OYO プチホテル花南 車山高原、食事はレストランで摂るようになっています。このレストランがまた居心地がよくてね。大きな座り心地いい椅子とこじんまりしているが天井が高いホールは穏やかな暖かさで良い気分。奥のラウンジには大きなファイヤーピットとアップライトピアノがしつらえてありました。
カレーですよ。
夕食、大変おいしかったんです。
「霜降り馬刺しと絶品たてがみプラン」というセットプランの夕食。
「信州霜降り馬刺し」がね、すごくよかった。おいしかった。むかし焼き鳥屋の雇われ大将やってた頃がありまして、馬刺しなども扱っていたんですが、これはかなり良い品、良いお肉です。
上品な味わいでサシがきれいにはいってるのにしつこくないのがね、素晴らしい。ふわりとした食感はこりゃあたいしたものです。
「国産牛ほほ肉のビーフシチュー」も絶品です。舌の上で、ぐっとふんばってくるような力強い旨味と幸せな香り。ロールキャベツも入っていました。すごく太い旨味でね、これなんだろうとオーナーに伺うと、なんと味噌と醤油を使ってあって、しかも3日もかけているからだとおっしゃいます。
こりゃあたしかにすごいものだ。実際すごく美味しいし。
「そばゲッティー」も面白かったし美味しかったな。どれも西洋料理かと思ったんですが、オーナー、和食だとおっしゃる。うん、なるほどこれは和食か、たしかに和食かもしれない。そうおもいます。
大変にいいなあ。
そんな感じで夕食を大いに楽しんだんですが、なんと驚き、これとは別でオーナーがカレーをご馳走してくれたんですよ!わたしの正体がバレていたというわけです(笑)。
どうやらOYOの本部の担当さんが気を利かせてわたしのプロフィールをオーナーに伝えてくださったみたい。はずかしいなあ(笑)でもおかげで話が弾んで楽しかったですよ。カレーの話や料理の話、ここら辺の土地の話など。旅ってこういうのがうれしいよね。
これは、
「鹿カレー」
です。
レストラン、コース料理以外に少しカルトメニューも用意されているようで、その時々で変わるホワイトボードには、ざるそば、陶板焼き、ビーフシチュウライスなどあるなかに「ジビエ馬鹿カレー」なんていうのもあるらしいんですよ。
オーナーが「お味見を」とおっしゃってくれたんですが、悠々一人前ある量が来てうれしい悲鳴。うふふ、カレーだったらいくらでもいくよお。これがね、実にいいカレーで。
味の方向はカレーライスの範疇から飛び出さない、正しくも美しいジャパニーズオーセンティックカレーライスという着地。ご飯が選べるとおっしゃってくださって、迷っていると「じゃあ、どちらも」と珍しいごはんの相い盛りになりました。カレーソースの合い盛りはよくあるけど、ごはんの種類別の合い盛りにはおどろかされました。玄米と白メシの2種です。玄米の青々しい香りが強くて個性があってすごいんだよ。
その甘い香りからなんだかカレーソース自体にフェンネルあたりが入っているのかという感もある面白さ。白メシはもちろん抜群にカレーに合うわけです。どっちもいいねえ。
肉がとてもかみごたえがあって、うーん、いいな。かたいのではないよ。あくまで歯ごたえ。その証拠に噛んでいくと旨味がぐいっと増してきます。お肉本来の味わいが前に出てくるわけですね。鹿肉、カレーのヴェールを脱ぐと淡白だな。だからカレーソースにクセを与えないわけです。そういう控えめさや繊細さに感じ入ります。
じゃがいもがとても丁寧に下ごしらえされているのがわかります。美しく皮をむかれて面取りされており、甘くてねっとりした食感に悲鳴が上がりそうになります。いやあ、いいカレーだなあ。福神漬けも正しく美味しいものが添えられていました。高原のレストランだから赤いくだけた感じのやつではなく、甘くて薄い酸味のちょっと気取った茶色いやつ。うん、これはベストセレクト。
近頃の難しかったりやりすぎたりしている「ちょっと変わったカレー」ではないのがいい。王道の真ん中を歩く正しいカレーライス。そして素人が作ったのでは明らかにない、丁寧さや繊細さが宿る尊いものでした。きちんと香るカレー粉が嬉しいのです。なんともはや、おいしかったねえ。心遣いとおいしさでおなかも胸も、あったかでいっぱいになりました。
この夜はワインも入ったからというのもありますが、オーナーと楽しく長話し。幸せな夜になりました。
ちょっと、たまらない快適な気分です。