瓶のコーラを飲んだことをSNSで書いたら結構な人が反応してきました。
どこで飲んだか、というと小村井にある
「ビリーザキッド墨田本店」
なんです。
ビリーザキッドはわたしにとって一種宗教みたいなものなんですよ。ちょいと気持ちの調子が悪い時、からだに元気がない時。おまじないとしてここにやってくるのです。なんなのか。昔読んだ小説の主人公になぞらえているのですよ。たしか前にもこれ、書いたよな。
SF小説のクラシック。「銀河パトロール隊」シリーズをご存知か。主人公のキムポール・キニスンが宇宙海賊のボスコーンの海賊船との戦いの果て、辛くも勝利。身も心も疲弊した彼は白兵戦で乗り込んで海賊たちをやっつけた敵船のギャレーにへとへとのからだでたどり着きます。冷蔵庫を開け、肉を探し出して自らのためにステーキを焼くのです。そして血の滴るそれに食らいつく。なんともはやマッチョで昔風でそれが実にいい感じの古いヒーロー像なんでありますよ。
初めてそれを読んだ時の興奮や賛同はなかなかに忘れ難いわけで。戦闘という行為と食との背中合わせ。しかも肉。アメリカンマッチョな世界観に痺れたものです。未だ読み返しては感慨深い。それ以来回復は肉、という宗教を自身の中に持つようになりました。でも歳とったから昔ほど信仰心は強くはないかなあ。
さておきここはビリーザキッド。結局はビリーザキッドになるんです。心から疲れ果てて、それも頭も体も心も疲れ果てて、腹はどうやら空いているようなんですがそれもちょっと意識に登りづらいような疲労困憊の夜。なんかもう色々だめだな、と思った時はビリーザキッドになるのです。
ウェスタンな雰囲気でこれまたアメリカ人の考える昔の勧善懲悪の世界観があって疲れてるのになんかにやついてしまう。ここで食らう肉は色々な意味で堪えられないものがあるんだよ。とはいえ選ぶのはステーキもいいのですが、いつでも
「インディアン」
です。
ステーキの端肉を味付けして焼いた焼き肉のこと。どうにもこれ以外頼めないのよね、この濃い味が大好きなので。それだけでもご飯が進んでこまってしまうのですが、さらにニンニクも投入してますますたまらない。
途中でいつもメキサラダをお代わりします。甘い味付けの不思議なメキシカンコールスローサラダ。お代わりは、ここ、墨田本店では歯が痛くなるくらいの冷たいメキサラダが出てきます。ひんやりして、外でしとどと降る雨を思い出したりします。それを無視してキャベツ刻みをバリバリと食べてゆきます。口の中がさっぱりするのがいいな。
こういう味こういう空気を補充せざるを得ない夜は、たまにやってきます。そしてビリーザキッドは深夜に限るのです。メシを腹に入れてるのとは意味が違うんだよ。胸にあいた穴ぼこを埋めるためにここにきて肉をその穴ぼこに詰め込んで埋めてやるのです。すると抱えている大概の面倒がが腹に収められます。いや、収められると信じて続けるわけです。肉と一緒に飲み込んでやるのです。
そういう使い方ができる店を自分の中にひとつ、用意しておくと仕事や人生がうまく回り始める、かもしれません。