カレーですよ4441(市ヶ谷 牧谿)中国、印度、ニッポン。

すこしまえ、ヤムヤムカデーに行ったメンバーで市ヶ谷へいきました。ちょっと変わった編成で、カレー関係者とメディア関係の人々でのパーティーが組まれています。知らぬ間に東京の異国的なお題がテーマになっていました。さて、きょうの異界はどこかしら。

 

 

カレーですよ。

 

 

ちょっと変わった名前のお店でした。

どうやらその名前、調べると、13世紀後半の中国南宋末元初の仏教僧のことを指すようです。文人画家であり水墨画の作家として日本の水墨画に大きな影響を与えた中国の仏教僧。

 

「牧谿」

 

と言います。

なるほど、どうしてその家号になったのか、興味深いですね。

そんな「牧谿」はsnsで香料料理と咖喱、酒のお店を名乗ります。友人の松さんは南方中華と南インドの融合と評していましたね。

さて、そんなことを聞けば楽しみになってきます。

市ヶ谷からすこし靖国神社の方へ戻るとその店はありました。いや、最終的にはあったのですが何度も見過ごして店の前を通り過ぎていました。そのビジュアルは飲み屋さんそのもの。しかも和風。すでにおもしろいぞ。

カウンターだけの、これもやはり和風の店内は心地よい狭さ。お酒はこう言う空気で飲むに限ります。

ご店主は若くて雰囲気のあるかっこいい男。手捌き鮮やかに料理を繰り出してくれます。これまた美しい和柄の器がスパイス料理を彩るいい雰囲気。

ビールを選びました。「平和クラフト ホワイトエール」これがとても良かったのです。

ちゃんと手応え、旨味はありますが料理の邪魔を一切しない。料理に寄り添う感じの柔らかな印象のウィートエール。これ好きだなあ。

さえ、良いビールでやられた後に料理の方はまずはお通しでやられます。

パイナップルに発酵トマトの醬をかけてあるというね。なんともはや、の先制パンチ。もちろん大変おいしいのです。はじめからすごいぞ。

パクチーキュウィサラダ。パクチーが美味しいのは承知ですがドレッシング、よかったよなあ。酸味より甘みのほうが前に出る甘酸っぱい調整でキウイを使うと言う洒落たアプローチ。ナッツ類をアクセントに使ってあります。これは好きな味。ボウルいっぱい食べたくなるよ。

ヤングコーン雲南ミント炒め。ヤングコーンの食感が上手に残されておりしゃきっとしているのがチャームポイント。香ばしく、ぱりぱりとどんどん食べられる良いものです。

冷奴ピータンソース。中華料理店にもあるメニューがこうなるのねえ。思わず唸ります。そしてクセになる味。解釈とアレンジがいちいち面白くて夢中にさせられます。まいるねまったく。

サバレモングラスバナナリーフ焼きは圧倒的に日本酒に合うものでした。南インド、ケーララ料理風ですし、東南アジア方面まで海沿いにわりと多く分布する蒸し焼きスタイル。しかし明らかに日本酒、もしくは白メシが恋しくなる調整です。こりゃあ抵抗ができないな。

発酵唐辛子ネギ豚炒め。風味が豊かで唐辛子であるのに舌への当たりがやんわりしており尖らない、そういう美点を持っています。

ジャスミン茶羊脳ペーストにミントチャパティ添え。うむ、これ絶妙。インド料理と白子が合体ような不思議感覚。レバーペーストよりももっとキメの細かいシルキーな舌触りに卒倒寸前。酒の捗がいくのはもう致し方ないよね。

ニラミン玉。ミントが入ったニラ玉とはこれいかに。謎のバランス感覚と美味しさで一口ずつ頭をひねりながら食べているとあっという間になくなってしまいます。うむーん、なぞ。

羊・ピータン・発酵ニラ炒め。濃厚、旨い、クセがないと三拍子。クセがないと言うのはともすると悪口にもつながる危うい言葉ですけどこれは濃厚で深い味わい、しかも「臭い」ではなく「匂い」であり香りであるという素晴らしい仕上げ。

さんざ食べました。楽しいなあ。

そして締めはやはりご飯と汁かけがいいよね。

ココナッツ炒飯と鷄坦々カカオ咖喱をあわせます。炒飯が繊細な調味でなにか別のものと合わせることを躊躇したくなる腺の細さとその中に潜むグラデーションを感じられて、圧倒的。が、ここに鷄坦々カカオ咖喱を合わせてやるとたちまち倍の輝きに。うわーすげえななんか。

カレーに添えられ出てきた塩漬けレモンの薬味と合わせるとまさに三位一体、実にバランスよく旨いのです。ランチなどでフルサイズの1人前を体験したくなるねえ、これ。

 

友人たちと食事に行くと、味の方はもちろんその時はうまい!と感激するわけですけれど後になるとその時の幸せな会話の記憶の底に沈んでしまって浮かび上がってこないこともしばしば。が、ここの料理は本当に印象的でその友人たちとの楽しいやり取りの中に光がさしてその味の感激がぶくぶくと浮かび上がってくる。これはすごいことです。実力、侮りがたし。

一人で慎重に冷静に、もう一度食べに行かねばいけないな。かならずだな。