仲良くさせてもらっている漫画家・イラストレーターの織田博子さんからお誘いをいただいたのです。料理教室であるぞ。うむ、なぜか最近料理教室づいています。
カレーですよ。
浜松、アンミッカルのえりさんのお教室にも夏前に参加しているしね。料理はガラではないんだけどね。
おうちで料理なぞやりゃしないわたしなんでありますが、アンミッカルの料理教室以降、料理教室というものの面白さに気がついた感があるんです。わたしにとって料理教室ってのはエンターテイメントだと感じています。先生のデモを見るのはとても刺激になるし、自分の手を動かせば皆さんとの一体感のようなものも生まれるし。ちょっとしたライブみたいなもんだねありゃあ。今回の教室もとても楽しかったのです。
織田さんの取り組みである料理教室はもう100回以上続いています。タイトルに「世界家庭料理の旅」というのが来るのがいいんだよ。実はこのタイトルは彼女の著書の名前と同じなのです。
会場がかなり大規模、モダンな建物で驚きました。「としま区民センター」どうも公共のなんとかセンターなんてのはハコモノ行政華やかなりし頃の残滓など思ってしまうもんですが、ここは六本木か虎ノ門か。中もきれいでモダン。
これは区民なら使わない手はないね。
「世界家庭料理の旅 第111回 バングラデシュの魚カレー、マーチェルジョルとベンガル・スイーツ」
今回は講師、織田博子先生の著書に掲載されているバングラデシュの魚カレー「マーチェルジョル」を作ることになりました。レシピをいただいたのですが、かわいいおさかなのフレームが描かれています。あ、見たことある。よくみるとこれ本の中のイラストと同じかも。なんて素敵な。絵を描くお仕事の先生に教わる醍醐味だねえ、これは。こういうのですごく気持ちが持ち上がります。
さて、まずお教室は座学から。なにが楽しいってやはり旅人が語る話しというのは面白いもんね。しかもわたしの興味の中心の「食」とそれが作り上げる文化の話しですから。大好物なのですよ。織田先生は旅人。旅する人の視点と旅で出会った土地の家庭に入って行って料理を見て学んでという、男性の旅人にはなかなかできないスタイルでね。とてもうらやましいのです。
ちゃんとバングラデシュという土地の説明やその周辺国の話しも出てきてとても楽しいんです。長粒米のことや土地の食のこと、お米が三毛作だったり包丁の作りと扱いが日本人には信じられないようなものであったり(座って使う固定の包丁、アレね)、色々と興味深いです。「質問もどんどんしてください!」とおっしゃってくれます。タイミングごとに「何かありませんか?」など随時きいてくださるのは声をあげやすく流石の配慮。
次は待望の調理の実習。幸運なことにこの日は偶然少人数のクラスだったので、班ごとでそこからひとり、とかではなく全員で分担して手を動かしました。
テンパリングの油の量におどろいたり、魚の扱いやタマネギの使い方使い所に頷いたり大変おもしろいんです。
マスタードオイルを多用するバングラデシュの料理ですが、おうちでつくれるようにマスタードシードとサラダ油にアレンジをしてくれたりと実践的で好ましいんだよね。これならおうちに帰ってやってみようという気にさせてくれます。
大さじ2杯ずつの砂糖と塩に驚いたり、そういう振り切った強い使い方で外国料理らしさや外食で食べる異国の味が再現されるのを思い知ったりと気づきも多いんです。こういうのは実際に手を動かさないとわからないし、料理の流れの中で納得が行ったりとか、そういう体験がすごく頭とおなかの中に残る感じがします。
完成品、すごくおいしい。これはちょっとたまらないな。トゲトゲしたところやクセはないんですが、間違いなく日本の家庭料理の味ではない異国の味になっていて刺激を受けます。くりかえしになりますが、おいしい!滋味深いとはこのことか。むずかしくしてないし、大変にいいレシピです。
たっぷりと「マーチェルジョル」を楽しんだ後は織田先生がチャイを淹れてくださいました。自己紹介の時間を設けてくれたり、ちょっとしたサロンのような空気でおしゃべりに花が咲きます。ホッとするいい時間だったなあ。
最後にね、織田博子さんの日々のテーマを。「言葉や文化が違っても、人はみな同じ」。これ、すごく共感できるんです。わたしも同じく考えているから。
わたしは「国や政治ではなくあなたとわたしのあいだに同じ料理の皿を置いてからしゃべらないか」というものです。ポリティカルな話やイデオロギーではなく、素直に同じ種類の生き物として同じうまいもの食ってしゃべらねえか?腹わって話そうよ、ということ。いつなんどきでも食べ物で人は救われる、と思っています。
だから織田博子さんのことがとても好きなのです。