カレーですよ4447(平塚 ニューローズ)そのスタイルを見届けるべき重要店。

週末の外出が元々苦手だったんですけどね。仕事となればそうもいかない。そしてすべからず仕事は優先せねばいけないわけです。そりゃそうだ。

優先順位を間違えれば生活が破綻します。そして誰も助けてくれません。政府も会社もへったくれもない。こちとらフリーランスだ。

 

 

カレーですよ。

 

 

そんなことを考えながらの海沿いの道。お仕事です。

なんか人も多いしいろいろだなあ。みんながいろいろ悩んだり考えたりしながら選択をしてるんだろうねえ。

人のことをいろいろ言う前にもっと強く自分で考えねばいけないよね。全員で。取りこぼしが出ちゃいけないし、本人も努力せにゃいかん。全員で本気出さないと。

さて、そんなことを考えながら仕事をこなすわたしは、どうしても来なければならないお店にたどり着くわけです。

 

「ニューローズ」

 

この店に「カレー」という言葉を使いたくないんだよね。

もちろんカレーなんですが、カレーの名前のメニューがあって、強い存在感を出しているんですが、でもカレー専門店ではない。

いつも書く話しです。

カレーという言葉は呪いのようのようなものなんだよね。「カレー」という言葉を使うだけで客単価が落ちるわけです。どんなに手をかけてもどんなに良い食材を使ってもみんな3000円のカレーはキライなのよ。「カレーに3000円なんて考えられない!」とね。680円とか750円で初めてカレーだと受け入れるわけです。カレーだからお金を出さない。カレー程度のものに、と思っているんでしょうね。わざと極端に話しをしましたが、根幹はそういうところです。フレンチレストランでシェフの遊び心からカレーの香りを付けたりした料理はみんなひと皿5000円でも受け入れるのに。カレーという言葉は呪いの言葉です。

そういう中でスパイスを使った料理を懸命に志し、深めているレストランがあります。

こういう店にカレー屋さんと声をかけるのは毀損ではあるまいか。そうおもうんです。

ここ、ニューローズは想いもあれば志しもあり、素晴らしいセンスと技術もある、探してもなかなか見つかるものではない、素晴らしいレストランです。

なかなか難しい、平塚と大磯のちょうど中間地点。花水川のほとりに佇む上品なピンクのお店。

どんな手を使っても来てみる価値がある店なんだよ、ここは。

この日も例によってクルマ。本当は親しい人と2人、3人ほどで席についてお酒と一緒に美味しい料理を楽しむのがベスト。わたしは毎度、まあまあ仕事というところもあってどうしてもクルマになります。(駐車場は用意される)

お酒が飲めず残念に思っているこんな人を見かけると、ちゃんと提案してくださるんだよね。

ホールを担当する女神さまがいいようにしてくれるんですよ。まったくありがたい。かわいらしい彼女のおしゃべりと、飲み物や料理の提案には前回同様圧倒されます。圧倒といいましたがあくまで控えめなおすすめ。でも巧みでセンスがあるんです。まかせてしまって大丈夫という安心感をわずか2回目の来店で確信してしまったよ。

 

さて、では、飲み物。

本当はアルコールが入るドリンクをノンアルコールにアレンジしてくれました。

わりとご近所で作られているミカンを絞ったソーダ。こういうのがうれしいんだよね。ちゃんとこだわるところもこだわりつつ上手なセンスでノンアルコールにしてくださったりと自由自在なのが素晴らしい。提案があるって素晴らしい。ホントに。

 

では、次は、料理。

 

この日は必ずオーブン料理を食べようと思っていました。厨房にはタンドールの設置がされているんですが、これが営業店ではあまり事例がないポータブルサイズのタンドール。

わたしがインドから持ってきたタンドールと似たサイズです。これを営業運用というのに興味がありました。

 

おっとそうか、オーダーをしてからはたと考えます。タンドール料理が仕上がるまでに何かで繋がねばいかん。どうしよっかな。

そうやってメニューを眺めているとそれに気がついたホールの彼女が「タンドール料理のつなぎ、ですよね?」と流石のご明察。この察しのよさ、気持ち良さと言ったらない。おすすめを迷わずもらうことに。

 

地トマトのだし浸し

トマト、トマトだよ。丸ごとトマトですが、このひと皿はサラダのポジションだね。

サラダで、だけどダシ。ダシなんですよ。なんだろう。湯むきしたトマトの上におぼろ昆布をこれでもかと乗せてあります。で、皿には出汁が敷き詰めてあって。

これがね、どうにも旨かった。

 

トマトと出汁の相性の良さに目を見張る思いです。これ、すごいな。おぼろこんぶもすごいな。すごいよく合うんだよ。

和のダシの世界がトマトという洋野菜の上でバランスするのがとてもおもしろいひと皿。こりゃあ良いものだね。

 

さて、おつぎはタンドール料理。

 

やまとぶたスペアリブ ハーブ&スパイス

ラムチョップ クミンたっぷり

まず肉ではなく、その付け合わせ、サツマイモのマッシュがやたら旨いんですよ。甘味と塩加減で絶妙バランス。その甘みが肉を引き立て、持ち上げます。すごい、すごい。

紫キャベツかな、この酢漬けも巧いよねえ。酸味薄っすら旨味グイッとで実にいい。

ラムチョップは表面のクリスピーな火加減に気持ちを持っていかれる味わい。ちゃんと歯にカリッとくる部分があって中はあくまでふっくら。テンションが上がります。

当然ジューシーで風味がこれでもかと流れ出てくる凄みある完成度。ラムの良い香りがちゃんと前に出ていて手応えを感じる良い仕上がりです。

スペアリブは官能的な火加減、舌触り。美しくピンク色に染まった断面に大いにそそられます。骨までしゃぶる、はまさにこの肉塊のための言葉。

これ、どちらも小型のタンドールで焼き上げるわけです。なんとまあ楽しい。そして小型タンドールを営業にうまく使うというセンスは見るべきものがあるなあと思ったんですよね。

営業店舗の厨房、オペレーションを考えると小型タイプを導入はなかなか難しいのでは、と思ってきました。そんな疑問を吹き飛ばしてくれたなあ。

要は「時間がかかる」というのを「時間をかけると」いう考えにシフトさせるということ。

高温の対流熱で短時間で仕上げる大型のタンドールのやり方ではなく、時間をかけてじっくりと焼き上げていくやり方を店のオペレーションに組み込んでやればいいということだね、これは多分。

オペレーションとホールの連動。時間がかかる旨のカスタマーへの確実な伝達。大変に勉強になります。

自分でもポータブルタンドールを使うのでこれは参考になったよ。

 

さあ、サラダ、メインディッシュの肉ときて、いよいよカレー。

 

「ダブルチョイスカレー」

 

は決まりとして4種の中から2種選ぶ。これが難しいんだよな。選びました。

 

ジャガーバタースラッシー

ダールの濃いめのやつを想起させる濃度、粘度はもちろんジャガイモから。

サブジを意図して煮詰めていって煮崩した、という感覚でとてもふくよかな旨味。本当にうまいんです。枝豆の青々しい香りがたまに入ってくるのがよいアクセントになっています。

このまろみは野菜もあるけどシラスからかな。コリアンダーシードがガリっときて心地よさをくれます。

ああ、これ永遠に食べていられるよ。これをコロッケにしても良さそうだよ。

 

モダンレモンチキン

鯛出汁とレモンをフィーチャーしたジャパニーズモダーンを謳うカレー。この店の看板メニューです。

レモンがきちんと味の柱として機能しているのに驚かされるんだよね。レモンを入れるカレー、たまに見かけますけどあまり工夫なくただ入っているものも多い。そういうものを軽々と追い越しているのがこれ。

苦味やそこからくる爽やかさ、それをコリアンダーで強化、加速させると感じます。おもしろい。

しかしそれだけではエッヂばかりが立ってしまうでしょう?そこで鯛出汁。まさかの鯛出汁。それらを味の柱に据えてバランスをとるわけです。ちがうのはわかっているのにミントを思い出す清涼感があるのが面白くてね。しかし本当にレモンピールの苦味香りを実にセンスよく使ってあるなあ。

挽肉の挽きが細かいのも食感に大いに影響していて、粒が大きければこうはならないであろうというところを感じさせます。細部まで意図が見えるんですよ。これ、すごいカレーだ。

そえてあったみかんをごはんに絞ってみかんライスにしてカレーにあわせました。これもとてもよかった。柑橘をごはんに絞るのを覚えたのは10年くらい前の五反田だった記憶があるね。マスター元気かしら。ちゃんと顔出さねばな。

とにかくやっぱり改めて確信できました。ここはなかなか簡単には出てこないすごいお店だよ。

 

ここまで読んでカッコよくて素晴らしくておいしいレストランだと理解はしてもらえると思うんです。が、あなたが想像するようなかたい感じの場所ではないんだよ。

センスもよく美しいインテリア、エクステリアでアートへこだわり持つバックボーンが見えると同時にポップだったりロックだったりのテイストも併せ持つ、そう感じます。

そういうシェフがやっているお店です。

次の展開や未来が楽しみで仕方がないお店。

 

今必ず見て、食べておくべき最重要店だと思っています。