鬼気迫るすごい旨さのスパゲティを食べました。すごかった。
意思というものを感じさせるひと皿なのです。具材だなんだではなく、スパゲティ、麺を食べさせるために調味、調理のチューニングをしてあるという意思。そういうものがソリッドに伝わってくるんですよ。
まず、麺がうまいです。ストレートにすごくうまい。ひと口目に「おや?ちと固いのでは?」と思わせる一瞬があるんですが、それは間違い。ふた口め以降、料理の温度で火が入ってどんどん適切なかたさに変化していきます。ひと口めでそんなふうに思うんですがその味や香りに夢中にさせられ、気がつけば、なんだ、これが正しいんじゃないかと理解できるのです。ああ、すごく面白い。
わたしが頼んだのは
「スパゲッティ カレッティエッラ」
シンプルなトマトソース、と説明にありますが、いやいや、そんな単純なものではないですよ。御者風スパゲッティと訳されます。馬車の御者が食べる、というような意味かな。
ガーリックが下品ではなく強く効いており、どこかほんの少しだけ辛さも感じるような気にさせます。強いパンチがあり、それがトマトの強さ、濃厚さと相まって食べ応えを作っている感があります。そんな強い味の中でも麺の旨さが浮き上がってきて、どうにも驚かされます。これはちょっと本当に抗し難い魅力のあるスパゲッティだなあ。そこにはシンプルで片付けてはいけない価値があります。
同行の妻は「スパゲッティ ビアンカ」。白いスパゲッティはグラナチーズと黒胡椒でこれまたシンプルに決めてあり、添えられたレモンを絞って食べるように構成されています。これも衝撃的に旨い。
パルメジヤーノ・レッジヤーノにほど近い食感の、アミノ酸結晶のシャリっとした舌触りのグラナチーズをたくさんつかってあり、強すぎない塩とふくよかな味にレモンを絞って食べるこの楽しさったらないんです。思わず唸る美味しさ。
これもまた麺が主役であると感じさせる存在感をスパゲッティ自体から感じるもので、圧倒されます。
追加で注文したサラダがおまけみたいな価格なのにすごいきちんとしていたのも印象的。胡桃の香りが強く香って素晴らしい。
食べたのは、甲府国母にある
「スパゴ」
というお店。
お店の雰囲気がまた素敵でね、うるさい要素のないスッキリしたインテリアと腰の落ち着く空気を感じます。赤い招き猫がチャーミング。常連さんが静かに、嬉しそうにカウンターで食事をしていたのが印象的でした。
丁寧なホール兼任の男性は感じ良くて、マスターの落ち着いた物腰と対照的で、どちらも心地よく感じました。
ものすごい店に偶然入ってしまったなあ。
ちょっと腰を動かし難い魅力を感じてしまったすごいお店です。
必ず他の料理も食べにきたい。必ずきます。