わたしの連載の取材をお願いしてお話を聞いて来たばかりのお店。大変楽しいインタビューになったんですが、実はちょっとひっかかっていたことがあったんです。
それは、御大からの宿題。レトルトカレー。
カレーですよ。
「僕の作ったレトルトカレー、試してよ」とおっしゃってくれたのは、小野員裕さん。業界の大先輩もいいところです。
食べあるきとカレーや庶民派グルメなどの文章をずっと書き続けている文作業の尊敬する人。
実は、小野さんが関わっている、まだ食べていなかったレトルトカレーがあります。去年2種が発売になったそうで、一つが四谷新木町の「アートスナック番狂わせ ポークビンダルー」小野員裕さん直々に送ってくださったありがたくも貴重なレトルトカレー。知っているインド、ゴアのスタイルのものとはニュアンスが少しだけ違う個性あふれるレトルトカレーでとてもおいしかったんですよね。
そしてもうひとつ。
「洋食膳 海カレー TAKEUCHI 神保町本店」
と小野員裕さんがタッグを組んだレトルトカレーです。
タケウチのカレーを小野さんも関わってレトルトカレーにしちゃったのかよ!驚いたなあ、というのが本当の本当のところ。
タケウチからあの特徴的な、
「海の幸キーマ風カレー中辛」
で、今回レトルトとして世に出ました。
どちらも小野さん自身が開発に携わったもので、ご存知「鳥肌の立つカレー」シリーズをあんな時代、スパイスを強く使う個性的なレトルトカレーなんて皆無であった時代にあれを世に送り出してしまった人、その人が作ったということでいろいろ察しがつくところがあるわけですよ。そりゃあ期待値も上がるという物です。
この「海の幸キーマ風カレー中辛」は竹内シェフとの共同開発。
今回はちょっとだけ追加をしました。熊本はHOSHIKOの乾燥野菜。ポーションになってる「10種野菜ミックス」を入れることにしました。竹内さんのカレー、いつでも実に見目麗しいものであれは再現なんてとてもできない。せめて少しでもなにか、とおもいまして。
簡単に水やお湯で戻して凝縮された野菜の旨味が楽しめるやつです。こういう追加はなかなかいいよ。
タケウチの看板メニュー「キーマ風カレー」はキーマであってキーマカレーではないんです。あくまでキーマ「風」カレーを名乗るわけですが、それはエビ、イカ、タコを挽肉に見立ててキーマとして着地させているから。お肉のイメージが強いでしょ、キーマカレー。でもあれ、本来の意味は細かく挽いたものという意味なのでシーフードもキーマになり得るわけです。正しいぞ。
もともと面白いそのアイディアをレトルトというフィールドで実現するためにアレンジ。お店で食べるグレイヴィなしのドライタイプの部分をレトルトならではということでグレイヴィ・インという形に着地させてありました。なるほどねえ。
さて、食べてみるよ。
カレーは甘くしないばりっとスパイスが効いた香ばしいピリ辛で、中辛というよりつよ辛という具合が実に好ましいもの。豆の味、とろけ具合とかたちの残り具合も大変良いですねえ。豆の甘みや風味がよく合っていて印象的と感じます。
エビは満足というところまでは行かないですが、固くならずにほろっとくずれるのは悪くないよな。ほんのり風味も残るので合格です。
イカ、大きく、食感も良く、甘みを感じさせるのが、なかなかの満足感。
とにかくカレーソースがいいんだよ。けっこうな辛口に調整してあるのが好印象だし、きちんとコクがあるし、そのうえで辛さが全体の軽やかさにつながっていてスプーンがリズミカルにどんどん動きます。チリで辛いカレーにありがちな意地悪さがなくてね、そこがいい。最後まで海由来の風味がちゃんとついてきて、辛いだけのものになっていないのが良かったですねえ。
や、いいじゃないですかこれ。パッケージもかわいいよね。
タケウチの店頭で買うもよし、通販サイトから取り寄せるのもよし。
これは、おすすめできますよ。