっぱりいつものお店で出てくるあのさらさらスープを勝手に体が求めています。
そして少し切ない気持ちになるのです。
が、しかし、このキーマカレー。
相変わらずのあのスパイス使い。マスターそのもののスパイス使い。本当にそうとしか表現できない。
香りも、舌に残る苦味も、まるっきりビッグサーそのまんま。なんということだろう。一度食べるごとに必ず「なんということだ」という想いが込み上げます。鬼気迫る完成度。
マスターが亡くなったなんて到底信じられないこの味。
あの細長いカウンターの中で鍋をかき混ぜるマスターの背中が見えるような、そんな味です。
今はこちら側にいない人の手になる味が未だこの場所にある。すごいことだと思います。
レシピ、レトルト、そういうものがあると、記憶に固定されたものが実際にまだこの場所にあって食べられるなどということも起こり得るのです。
こういう価値のあるものになるんです。
心揺さぶられるよ。ほんとうに。