カレーですよ5382(名古屋納屋橋 サイアムガーデン)歓待 in 納屋橋。

今年の夏は楽しい旅をしました。クルマを受け取りに行くという旅。クルマをプレゼントしてもらったんです。

 

 

カレーですよ。

 

 

そこらへんの経緯は「旅のメモ」というタイトルの記事で書きました。それで、取りにお邪魔したのが愛媛県の今治。とても魅力的な良い場所でした。それでね。

義理と人情をはかりにかけりゃ、どちらも重たい男の世界、ってそんな人生。義理は大事だけれど人情や友情でうごくのが常のわたしです。それで損することも多いけどな。でもそんなのはどうでもいいんです。自分に嘘なく動ければそれでいいし。

 

で、愛媛から自走で帰るとなると道中、義理も人情も絡んでくるわけです(笑)。ああ、大阪ではあの人に会いたいなあ、とか大阪で何がなんでも探さなきゃいけない人いるんだよな、とか。岐阜に行きたいレストランあるんだよなあ、とか。名古屋もあの人に会いたいなあがあるし、豊橋も、浜松も、静岡も会いたい人や訪ねたい場所がいっぱいあって、あたしゃそんなに友達多かったっけか、と自問したり。

で、名古屋です。昨夜の桑名での素晴らしくもとんでもない高級ディナーのひとときを過ごし、その夜の寝床まで準備いただいてのちの名古屋でのランチお誘い。素晴らしきタイレストランにご招待いただいたのです。

 

「サイアムガーデン」

 

は今も昔も変わらない輝き。そして唯一無二。わたしの知る日本で一番質の高いタイ料理店です。

むかし話になりますが、日本ではどうにもアジアの食を安く見る傾向が長い間ありました。今のような見る影もない経済状態以前の話しです。私見としては戦後を引きずってしまっている感覚があります。世界は変わり、経済は回る。なのにそんなことをやってるからこの有様、そんな2024年です。

それで、たとえば大切な人を伴ってのディナー、少ししゃれて夜、ジャケットを羽織って大事な人をエスコートする時、その夜のレストランのチョイスは?

フレンチ、イタリアン、中華も面白いね。おや、インド料理は?タイ料理は?アジアのレストランでジャケトットとタイが必要な、そういうお店が見つからない時代がありました。インドレストランで少しだけあったかな。タイレストラン、皆無。むかしの話しですが、まったく嘆かわしいと憤慨していたのをおぼえています。アジアの食はキャンティーン=食堂の料理だけではないんです。なのにその受け皿がなかったんだね、むかしは。東京ともあろう都市が、です。やんということか。

そんな2000年代初頭に「サイアムガーデン」が誕生したんです。あのときは大変に興奮したもんです。

 

タイを代表する料理研究家のシーサモン・コンパン博士の全面的な指導の元「本当のタイ料理を紹介したい」という思いで自らシェフの選定まで手がけてメニューや調理技術の監修を担当し、屋台フードとはまったく違う世界観を作り上げています。これはもう文化活動と言ってもいい。画期的なタイレストランです。

建物にも由来と訳があるのです。昭和初期、名古屋市納屋橋に貿易商「加藤商会」本社ビルとして建立の石造りの洋風建築。平成13年に登録有形文化財登録もされました。昭和10年から20年頃までシャム国(現在のタイ)の領事館が置かれた歴史があり、このようなバックボーンを持つ建物がタイレストランになったということに強く意義を感じます。全てにおいて規格外。なかなかここを越えられるレストランは簡単には出てこないだろうな、と思いました。

さて、この日の料理。

 

ヤムアボカドとカオソーイ、それに3種のゲーンが楽しめるミックスカレー。ゲーンはゲーンペッ、ゲーンキヤオワーン、ゲーンマッサマン。カオスェーももらいます。昼からなんという贅沢。

ヤムアボカド、いわゆるトムヤム的酸味と辛味で和えたアボカド。これぞの味付けなのですがどこか洗練を感じさせます。モダンなタイスタイルのサラダ。アボカドたっぷりの、アボカドを新しいスタイルで食べるサラダです。とてもおいしい。

カオソーイ、深く、旨い。麺の美味しさも特筆。そして軽やかです。カオソーイ、重くなりがちなんだよな。どうしてこんなふうに軽やかにできるんだろう。おいしくてちょっと声が出てしまったよ。アテンドを買って出てくださった伊勢醤油本舗社長にしてヤマモリ株式会社役員の上野毛戸社長も「このカオソーイは特別。私も大好きなんです」と推しのメニュー。

そしてゲーン。ひとつひとつに言及するのもあれなので総括の印象です。

とにかく驚かされたのがどれもみなこれまた軽やかなのです。舌にも腹にも重くなく、切れ味気持ちいいまさに「ゲーン/スープ」であり、しかも雑味がない。これ、料理の手法技法ももちろんですが、まず素材が間違いなくいいものを使っているのであろうことが手に取るようにわかります。いや、舌とお腹でわかるぞ、間違いない。

食堂ではなくレストランで出す料理という矜持もあると思います。特にマッサマンはあまり甘い方に振らず、むしろ爽やかな酸味を前に立ててあり大変感銘を受けました。マッサマン。その味や立ち位置をもう一度考え直さなければならないな。それくらい他にない味、構成でとにかくどれも、いろいろと揺さぶられるところある料理なんです。

細部まで気を配ってあるメニュー、料理。快適な接客。重厚で美しい建物。クラシックな本物のみ持ち得る味わいの内装。誰かをエスコートして胸を張れる店なのはいつまで経っても変わっていません。その上で尚且つ、成り立ちや意義、背骨がまっすぐ通っています。そりゃあ納得の他に言葉が出てこないわけです。

このレストランはヤマモリが続ける文化事業の一つだと捉えています。なんという価値のある事業か。その恩恵に預かれる幸せを強く感じました。こういうお店を持ち続けているというところからも、ヤマモリという会社のタイへの想いが伝わってきます。

当日はランチの終わりまで上野毛戸社長にお付き合いをいただいてしまったよ。なんという贅沢な2日間だったのだろうか。感謝を伝えるなど文字にするのも烏滸がましい感でいっぱいです。

三林会長、上野毛戸社長、お二人とも接待などではない、心温まる友人としての迎え入れをしてくださった。忘れ難い夏になりました。