浅草に写真を撮りに来たのです。浅草の夜は人の引きが早いのです。店もわりと早くに閉まるんです。
カレーですよ。
したがって夜が深くなるにつれ快適になるわけです。たとえば雷門前の通りのパーキングメーターにも安易クルマを停められます。そもそもあの通りにパーキングメーターがあるのが奇跡のような話しだと思っているんだけどね。さて、と。
ちょっと前に面白いものが届きました。子供向けのトイカメラ。サーマルプリンタを内蔵したもので、ポラロイドカメラのある機種をモチーフにしたデザインをしており、なかなかに良いんだよね。そんなチープな子供カメラで少し写真を撮って歩いているんですが、これがね、めっぽう楽しくってね。そんな流れでの浅草の夜。撮りたいものはたくさんあります。もちろん夜間にとても弱いカメラではあるんですが、そこを面白さと捉えて使うのがまた楽しいのよ。
ひとしきり写真を撮って、その場で印刷されるおもしろさを堪能したのち、腹がへったぞ。深夜で浅草で空腹とくれば大体店が決まってしまうんです。なので今夜のカレーは
「名代 富士そば」
と自動的に決まります。牛丼店もあるけどね、浅草の深夜、富士そばをキメる方がカッコいいと思っているのだよ。
いろいろ迷うけどついそっちに手が伸びて、券売機のボタンを押してしまうあのメニュー。
「カレーかつ丼」
あれがなんか好きなのよ。思った通り、そのまんまの味がします。それ以上でも以下でもなく、そういうのはなかなかいいものだと思っています。カレーはまあ、レトルトであろうなあ。それでいいの。うまいレトルトがいくらでもある時代になったから。別に手作りのすごいやつを求めるべきシチュエーションではないから。
など言ったものの、このカレーがなかなかに悪くないものなんであるぞ。そば屋のカレーに寄せすぎていない、現代的なスタンダードとでも言おうもの。むかしすぎないいい塩梅の味です。そんなカレーライスをカツ丼の上にぶちまけてあり、その乱暴さに嬉しくなるわけであるよ。
こういうのがいい。多少やさぐれているくらいの方がいいんです。
わたしの好きな深夜にはそういうのがよく合うと思っています。
甘辛方面のなんの変哲ないカレーライスに高級ではないかつ丼。それをいっしょくたに食べる面白さと、そんな行為を深夜にぶちかます馬鹿馬鹿しさ。
わたしが好きだったむかしの深夜の空気が少しだけ戻ってくるな。