急に思い立って、天竜川を遡ることに決めたのですよ。
天竜二俣駅のとなりにある「食の駅 十文字屋」で電車の形のカレー「転車台カレー」を食べながら思いつきました。
カレーですよ。
このまま天竜川を遡って行こうと考えていました。本田宗一郎生誕の地である天龍村を通って飯田温泉をかすめ、駒ヶ根、伊那、ときて諏訪湖に至る。以前も走った楽しい道です。
そしてもう一案。
ちょうど今いる天竜二俣あたりを境に左にそれて木曽山脈を右に見ながら長野松本を目指して走ると、途中に木曽福島駅があります。そうだった。笹子峠から移転した、大黒屋サンガム、
「Masala Sangam / マサラ サンガム」
となってつい数日前に新規開店したばかりだったんだ。そりゃあ行かなくちゃね。急にやる気が出てきた。よし、行ってみよう。
相変わらずの行き当たりばったりです。行き当たりばったりができるのも、お店が閉まっていても運転が楽しければ、移動ができればわたしにとってそれは結構な満足となり得るからなのです。運転好きだなあ。クルマ自体がが好きだと思ってたんだけど、本質は運転が好きで、それ以上に移動が好きなんだろうなあ、きっと。
案の定で途中のJA直売場や道の駅に立ち寄りながらの快適な道行。山の中の道を自分の気に入ったスピードとペースで流していきます。こういう時に仕事の良いアイディアや文章のキーワードが出てくることが多いんですよ。得られるものもそれなりにある、ということ。いいよね、ありがたいね。結構な雪が残っていますが除雪がきちんとされていてチェーンもあるし四駆だし。あとは慎重な運転だけ。
さて、日が落ちてしばらくしてからの到着。幸いお店はやっていました。火曜日が定休らしいです。
お店の奥様とは仲良くさせていただいています。笹子峠の「大黒屋サンガム」時代に何度かおじゃまをしました。本当に魅力的な場所で、あの時はずいぶんのんびりさせてもらったなあ。少し前に富士吉田にある大好きな紅茶と洋菓子のお店「アーヴェント」のはつめさんから連絡をいただき、大月の山の中で行われるクラフトフェアに「アーヴェント」が出店するのだけど「大黒屋サンガム」さんも出店があるから、と聞いて飛んでいったんですよね。その時は旦那様がいらっしゃってタンドリーチキンを焼いていらっしゃった。ご挨拶ができてよかったよ。
その後Facebookで移転のことや木曽のお店の改装の進捗などを見せていただきながら開店を待っていたんです。ご自分たちでできることはみんなやって、職人さんに任せるところは任せて、という改装で生まれた「Masala Sangam / マサラ サンガム」はとても快適なお店になっていました。古いアパートを改装した感じのお店で、その流れは古民家でゲストハウスでもあった「大黒屋サンガム」と同じ流れを持っているのです。
店内、どうにも可愛らしい。柱を残して壁を抜き改装しているので、ちょっと奥まった小さな部屋や、あれっ!こんな場所にカウンター席が、という驚きがあってこれは間違いなく自分の快適な居場所、座り場所を見つけて快適に過ごせるお店に違いないと確信できるのです。
天井に残された電灯線や落ち着いたチョコレート色の柱、照明のチョイスなどバランスの良い改装だと感じさせるセンスでうれしくなっちゃいます。
料理にも驚かされました。
まず出てくるスープは笹子峠の「大黒屋サンガム」のときからのお気に入り。少し酸味がある体が温まるスープでちょっと寒い時期に特に嬉しいもの。この時は外、雪が残ってましたからね。
地元の道の駅などで買い求めてくる野菜は一次産業の方々ととても近い距離感があり、そういうものを使って地域と一緒にお店をやっていくという気概のようなものを感じさせます。
野菜カレーが本当に美味しいんだよね。思い出してうっとりします。
覚えているよ、これもお気に入りのやつだ。
根菜の食感がきちんと残してあって、野菜の旨みがたくさん出ていてネパール料理がもとになっているのですが、やっぱりこのお店のオリジナル。おいしいなあ。
驚いたのがこのあと。
御重に美しく盛られたおかず類。和のお惣菜が3種にピクルスとタンドリーチキン。このセンスに嬉しさが込み上げます。
ああ、いいねえ、いいなあ。和食、ネパール料理、カレー。つまらない既成概念やボーダーがすうっと薄くなって消えてゆきます。
ただもうその組み合わせで合えば良いのです。
ただもう地域の美しい食材でできるものを組み合わせればいいんです。
こういうの、なんと気分が良いのだろう。
こういう形がこれからの食かもしれないな、など思います。
寒い夜で、たまたまわたしがお邪魔した時間帯、ちょっと遅かったのでお客さんがいませんでした。おかげでお二人と長話ができて本当に楽しかったな。面白い話しや驚くエピソードがいっぱい飛び出して、たくさん色々なことが聞けて良かったんです。なんだかちっとも帰りたくなくなっていました。
本当にとても価値があるお店です。
ちょっと離れた場所に心寄せられるお店があるのはとても幸せなことです。
長野にまた行くべき場所ができました。