ここのところ街を歩いていてちょっと違和感を感じていました。渋谷とか神田にいるはずなのになんか違う町にいる感じ。あの町の細い路地にいるような気分になる。なんだろう、これ。
カレーですよ。
なんでもなにもございません。そりゃあさ、あれだよ、暑さのせいもある。空腹のせいでもある。でも何よりも、あの黄色い幟が色々な街のいろいろな場所にはためいているから。大久保の路地じゃないのに。
幟には「SPICY CURRY RAMEN魯珈」の文字。あれっ、ラーメンって書いてある。
そりゃあそうです。ここは、
「らあめん花月嵐」
だから。
この夏コラボレーション製品がものすごい種類と数になった齋藤店主の店「SPICY CURRY魯珈」。まさかのラーメンチェーンでの展開は驚きのひとこと。
そして
「SPICY CURRY RAMEN魯珈」
は頭を刺激される一杯だったのです。
これ、カレーラーメンなんていう名前で括ってはいけない一杯であると思うのです。ラーメンには疎いわたしですが、こういう味や香りの方向のものはほぼないのではないかと思います。敢えていうなら「卍力」が個性とエッヂいう点と唯一無二という点で一致するところがあるかもしれないな。
はじめにクローブが強く香るラーメンという面白さがまず来ます。どうやらクローブパウダーをスープの水面ではなく半割のゆで卵表面にふりかけている様子。それで、もうしこし広範囲に広がってどんぶりに行き渡ってカレーよりもアロマが上がっていると思うんですよ。香りの立ちが良いのです。
スープはひと口すすると鼻からはスパイスの香りが回り、舌には魚介スープという感じ。
おやこれおもしろいぞ、どういうものだろう、と脳みそが高速回転を始めます。舌ではなく脳に刺激がくるね。
ラーメンとしての破綻のないスープ。しかしそこにちゃんと魯珈っぽさが浮かびあがるのが驚かされます。
そしてね、きっちり、辛い。そこらへんにに齋藤店主の笑顔が思い起こされる感があります。辛いの好きだもんねえ、齋藤店主。
ラーメン評論家の山本剛志さんのブログを読んだんですが、深く頷けます。スープにごくほんのり酸味がありそこにスパイスが乗るのがよかった。魯肉、高菜ともに悪くない。三つ葉は残念、ちょっと存在感が薄いかもしれない。コリアンダーリーフが与一椅子になったのではないか。山本さんの「個性的ながら辛さに頼らないカレーラーメン」というのはまったく頷ける感想です。
パンチの効いた辛さで激辛ではないのですが、食べ終わると口の周りがひりひりする感じで「ああ、そっか、、」と大久保を思わせるのですよ。ここらへん上手だなあ。ニンニクの効きっぷりもいいし、麺もこのスープの味にそつなく合っています。お店で食べるよりもお肉に手応え感じるルーローはたしかにルーローになってたし。
キーマカレーはね、なんというか、かわいらしい味だったよ。主張は抑えめ。で、そこにね。「激辛壺ニラもやし」をトッピングするわけですよ。「らあめん花月嵐」に通ってる人ならすぐピンとくるアレ。途端にいい感じに変化するんだよね、これだけで。現在は壺に入らず店員さんにお願いをして小皿でやってくるようです。ニュースにもなった、お客と店との信頼関係をこわした愚か者のせいだよなあ。まったく嘆かわしいよねえ。まあ、さておき。
この「激辛壺ニラもやし」なかなかのクセモノでね、やけにうまいのですよ。白メシにこれだけでかなりイケてしまう。これ名品。うむむ、これがあるから通うという人もいるかもねえ。カレーの土俵に無理やり引っ張り込めば、これはニラともやしのアチャールだな。激辛好き店主リスペクトでラーメンにも合わせましたが、わたしはこれは米のメシで行きたいねえ。
なんとなく、なんだけどね。この味は魯珈のカラーに合っている気がするんです。例えばさ、逆に大久保でカレーにこれを添える、なんて遊びがあるといいかもしれないよ(齋藤店主ならもうやっているかもな/笑)。逆コラボだよ。絶対面白いよ。
随分とご無沙汰の「らあめん花月嵐」、いいお店だったな。店員さんの対応もスマート、店舗もモダンなカフェ的なまとまりでできれい、店内広々。タッチパネルの自販機も使いやすかったよ。情報量は多いけどうまくまとめられているカスターセットも優秀だし。現代的なラーメンチェーンで大変優秀と感じます。昔のラーメン店のやさぐれた雰囲気は捨て難いけど、2023年においては花月嵐の選択が正しいのだと思います。
ラーメンはあまり好まないわたしなんですが(5510とくるまやだけは別)花月嵐は通りかかるたびにコラボや期間限定メニューをやっていて、いま何をやっているだろう、とバナーを見るのが楽しいんです。ラーメンではなくカレー派のわたしでさえそういう印象を持足せることに成功しているわけで、これは戦略の勝利と感じますね。
店頭で黄色い幟が翻っていました。大きく「魯珈」とあります。うちの近所にそんな幟が高々と掲げられ、券売機にはろかプレートの名前、出てくるのはラーメン。なんともはや面白いねえ。
しかしなんともすごい事例を作ってくれたものだよ。食べ物のジャンルや国境の壁は低くなるばかり。大変いいことだ。