神田駿河台下界隈で変わらないものってのは三省堂とここだけだと思っていました。ところが三省堂があれじゃないですか。永遠というものはないのだ、と思い知るのです。
カレーですよ。
だから、思い立ったら行かなくちゃいけないよね。ダバインディアなんかもそうだけど、毎回毎回同じことを思うんです。思い立ったら吉日なんだよね。二度目は常にないかもしれない、そういう気分です。そやってやってきた駿河台下の、
「インドカレー カーマ」
とはいえ盤石であることも事実だなあ、ここは。でも油断なくちゃんと足を運んで食べねばいけない、というのも思うところです。
この日は閉店30分ほど前に飛び込びました。行列なし、テーブルを案内されてホッとします。ありがとう、ありがとう。界隈をぐるぐると歩いて回ってくたくただったのです。カウンターではなくてテーブル席でひと息つけました。
「チキンカレー」
をメニューも見ないで注文。いや、本当は久しぶりだったので見るともなしに見たんだけどね。知った店でメニューを見るのはわたしの場合、それは一種照れ隠しなのです。
さて、チキンカレー。
嬉しくも20年前から変わらぬさらりとした粘り気ないスープの海。そこにごはんがひたひたと浸されており、これがいいんであるよ。半割のジャガイモはメークインが使われており、これも変わらない安心感。
ドライで甘味旨味というよりもスパイスのアロマを楽しむ方向で構成されていて、こういうのがいい、こういうのを欲する時が必ずあって。そのタイミングにぴたりと当てはまるとたまらなく愛おしくなるカレーなのですよ。今日がそういう日なのです。すごく気分がいいです。
テーブルのタマネギアチャールを控えめに追加したり、皿の端に乗せられたガーキンピクルスやダイスカットの甘いパイナップルで変化をつけて食べ進みます。
こういうタイプのカレー、こんなにサラサラではソースが残るではないか、という人がいるんですが、それはないよ。食べてみればわかる。上手に混ぜればいいだけです。逆にカレーソースが美味しくてはじめにスプーンでどんどんすくってしまうとバランスが崩れるので要注意。わたしはよくやっちゃってます。
美味しいと夢中ですすっちゃうんだよ。
帰り道の美味しかった記憶で出るため息が、スパイスのアロマになっていてちょっと楽しいのです。