カレーですよ4344(レトルト ヤマモリ 2050年カレー 激辛ペッパーチリ)時に西暦2050年。人類は人口飽和で失われた肉を求めて彷徨い歩いていた。

とにかくすごいパッケージで、その絵もすごいがそれだけの話ではなくて、ストーリーがすごい。問題定義がすごいのだ。なんだこれは、と思考が停止する。

カレーですよ。

実はこのレトルトカレー、去年の夏に試食をしている。
バンコクから戻って早々であった記憶がある。

タイ、ラヨーンへの旅は本当に価値のあるものであった。ヤマモリ(株)の三林社長が全て準備してくださり招待をしてくださった。
私のクラスではあまり選べないコンテンポラリーなホテルを用意してくださり、バンコクでもけっこう尖っているモダンなレストランにもお誘いいただいて。ヤマモリのレトルト製品、タイダンスシリーズの産まれ出るその現場を見せていただき、工場増設開所の式典にも出席、アジアに興味を持ち研究をしている者にとっては大変に価値があり実に興味深いものであった。

稼ぎの少ないわたしではあるが、海外旅行に行けないと言うほどではない。しかし今回、ヤマモリ株式会社の代表と言うお立場の三林社長が全てを用意してくださった旅は、それこそが価値であった。飯塚と言う男は企業から募られ海外渡航をするような価値のある人間、そういうふうに内外に知らしめるチャンスであった。本当にどれだけのものをいただいてしまったのかと、恐れ多く感じている。

そんな旅から戻って早々、去年の8月。タイ、ラヨーンでお話しした開発の方からお声がかかり、東京支社におじゃまして試食をさせていただいた。

この「2050年カレー」、肉を使っていない。
いわゆるベジミート、大豆グルテンを具材としたカレーであった。

そぼろ肉、とくればキーマカレーかスパゲッティ ミートソースか。実はこのカレーの前に、ヤマモリにはベジミートを使ったキーマカレーとボロネーゼソースがある。ヤマモリはレトルトタイカレーだけの会社ではではない。もともとは醤油の醸造会社で、カレーではないレトルト食品の方がむしろ古くから作っている歴史を持つ。スパゲティーソースなども作っており「大豆のお肉の本格ボロネーゼ」はそのラインナップの一つ。ベジミート、ソイミートなど呼ばれる大豆たんぱくから作った動物性ではない代用肉を使用しているのだが、これが驚くべきもので、食べ進んでいる途中で、肉は入っていないことを思い出さないのだ。ソイミートであることを忘れるくらい自然な食感や味なのだ。それくらい上手に何気なく仕上がっており、それこそがこういうものが到達するべき形なのだろうと、驚き、感心した記憶がある。同シリーズでキーマカレーも同様の感想となった。

さて

「2050年カレー 激辛ペッパーチリ」

である。

このとんでもないコンセプト、名前のカレー、どうしてそうなったか。
もうすでに叫ばれているのはこの先の人口増加と発展途上国の生活水準向上などの要因により動物性タンパク質の不足が早々にやってくるのではないかという予測がある。それを見据えつつ、大豆たんぱくから作られるソイミートなどの次世代食を体験してみないか、という呼びかけがコンセプトにある。

それがパッケージ裏のキャッチコピー「2050年「肉」がなくなる!?」につながっている。このカレーの世界観へのこだわり。なんとYouTubeでイメージ映像まで制作しているという凝りようだ。終末系SF映画の予告敵に作られているのが面白い。

https://www.youtube.com/watch?v=2gTMYxVKVUI

さて、食べてみる。

おや、辛い。ビリっと辛い。
激辛とパッケージにあるが、辛味が悪さをする感じの辛すぎにはしていないのがいい。口中、舌も辛いし汗もかく。しかし「抜けがいい」とでもいおうか。食べ終わり、数分でピタリと辛さが引く。これはなかなか悪くないコントロール。味の厚みは辛さの方に巻き込まれてしまっている感があるがその分重くしつこく感じない。甘み要素少なめのドライな味わいであった。

カレーソースにはホールのブラックペッパーが見て取れる。結構な量が入っている様子。食べると歯に感触が残り、満足感が高まる。

おっといけない、大豆由来のグルテンミート。忘れていた。やっぱり忘れてしまう。
そう、やはり今回も忘れるくらい、それが大豆であるということを忘れるくらい、肉ではないということを忘れるくらい、ただの大粒キーマなのだ。これは驚くべきことだ。この食感。なんでこうなるのだろう、肉ではないのに。肉ではないと言い聞かせても舌がその思考を拒絶する。「おいしいキーマ、食べてますよ」と返事をよこすのだ。まったく面白い。

注意点はハラール、ヴィーガン対応であったり動物由来材料不使用ということではないこと。このカレーはそちらがテーマではなくて、植物性タンパク質食材である大豆ミートを体験するというところにある。ここは勘違いなさらないよう。

しかしこの食体験はちょっと面白い。辛さが強めのレトルトカレーとして普通にストックするのもよし。
このパッケージの面白さからプレゼントや景品にするのもアリかもしれない。とにかく「どこが大豆なのよ、このキーマ!」を体験できるのはかなりおもしろいのだ。

食べながら思い出すのは去年の8月、東京支社におじゃまして試食をさせていただいた時のこと。
自信作であることを口にしつつも「パッケージやコンセプトなんですがこんなにすごいやつで大丈夫ですかねえ?」と不安げでいらっしゃったご担当。わたしは「絶対大丈夫です!すごく面白いし、三林社長はこういうものをお認めになる懐を持ってらっしゃる方だから!」とお返しした記憶が蘇る。数日後が社長へのプレゼンテーション会議なのだとおっしゃっていた。製品になったこれ、あの時見たパッケージデザインとすん部の狂いもなくそのままなのだ。

うん、すばらしい。
たくさん売れるといいな。