友人の頼田さんが誘ってくれました。荻窪のちょっといい感じの小さな飲み屋さんです。
カレーですよ。
カレー的にいうと、荻窪、青梅街道沿いの吉田カレーの前を八丁の交差点方面へ通り過ぎて3本目の路地を入ったところにあります。普通の人には杉並公会堂の向かい、と言った方が通りがいいかもしれないね(笑)。駅から離れているというのもあって落ち着いた雰囲気があります。小さなカウンターの中に4人の店員さんがいて繁盛ぶりが垣間見えました。
「赤津庄兵衛」
というなまえです。
ごちゃつかないシンプルな店内。気分のいいカウンターで頼田さんとふたりでおしゃべりしながらおいしいものを少しつまみました。
センスの良い料理でうれしくなります。突き出しがゼリー寄せだったり「鮎のコンフィ 特製サルサソース」はお魚のソースが少し辛くフレッシュなものだったり。いいなあ。苦味と若草のような香りがして、季節のお魚がおいしいととそれだけでそのお店の価値が上がるってものです。
実は〆のカレーがあるということで頼田さんはこの店にわたしを引っ張ってきたかったみたい。
事実、カレー、良かったんですよ。チキンカレーが出てきました。実に良い着地点に落としてあるんだこれが。
カレーライスという範囲の味があります。日本人が誰でも「これはカレーだね」と理解するクラシックな趣の味。あれを逸脱せずに、なのに、サラサラに仕上げてあるんですよ。センスがいいなあ。これは巧みです。
舌が敏感な人なら市販のカレールウと違う作りなのにあの味が感じられるところに面白味を見出すのではないかしら。わたしはそんなふうに感じました。それでいてまとまりが良くてね、何気なくさらりと食べさせてしまう。うーん、なんというのだろう、やりたかった、着地させたかった場所、味が明確にあるのがわかる素晴らしいカレーだったんですよね。
それで、大事なのはここが飲み屋さんであるってことで。当然このカレーはあくまで〆のカレーであって食事一食分のカレーライスではないんです。だから量は控えめでさらりと軽く、ここまで食べてきたものの記憶を消し去るような乱暴さがない。そこが、いい。うまい。
こういうのを体験するたびに、レストランはメニューひとつの味でもなければきらびやかで派手な見てくれでもないと思い知るわけです。トータルでの体験。そういうことです。
要素ひとつ一つが集まって店主の意図する世界観が出来上がります。それを楽しまねば、本当にそのレストランを知ったということにはならないでしょう。
楽しい日曜の午後になったなあ。頼田さん、どうもありがとう。