この日、山に来たのは新調したストーブのシェイクダウン。といっても火をつけるだけなんだけどね。佐川急便で届いた大きな箱をそのままクルマのリアシートに積みこんで山に来て、箱を開けました。
このストーブはアラジン社が自社の古いモデルをリプロダクトしたものです。
その名を
「アラジン シルバークイーン」
なかなかかっこいい名前です。
縦型・筒型の「アラジン ブルーフレーム」は有名なストーブで名作の誉高い伝統の定番モデル。知る人も多く、かく言うわたしも古いベージュのものを、むかしむかしに救世軍のバザーで格安で手に入れたことがあって、いまでも現役で使っています。筒型は天板に鍋を乗せて煮込み料理なんかするのにいいんだよねえ。気に入っています。
そしてこちら、シルバークイーンを知る人は意外や多くないようです。
リプロのその折にサイズを2/3ににダウンサイジング、燃料を灯油からカセットガス(CB缶)に変更してあり、外での使い出が良くなっています。
カセットガス、ちょうどいいなあと思ってたんですよ。わりとカセットガスを使うシーンがあるんですがちょっとだけ使ってそのまんまのCB缶がゴロゴロと部屋にあります。それを使い切れるなあと思って。
それというのもおもてでお茶を沸かして飲むなんてのが趣味なんですが、きまぐれだもんで突然そんな感じで外でお茶淹れるか、と思い立つわけです。その突然というのがクセモノで、小さなケトルとCB缶使用のガスコンロ、カップなんかはクルマにいつでも積んであるわけなんですが、でもCB缶だけはダメ。クルマを降りるときに絶対におろしています。
当たり前だよね。あんなに高温になる車内にガス缶入れっぱなしなんておかしいもの。
それでちょっと使ったCB缶が増えていきます。お茶淹れたくなるのは気まぐれなのでCB缶だけ外出先で買うことが多いんですよね。100円ショップかコンビニに行けばいつでもいくらでも手に入っちゃうから。それで、ちょっとだけ使ってそのままCB缶、大量在庫、シルバークイーンで使い切るのいいなあと思ったわけです。
このストーブには実は思い入れがあります。
青梅駅の裏の崖上にある喫茶店に、冬になると毎年これのオリジナルが置かれるのです。美しい形と暖かさが大好きで、そのストーブが置かれる窓際の席に好んで座っていました。窓の下、中央本線が青梅駅に近づきごく低速で駅に滑り込んでいきます。その鉄輪が線路をゆっくり叩く音が楽しめる特等席なんです。
その席からの眺めと、紅茶の香りと電車の音と、シルバークイーンというストーブ。当時はまだその名前も、自分の使っているストーブの会社と同じところの製品だということも知らなかったのですが。その記憶がひとかたまりになって強く自分の中にあって。初めてこのストーブを見たときに「これはしかたがない。手に入れるという選択のほか、余地がない。」と思ったものです。
当時もどうしても欲しいな、と思っていたそのストーブ。古い石油ストーブの世界というのもこれが最近ではなかなか手強い世界で、コレクターが結構いるわけです。古いストーブに5万10万と値が付いて状態がいいものなどなかなか手に入らない。
そんな時にリプロダクションでのダウンサイジングで登場。なんとも嬉しかったですねえ。
折りからのキャンプブームがこんなにいいものを生み出してくれたのだと思っています。
テントを張ってそこに落ち着くなどあまりしないわたしにとって、大きな反射板で一方向を温めるこのストーブはなかなかに快適なんですよ。
テント内を温めるとかではなく、その場で「あたる」感じの暖炉的なものが好みだからね。
そうだ、ここのところ長く行っていない青梅の「夏への扉」へ、オリジナルシルバークイーンに暖めてもらいに行かなくては。
ストーブのある山っていうのはなかなかに幸せなものなのです。