カレーですよ4796(神田錦町/神保町 バンゲラズキッチン)都会的モダンサウスインディア。

神田神保町界隈で大型ビルのビルインレストランは珍しいですね。小さなビルや個人商店が立ち並ぶ古書とカレーの街、神保町ですから。が、実はすずらん通りをあと1本、大手町側にずれると再開発で巨大なオフィスビルが何棟も立っており、わかっているつもりでもその違和感に驚かされるんです。

 

 

カレーですよ。

 

 

そんな小さな個人商店の集合体のイメージをひっくり返させる気分hがあるんだよね。なんか本当に突然大きな高層ビルが立っていて、これがあることによって逆にいままであった神田神保町の表通りや路地の個人商店が並ぶ町並みが書割みたいに見えてしまう。ちょびっと悲しい思いがあります。

そんな現代の神保町に、

 

「バンゲラズキッチン」

 

が出来たのは聞いていました。

なかなかチャンスがなかったんですが、この日はタイミングとご縁があって、その住所を頼りに店に向かいました。歩いた先にあったのは件の巨大オフィスビル。ああ、なるほど、このビルのテナントとして入ったのだね。そうかそうか。頷けるところがあるな。

バンゲラズキッチンは銀座のレストラン、そしてミシュランという印象があって、そういうお店のブランチならさもありなんというロケーションだと思います。それだけに「神保町店」の名前はどこかしっくりとこないものも感じるのよね。これはおじさんの独り言です。

 

とはいえモダンで洒落た雰囲気のバンゲラズキッチン神保町店は心地よいお店でした。店頭に並ぶ大きな観葉植物の数々と店内のアーティフィシャルグリーンに緑色のソファとグリーンをキーにしたインテリア、エクステリアは居心地良いもので、ちょっとにこにこしてしまいます。

注文は、

 

「バンゲラズターリ」

 

に決めました。内容的にはミールスと言えるものですね。色々な味が楽しめて大変楽しいんだよ。

 

サール

トマトスープです。これはほぼラッサムと呼んでもいい味と香りです。マンガロールスタイルなのだね。トマトの鮮烈な酸味引き締まった辛さが心地いいもので、スターターにピッタリです。そう、ターリ、ミールスは西洋料理のコースにも通ずるものがあると思ってます。まあ、まぜちゃうんだけどな。

 

サンバル

豆と野菜煮込み。リトルスパイシーな中、深い野菜の旨みが味を尖らせないのがチャームポイント。やんわりとした味蕾への当たりが心地よい野菜煮込みです。トマトの良さが素直に出ていて、そこから想起されたのは甘味を控えたトマトの酸味を生かした、デミグラス寄りではないすこし酸っぱく仕上げたハヤシライス的なもの。サンバルが美味しいだけでもう十分という気分で幸せです。ああ、おいしい。

 

ダール

ちょっとクリームっぽい、ココナッツっぽいニュアンスはギーからかしら。香りがよいリッチな感じです。手応えというものがあるのがね、いいなあ。大きめのナスがアクセントとしてはいっているのが面白いです。ダールに個性があって尚且つ美味しいお店は信頼できると思っています。インド料理の基本のひとつだもんねえ。

 

ナスのコラプリ

 

ナッツを使ったリッチな味。ナッツ、ココナッツのふくよかなオイルが深みを引き出しています。塩味の決めが上手で感心させられるねえ。個性的な味で、ちゃんと「個性」であって「クセ」になっていないのは素晴らしいこと。カルナータカ州・コラプールの名物です。

 

ピクルス

ピクルスの表記になっていましたけど、発芽緑豆のサラダと読み取ります。どちらで呼んでも差し支えなかろう内容です。青々しい味とパリパリと良い食感が楽しいやつで、強過ぎない味付けはセンス良くてどんどん食べられます。このセットの中に於いてリフレッシュポイントになるアイテムです。こういうの大事だな。

 

ブレッド

選べるようになっていました。ウルドゥドーサとルマリロティがメニューに挙がっています。ウルドゥドーサをチョイス。キッチンが見える場所であったらパフォーマンスが楽しいルマリロティを選んだかもしれないね。ドーサはウタパムっぽいぱふぱふな仕上がり。酸味があって柔らかで、大変良いものです。あの酸味苦手な人もいるみたいだけど、抑えめに少し酸っぱいやつを選ぶと好みが変わると思うのです。

 

デザート

これはラスグッラかしら。とにかく甘い。驚くほど甘い。わかっていたけどすごく甘い。が、なんだか食べられてしまうんだよね。けっこう好きなのか、こういうやつ。お茶を飲みながら自分で自分に問うてみるわけです。

 

味の幅があって、舌が知らない面白いものもあるのが楽しいですねえ。カレーという言葉を頭の中からいっかい追い出して「マンガロールというインドの一地方の郷土料理」を食べるという頭で注文してほしいものです。そういう切り替えが発見につながるし、楽しいし、それこそが「食の冒険」なのだと思います。

インドレストランはいまだ難しいと敬遠する人も多いようです。これを読んでいる皆さんはとても信じられないでしょうが、そういうもんです。しかし、フレンチもイタリアンも中華料理だって初めはそうであったはず。失敗をおられずにチャレンジした順に幸せになれるのがレストラン巡りなのですよ。

人の舌は信用せず、自分の舌の在りようを冷静に考え直して、それを武器として自分だけの好みに辿り着く。そういう行為が何よりも楽しいし、わたしの、皆さんの舌を育て、自信になってゆくと思っています。

グルメサイトに頼っていては本当の楽しさに辿り着かないですよ、いやほんとに。

参考にするのはいいけれど、最後は自分の好みとなぜそれが自分の好みなのかというのがキー。

ゆめゆめお忘れなきように。