遅いランチを幸せな気持ちでのんびりと食べました。ブルームーンのお母さんは優しい空気を纏っていて気持ちが安らぎました。のんびりできて嬉しかったな。
カレーですよ。
さて、まだまだどこかに行くぞ、とGoogle mapを眺めると。
おやおや、レストランということで出てきた店が、屋根の上にあの丸いクッバ(ドーム)を頂く建物の写真を掲載しています。これ、どういうことだろう。いかにも手づくり風のドームですが想いが伝わってくる感じでなにかこう、グッとくるものがあります。よし決めた。ここに行ってみよう。
とはいえランチのあと。
しばらくホームセンターを覗いたりぶらぶらとして夕方を待つ。さて18時。地図を頼りに下妻から常総市に移動、
「マーフレストラン」
を目指します。
もう日も暮れて暗くなった細い街道筋を抜けてたどり着いてみれば。
うむうむ、店、真っ暗であるぞ。これは手強い雰囲気だなあ。うーん、看板はいちおう電気がついているんですが、建物全体が暗くてね、どう見ても営業中という感じではないんです。
あれ?いや、そうではないなこれは。店ではないんじゃないかしら。ここはお店的に営業中という風情にはするべきではない何かを感じるんです。ああ、そうか。ここ、レストランではなくてマスジドでしょ。モスクなんだよここは。
そうか。レストランはマスジドの付帯施設なのではないのかしら。そうなんじゃないかな。入り口のはいりづらさもそれで理解ができます。誰でもウェルカムではないのかもね。
人を探して入るとすぐに長い手洗い場に蛇口がずらりも並びます。ああ、うん、なるほど。とても広い礼拝室がその奥にありました。そこにも明かりが灯っておらず、まったく人の気配がありません。
そんな感じの奥からおいでおいでの手招きと来ました。ひゃあああ、、、いや、ホラーではないよ。優しそうな気のいいムスリムのおじさんがニコニコと笑っています。やってるよ、と教えてくれてます。や、やってるんだ。とはいえそうこなくちゃとモスクの薄暗い中をおじさんに先導されて食堂部屋に進みます。わたしが入ってきて初めて明かりが灯されました。今日の一番客というわけだね。
モスクの付帯施設なのでは、と書いたけどちゃんとメニューも用意されており、レストランとして機能しています。
日本人だってウェルカムなのだよ。女性連れの時はどうなのかな。ファミリールームがあるのだろうなあ。
さて、注文。
まずはメインディッシュで、
「マトンブナ」
としました。それにパラータ。メニューをもう一枚めくっておっと思って追加したのがトマトスープ。そんな注文にしました。さて、どうかな。
どうやら彼以外はレストランには人がいない様子。彼がウェイターでありコックであり支配人なのだ、きっと。
BGMもないシーンとした(この場所なら当たり前で個人的にも好ましいと思うよ)ホールで所在なく料理を待ちます。短くはないが長くも感じなかったな。
色々と面白いしいろんな想像をすると面白くて仕方ありません。
途中でクルマに忘れた荷物を取りに行ったときに外にはためく大きなフラッグに気がつきました。りっぱなそれを眺めたり施設をキョロキョロとみたりさせてもらって。
席に戻り待っていると、まずサラダとスープがやってきました。「アヒルネ」と笑いながら皿を並べる彼の手先には白鳥の形をしたかわいらしいお皿。
へえ、なんか楽しいセンスだなあ。
そしてトマトスープ、これが目を剥く美味しさだったんです。
酸味に甘塩っぱさを乗せたちょいとジャンクだがけど強くクセになるお味。うわあ、これはたまらないなあ。
ほんの少し玉ねぎとマッシュルーム片的なものが見てとれます。
ちょっとたまらないお味で、しかも200円と言う値段にもかかわらずのすごい量。これと白ごはんだけでいいよ!とか思わずつぶやいたおいしさでした。
サラダも白鳥の背中にたっぷりです。ここまででもかなりの満足感がやってきてます。
さあ、メインディッシュの「マトンブナ」がやってきました。
ブナはセミドライの炒め煮の料理。南アジアの国々、いろいろなところに似た料理があります。ここのマトンのブナ、大変なおいしさでした。
トマトがベースで生姜が強く効いている濃いお味。特筆はマトンで、これが驚くほどのクセのなさときちんと残るいい香り。や、こりゃあすごい。こんなバランスよく完成しているマトン料理はなかなかないんじゃないかな。
ムスリムの人たちのお肉の扱い、マトン使いは定評がありますが、クセだけ上手に抜いて良いところは全部残してあるという、こんな仕上がりにはなかなか当たらないよ。
かみごたえも強くあり、噛んでいくとうまみがあとからあとから湧き上がるこの素晴らしさ。
一緒に頼んだパラータとよく合うもので、大いに感激しました。
支払いでまた驚き。
ブナ1000円にスープ200円、パラータ300円で1500円。うむむ、これは。
格安、旨い、異国情緒たっぷりと三拍子揃った上出来ディナーで驚きの1500円。おもわず申し訳なくなります。
クルマに戻り、高く飜る黒いフラッグを眺めます。そこに書いてある意味がなんだか無性に知りたくなってお店に引き返しました。先ほどの彼をつかまえて意味を聞いてみたんですがお互い片言で彼もなかなか言葉が出てこないようす。あなたたちの神様の言葉?と聞くとだいたいそう、と帰ってきました。ついておいで、と手招きされ、礼拝所を見学させてもらいました。写真や動画は大丈夫?と聞くとにっこり頷いてウェルカムと言ってくれます。さっと撮った後、彼と少しおしゃべりをしました。
祭壇には殉教者の名前のフラッグがかかっていること。礼拝室の中に仕切りで別室が設えてあり、そこは女性の場所であること。これがあるから先生(と彼が言っていた)の説教を女性も聴けるのだということ。そんなことを彼から教わりました。
わたしは礼拝室に入るときに帽子を取ったのですが、そこから神社の鳥居の話、そこをくぐる前には帽子を取り、本殿参りの前に境内にある水場で手や口を清めることなどジャパニーズブッディズムのことをおしゃべりして、ジャパニーズスタイルでごめんねと伝えてから祭壇に頭を下げてきました。彼はとても喜んでくれました。
またきて欲しい、と告げられ、わたしもかならず、と答えて車上に戻りました。
あんなにひとけのない場所であったにもかかわらず、気持ちがとても暖かくなりました。
スパイスのせいだけではないようです。