この店に名前はない。いや、ないのではないかしら。いやいや、ないのかもしれないな。
とにかく名前なんていい、という投げやりな、いや、それも違うぞ。投げやりではなくおおらかな雰囲気にあふれた店なのです。
カレーですよ。
砂町銀座商店街はいろんな意味で自由です。いろんな店の前とか端とか隅とかで絶えずおとうさんたちが買い食い&ビールなのです。
御多分に漏れず、この小さなケバブ屋さんもそういうお父さんたちの憩いの場所。店頭の小さな席ではいつも酔っ払いのおとうさんやおじいさんたちが楽しくやっているのを見ることができます。
そんなお店ですが、ケバブ屋さんです。バングラデシュのカレーもあります。
一説によるとこのお店の名前、
「すなまちケバブ」
という店の名前らしいのです。
しかしそれは商品名ではないだろうか?有名口コミサイトは裏打ちのないことを書く輩が多く信頼できないので、この名前じゃないんじゃないかと疑っています。
また他の一説によると、その漢字表記である
「砂町ケバブ」
という店名も出てきます。
またまた他の一説によると、
「ケバブ ボビーの店」
というのがあるんだけど、この名前が有力候補だと考えるのです、わたしは。
そして、砂町銀座商店街の公式ホームページには、
「居酒屋ケバブ」
という名前があったよ。どれなんだいったい。
商店街のパリッとした公式ホームページなわけで、そこにある名前のこれで確定と言って仕舞えばそれまでですが、この名前もその営業形態を見たWeb担当者とかがこれでいいよな、とつけたっぽい匂いがするんだよねえ。
なので、タイトルは迷いに迷って「居酒屋ケバブ」にしましたが、わたしの心の店名は「ボビーの店」なのです。
店頭販売だけの店で、イートインらしき形はとっていません。なにしろホールがないものね。
そして店頭に小さなイスとテーブルを出して、作っている間はここに座ってね、となっています。
おじさんたちはケバブやつまみを頼んで、作ってもらっている間にここで待つやけです。待ちながらついでに生ビールを頼む。飲みながら待って、料理が来るとビールがないのでビールを頼む。ビールを待つ間に料理を食べて、料理がなくなるのでまたビールと料理を頼んでビールを飲みながら料理が来るのを待つ。
ね、ずっと待合席で待っているのですよ。だからこれは飲食営業ではない。とてもいい。これでいいのよ。
店主のボビーさんはこの日は寡黙で店名を聞くこともできなかったのがちと心残り。
そしてわたしは待っているあいだもビールを飲まず、カレーを買って帰ってきました。おうちで、
「ボビーおじさんのバングラカレー」
なわけです。
あ、これはメニュー名として店頭にあったので間違いなく確定です。
カレー、汁気多めのバングラデシュカレー。日本人にも受け入れやすいね、汁気があると。チキンカレーです。
かなりたくさん玉ねぎを入れてあり、そこにチリもたくさん入るようで結構な辛さ。口当たりはタマネギの甘味で優しいですが辛さがグッと追いかけてきて爽やかでいいな。ご飯によく合う。いいなこれ。
マンゴーピックルのキツイやつが添えられているのがなかなか。出生の秘密を見る思いです。
これをつまみにビールを飲む強者とかもいるんだろうか。いないだろうなあ、ここらへんじゃあ。砂町銀座商店街、懐深し。
このピックルをカレーに混ぜてやると、マイルド&ホットなバングラカレーにシャープなエッヂが立って個性が出てきます。いいねいいね。
ケバブ、追加してもらいました。200円でした。余計なれいのオーロラソース的なあれがあまりかかっておらず、味付けよく。キャベツも過剰ではなくバランスしています。
うん、うまい。
もちろんカレーと一緒にやるのもいいですし、でもひとつ、これを頼んで店頭でケバブつまみにビールをいっぱいやってその後にカレーをかきこむなんてのも良さそう。
あの店頭のカオス感と淡々としたボビーさんのあの感じ。きらいじゃないなあ。