ちょっと前のこと。
またもポラロイドの発表会に呼んでいただいたんです。ありがたいなあ。写真なぞちっとも真面目にやらない最近のわたしなんですが、ちょっとおもしろいおもちゃも手に入れてここのところ「インスタント写真の価値」みたいなものが楽しくて仕方がないわけです。
そっちの方は感熱紙プリンター内蔵のこどもカメラ。レジロールにプリントするのでフィルム代を気にせずふわふわと思った時になんとなくシャッターを切る楽しみというのがあるんです。
そしてポラロイド。
少し身構えるんだよね。それはポラロイドは時代と共に立っている場所がだんだん変わってきたということ。初期の頃はもちろん「とにかくその場で写真が見られる」という面白さからでしょう。インスタント写真の根っこにあるものです。フィルムカメラの可能性が大きく変化したということです。その後、その流れは2つの支流に分かれます。フォーマットで分かれたと言ってもいいのかな。いや、違うな。根底に流れるものだな。
富士フイルムのインスタックスミニの一連のシリーズによる「インスタントカメラのカジュアル化」。アンディ・ウォーホル、デビッド・ホックニーなど名だたるアーティストがこぞって使い、そのイメージがついたポラロイドとは異なる道です。文化としてはどちらも正しいと思います。
そして2025年。チェキフィルムは枯渇したのです(もっと前からだけど)。
かたやポラロイドは少しハードルの高いアーティスティックカメラとなっています。
こんなタイミングで現れたのが、
「ポラロイド フリップ」
ハイエンドからトイカメラに近い極小フォーマットまでラインナップするポラロイドですが、ミドルから下のカジュアルラインで多くの人にフィットする気楽なカメラがなかったんです。その穴が埋まったと言えましょう。名前の如き、でフリップするパーはレンズバリア、電源を兼ねています。気楽に鞄に放り込めるようになったということですね。
面白かったのが、ボディに内蔵されたターレットレンズと復活したソナー。ターレットレンズ4枚によりよりピントの幅が広がっているんだよ。そこにソナーが入って今までよりもシャープな写真が撮れるようになったのです。面白いが真面目なギミックで、そうやって「ポラロイドは難しい」というイメージを失敗の少ないポラロイドとして払拭できる実力を持って世に出たのがこれなんです。
デザインもいいよね。ちゃんとポラロイドらしさを遺伝子として持ったこの形。きれいなボディカラーもあいまって「欲しいな、持って歩きたいな」と思わせてくれます。実はこういうところがすごくポラロイドらしいと感じていてね、少し難しいんだけどおしゃれアイテムとして持っていたい、というような気持ちを喚起してくれるデザイン。20世紀フューチャー的なアイコン。
フィルムが高い、という問題は少なからずあるんですけどね、インスタントカメラを使うアミューズメント費用として支払うことを考えれば悪くないと思うんだよ。
なによりも、これを取り扱う会社の熱意や取り組みがいいんです。楽しそうなのだよ。
自分たちが楽しくないものを売ってもつまらない。「つまらない」は、こわい。伝染するからね。そういう要素なく楽しそうな人たちから楽しそうなものを手に入れて楽しく使うのは気分がいいことです。カメラなぞ、大変にエモーショナルな部分を孕む機械なわけでスペックやら何やらを並べる御仁は楽しい写真を撮っていないこともままあるわけですよ。そういうのはいかんよね。カメラ自体が好きなのは悪くない。しかしカメラは写真を撮るもの、道具なわけで、その道具を使った結果としての写真が好きで楽しくなければ意味がないと思うんです。
最近のポラロイドのプロダクトにはちゃんと「楽しい」が内包されています。