カレーなしよ(蔵前 鳥越 入舟や 水上商店)おかず横丁の佃煮屋。

鳥越、おかず横丁の「入舟や」が本当にいい店だったのです。

 

 

カレーなしよ。

 

 

昭和10年創業、佃煮屋さんです。煮豆、佃煮と漬物。そういうものが並ぶお店。大変に雰囲気の良いお店でね。

洒落たタイル張りの足元、大きなガラス張りの飾り棚が印象的な店頭のガラスの中には、わかさぎの甘露煮、あみ、あさり、いなご、しらすの佃煮、いかあられにしいたけ昆布と並び、選ぶのに困ってしまうんですよ。いくつかある煮豆も魅力的です。ずっとむかしから羽釜で炊いているそうです。

 

「入舟や 水上商店」

 

というお店です。

お店に入るとクラシックなショーケース兼お会計台があって、そこから葉唐辛子昆布と伽羅蕗を買い求めます。熱波と湿気の渦のような通りから店内に入ると日差しが遮られ、目が休まるなあ。自然なひんやりした温度とともにスーッと気持ちが穏やかになっていきます。

商店、こういう感じだったよな。むかしは酒屋も肉屋も小間物屋もみんなこういう感じだったよ。空気が柔らかいんです。夏の買い物は店に入ると目が休まりほっとするものでした。ノスタルジーだけではないよ。現代の、おかしな目線誘導とやりすぎの高解像度を旨とする陳列に照明。あれで少し脳や心をやられておかしなものを買ってしまうのです。そういうのが、ここにはないよ。もういちど、ほっとします。

 

持ち帰った葉唐辛子昆布と伽羅蕗は当然ながらの関東風。強く深い佃煮の味で、わたしの舌にぴたりと合う味。忘れがたい味だな。多分買い物の体験とセットで胸と舌、胃袋の中で「良いもの」に昇華するのだと思います。楽しい買い物だった。心から「いい買い物をしたなあ」という体験になりました。

白ごはんと佃煮ってのは、尊い組み合わせだよねえ。