カレーですよ5116(宇都宮下栗町 小林カレー店。)宇都宮の生え抜き。その2

実に7年ぶりの再訪となりました。

 

 

カレーですよ。

 

 

宇都宮を代表するカレー。2軒あると考えているわたしです。宇都宮に住んでいるわけでもないのに、彼の地でたくさんのお店を食べ歩いているわけではないのに、でも言い切ってしまいたいと強く思うのです。それくらいすごいカレーを食べてしまったから。

この日、宇都宮ゴールデンコースというのを編み出しました。媒体で記事にするつもりなのであまりペラペラと出していかぬようにと思っていたんですが。

まずはランチで雀宮にある「ハリーカリー」へ。インテリア、エクステリアからメニュー、カレーまで。隅々まで美しくデザインされた尊敬に値するお店。そののち、少しクルマで走って鬼怒川温泉手前の塩谷町にある「川霧の湯」でリラックス。本当に露天風呂から鬼怒川の川霧が見えるんです。ああ、素晴らしい。

そのあとは「川霧の湯」の少し先にある「とんかつ ステーキ篠」で「にんにく焼き」を堪能。これはわたしの魂のメニューなんであるよ。

で、そのランチと温泉の間にカレーのハシゴ。宇都宮市下栗町の住宅街にそっとある専門店、

 

「小林カレー店。」

 

へ。ここが本当にスペシャルな店なのです。

大変にセンスのいい、こじんまりとしたカレーライスの専門店。住宅街のバーという風情なんですが、以前来た時に店主に伺ったら元々はご自宅の母屋を一部改装しての店構え。「元々はガレージなんですよ」とおっしゃっていた記憶があります。おかあさま、小林光子先生が「小林光子クッキングサロン」という料理教室を地元にて30年以上続けてらっしゃるという。妹さんも料理家だそうでなるほど、土台が違うなあ、と。

さて、カレーです。

 

「チキンカレー」

 

を注文。サラダも追加します。

そしてカレー、実に端正な面構えなんであるよ。

カレーソースと白飯で美しく2分割された皿の上のこの図。なにげない盛り付けといえばそうかもなんですが、ただならぬ気配を醸し出してきます。こういうのはひと目見ればわかるんだよな。エッジィなのです。ごはんの上にカレーをかける、ただそれだけのことなのに、真剣にやっているのかいい加減なのかが透けて見えてしまうんです。

盛り付けというものはそういうもの、料理というものは隅々まで気を配ってやるとその料理に魂のようなものが宿ることになります。それが、このひと皿なのだとわかります。ピリッとした空気まで感じさせてくるすごいもの。

 

カレーソース、まったく素晴らしい。

旨味と甘味を苦味が上から押さえつけて逃がさない、そんな感じのチューニングが施されています。クローブやシナモンかな、特徴あるオリエンタルな香りが強く上がり、個性を主張してきます。良質な乳脂肪分を感じる厚くクリーミーな味わい。しかしちっとも重たいと感じさせない不思議がそこにありました。チキンもふんわりと仕上がっていて、しかし行きすぎていない。そしてたくさん入っています。満足感が大きいんです。

おいしいカレーを食べているのにね、ケーキとか、、いや違うな。クリスマスの時のジンジャーマンクッキーを食べた後のような香りが口中に残るんです。クローブやシナモンが強いからそう感じるのかもしれない。それがとても楽しいのです。

特筆したいのは、ごはん。ごはんが非常においしいの。なんだろうこれは、と考え込んでしまうほどどうにも白メシが旨いです。ちょいと梅干しでも欲しくなるようなきちんとおいしいニッポンのごはん。これは素晴らしい。カレーの味を言及する時に意外と出てこないのが白メシの話し。インド料理やアジアの料理ならいざ知らず、ジャパニーズスタイルカレーライスに於いては白メシというファクターが大変重要となります。美味しすぎてもいけないけど、美味しくないメシは言語道断。そのバランスが難しい。いいなあ、いいぞ。

「小林カレー店。」のごはんは大変に美味い。結局どこまで、どれだけ真面目にやれるかによってそのお店の価値ってのが決まってしまうわけですが。そういう当たり前のことを思い知らされるのがこのカウンターの席なのです。

福神漬けが自家製で、生姜がよく効いた甘すぎない良いものだったり。サラダがピクルス、これも自家製のもので浅漬け的な酸っぱすぎないよいものだったりと、すべてに手が掛かって気持ちがこもっています。

カレーライスというものを圧倒的に突き詰めるとこうなるであろう、というショーケースと言っていいんじゃないかな。

ただ高い食材使いで「究極」など肩書きをつけるのは、笑止。そういうことをやったことがある人間は一度ここを訪ねてみるといいと思う。顔から火が出る思いをするはず。