カレーですよ5369(新宿 新宿中村屋本店 レストランマンナ)背筋が伸びるレストラン。

きちんとしたレストランというものは気持ちの良いものだね。ちょっと久しぶりになってしまったんですが、そういう部分が昔からまるで変わることなく折り目正しく気持ちのいいままでずっとやってらっしゃるお店に出かけました。とても幸せな思いをしました。去年のクリスマスのお話し。

 

 

カレーですよ。

 

 

若い頃、お世話になったお店がありました。いろいろとうまくご縁ができてその店に辿り着き、通うようになったのです。

 

そこで良いレストランが何かということを知ることができました。

 

「新宿中村屋本店」

 

のことです。

 

カレー好きは昔からあいも変わらずで、そういう人間が新宿中村屋できちんとしたレストランがどういうものなのかを教わったという話しです。当時の中村屋は上階にラウンジを持っていました。天井が心持ち低めに感じたのは抑えめの照明とシックな雰囲気からかもしれません。そんな場所でランチタイムにカレーのブッフェをやっていてくれたんです。

あれは素晴らしいものだったな。ウォーマーのフタ、どれを開いてもあの中村屋の手間のかかった素晴らしいカレーがたっぷり入っているんです。それをいくら食べてもいいというのは本当に夢のよう。あの高級で美味しいカレーが無尽蔵にそこにあるわけです。毎度そのことで頭がどうにかなりそうだったのです。

それと対照的に、そんなものに興奮して我を忘れている若者にも燻銀の腕前と接客の力を併せ持つウェイトレスの女性は分け隔てのないきちんとした接客をしてくださった。とくに人生半ばほどの年齢という風情の女丈夫な感じのホール長とお見受けするご婦人が素晴らしかったこと、今でも覚えています。年末にひさしぶりに訪ねて行って、そういうものがちゃんと伝統として続いていると感じたんです。

さて現在の新宿中村屋本店、地下にあるレストランの「マンナ」。まずウェイター、ウェイトレスの方々の佇まいがしゃんとしているんだよね。笑顔の中、目配りに隙がなく写真が撮りづらいほどで(笑)。それこそが快適につながっているわけで、まったく感心してしまうのです。

なんというのだろうね。「やってもらえる、おまかせできる安心感」など言えば伝わるかしら。なんでもお任せをしておけばそれで済む、という感覚。だから、王様のように振る舞って良いんです。もちろん慈悲深く包容力ある節度を知る王として、です。王様というのはだからこそ敬われるのだからね。

さて、カレー。季節限定の、

 

「牡蠣と白アワビ茸のカリー」

 

これがもう存外の美味しさで。濃厚で贅沢。12月24日、まさにこの日のランチで選ぶべき選択でありました。

 

牡蠣は宮城県奥松島の浜市から毎日直送される新鮮な生牡蠣。予想を超える数が入っていて思わず頬が緩みます。白アワビ茸も大きく食感良いものでなぜこのキノコが白アワビ茸という名であるのかがわかるような歯触り、舌触り。カレーソースは太い旨味と軽やかなスパイス使いでしつこくならないのに大きな満足感が残る濃厚なもの。少しの酸味が効果的です。なるほど冬時期に食べるべき一皿だねこれは。牡蠣が入っているからというだけ話ではないよ。

 

もちろん旬の食材を使うのが季節料理のセオリーですが、素材食材以上に季節をきちんと捉えているかどうかが大事です。牡蠣、南インドやスリランカ風にさらりと軽快に仕上げるやりかたもあるけれど、新宿中村屋本店という場所の空気感と12月という季節、それにぴたりと合わせた味に落としていると感じさせるものでした。温かく快適な老舗のレストランにこれがあるというところに大いに納得させられます。いや、まったく素晴らしい。

そしてうまい食事を支えるホールの皆さんの安定した仕事から来る絶大な安心感。お任せすればいいようにしてくれる、という安心感に支えられてこそ輝くこの美味しい料理。だからこその安心。

これこそが、レストラン。なんと素敵な場所でしょうか。