とにかくお腹が空いていた。どうにも狂おしい気分。原稿に行き詰まりちょっとなんかカレーを入れないとダメだなこりゃあというところまできました。きたんだけどアイディアなし。
カレーですよ。
それでね、苦し紛れに神田神保町に向かいました。尻に火がついている仕事の資料も探していたのは事実でして。それと同時に「いくらなんでも神田神保町にいれば何か食べたいカレーのアイディアが出るだろう」という腹もありました。
結局フラフラと歩いているうちに辿り着いたのは、ご存じ
「ボーイズカレー」
あはは、やっぱりこうなるか。そうだよねえ、こうなるよ。
こういう心持ちの時はやはり自分の定番、勝手知ったる店に流れ着くものだなあ、など思ってちょっと笑ってしまいます。
久しぶりになってしまったマスターに挨拶をして。もちろん何も考えていない頭、口が勝手に注文を告げるわけです。
「カレー付きハンバーグ」
ください。
何しろ何十年かメニューを見たことがない。これしか頼まないから。生姜焼きがすごく評判で雑誌やテレビでも度々話題になるんだけど、わたしはもうこれいっぽんやり。
そしてさすがに魂抜けちゃった口が勝手に、の自動注文であるわけで「大辛で」の一言は抜けてしまってました。いや、きょうはいい。それでいいの。ちょうどいい。
かれこれ学生時代より通い始めての数十年。日常食としてのボーイズカレーで日常食としてのカレー付きハンバーグを無意識に求めてしまうのは、これごく普通のことなのだよなあ。
いつでも秀逸だと感じる「カレー付きハンバーグ」という名前。この名前、いいんだよねえ。なんかいい。なにしろボーイズカレーという看板でやってらっしゃるのだから、カレーを食べたくて入って来るお客が多かろうと思います。でもね、食べるべきはカレー付きハンバーグだよ。
カレーハンバーグと呼んではかわいそうな、きちんとよいハンバーグが出てくる。
だからこその「カレー付きハンバーグ」の呼び名だねえ。
おすすめはしないんですがわたしが秘密でやっている裏技、教えましょう。
たっぷりかかったハンバーグのソースをスプーンですくってカレーに混ぜてやるのです。これがまあ、旨い。生真面目な感じのカレーが矢野マスターっぽいわけですが、ハンバーグのデミグラスソースでちょっとくだけた感じになって、これがいのだよ。これは辛さをいじらない時にやるのが正しいんです。大辛をえらんだときはいじらず、ただひたすらに食べるのがいいよ。
カレーも、ハンバーグも、付け合せのスパゲッティも、キャベツ刻みもコンソメスープもなにもかもが愛おしいのです。