カレーですよ4867(長野松本 DOON食堂 印度山)素敵な旅先カレー。

宿泊した東急ハーヴェストクラブ 蓼科リゾートからどこに遊びに行こうか、と考えて松本まで足を伸ばすことにしたんです。

霧ヶ峰湿原植物群落で素晴らしい時間をしばし楽しんだのち、松本入り。

 

 

カレーですよ。

 

 

実は、霧ヶ峰湿原植物群落。ただもう通りかかっただけなんですよ。わたしの旅はあらかたそんな感じで、観光名所、風光明媚、一台奇譚とかそういうのを素通りしてカレーを目指します。まったくよろしくない。けど本人がまったくよろしくないことに気がついてないという。

そうやって通りかかっては感激したりするにがよかったり楽しかったりします。わたしの偶然だけを頼りにする人生そのものです。いやしかしヶ峰湿原植物群落、すごい場所でした。天然記念物ということに指定されていて、そういうこともですがそんなこと関係なく、その山に囲まれた盆地状の湿原帯が作り出す空気や雰囲気に飲み込まれる感じです。大事にしなくちゃいけない場所だとすぐにわかる。

そのわりに周遊できるハイキングコースとかには全然踏み込み気がなくて(カレー)先を急がねばならないのです(カレー)。

 

松本は昔の蔵や建物をうまく残した洒落た場所、街並みが多くあって散歩すると気分がいいんです。

居心地の良い街だなあ。古いパン屋さんやお店が風情があって、でも作り物でも過去のものでもなく呼吸して商売してて素晴らしい。

さて、少し遅めのランチを、と探して行き当たったお店。これがとても良かったのです。

 

「日本一小さなインド家庭料理 DOON食堂 印度山」

 

という名前。北インドの家庭料理を標榜するお店です。まずその立地が面白かった。

洒落た和風の入り口の門が特徴的なここは「うら町はしご横丁」。

ぱっと見はなんの施設かわからなかったのですが。ここは2004年に「うら町活性化事業協同組合」が企画運営を始めた屋台村的な共同店舗「華のうら町夢屋台・はしご横丁」。松本有楽町の活性化を目標に新名所とするべく作ったのだそう。

ひと区画、というかお店1つのサイズがとても小さくて、テーブルを入れると2テーブルほどしか入らないサイズ感、これがいい感じでね。路地も意図して狭くしてあって、そんな小さなお店がたくさん軒を連ねて独特の雰囲気を作り出していました。

そんな中に「DOON食堂 印度山」は幾つかのお店を借りて運営、営業していました。

ちょっとみたことのないスタイルだったよ。

まずは注文。丁寧にメニュー説明をしてくださる女性の店員さん。

この日は遅くに行ったためキーマカレーは売り切れ。2人で行ったので、マトンタリーとベジタリーをそれぞれ注文しました。

マトン

マトンカレーがすごく美味しい。ちょっとレバーのようなニュアンスというか、マトンの味の複雑さがちゃんと出ていて、でも難しすぎなくて楽しい、たまらないんです。ああ、これおいしい!食べ応えある大きなカットで嬉しさも倍増。日本人のイメージするカレーではなくて、グレイヴィ少なめの肉料理という感です。マトンというやつは本当に面白いよねえ。調理人のセンスと腕と舌で何万通りも味があるのではないかしら、と感じます。ここのマトンカリーは特別と感じるねえ。

ベジカレー

この日は豆カレーでした。ダールもつくけど、きちんと別物の味、香り、食感です。ほぼ固形に近い粘度の豆のカレーで、ほんの少しほっておくだけで膜が張るような高濃度。それがとてもいいんです。金時豆だったな、大きめの豆が美味しく炊けていて素晴らしいものです。穏やかなスパイスづかいで日本の食卓の惣菜の中に紛れていても気がつかないだろうな、という優しさがありました。これまたスペシャルなものだねえ。これもいい意味で日本人のカレー感から距離を置くもので大変価値があります。好きですこの感じ。

ライタはあまりいじっていないきゅうりなどを加えた塩味を感じないもの。なるほどこういう感じは実は家庭風なんじゃなかろうか、なんて想像してみたり。パパドはただ揚げ焼きをしておらずちょっと色気がある形に捻ってあって楽しいですね。焦げ目が繊細についていて見目麗しいもので、こういうのいいよね。楽しませようという意図が見えるの、好きです。

ごはん、おいしかったな。わたしはインド料理だからといって何も絶対に長粒米を使うべきだとは考えていないのです。おいしければそれでいい。ただ、オリジナルはどういうものか、知っておくことも大事だと思っています。でも日本のお米がやっぱりおいしいよねえ。

壁にアジアハンター小林さんの新著のポスターが貼ってあって、それを肴にお店の店主婦人、熊谷さんとおしゃべりが弾んで大変に楽しかったんです。レストラン料理と家庭料理の違いのような話でひとしきりたのしいい喋りが盛り上がり、続きました。葛西のレカのヨギさんの話が飛び出したりするのも驚いたよ。日本のインドカルチャーの濃い部分を思い知ります。

店主のアシシュ・シルプカーさんは大きなからだで優しい笑顔という感じのインドの人。リシケシの近くの出身だそうで、ここの料理はすべて彼のお母さんのレシピを基にして出しているのだとか。体に良い、消化に良いことを綺麗な日本語で強く真剣にお話ししてくれました。わたしも実際に食べてお腹にキツくないことや脂の軽さを感想で述べると喜んでくださったよ。

まさか希少な北インドの家庭料理を松本で食べられるとは。

うーん、いいねえ、松本。懐が深い。

 

旅に出ると驚かされることが多いです。旅に出ないとね。