【コラム】奥多摩町 峰谷橋 この橋が好き。

どうやら橋が好きなのだと最近気がついたんです。それも山の中の橋とかはいいよね。あと、古い橋。

峰谷橋は奥多摩湖にかかる赤い橋。夜になると真っ暗な奥多摩湖の上に浮かぶようにライトアップされて、その色とともに幽玄という言葉を思い出させるお気に入りの橋です。ひとけのない山の湖にこの真っ赤な橋がかかっている容姿はなかなかの画です。

 

わたし的にはちょっと因縁がある橋でね。いくつか思い出があります。

ひとつは人助け。

どこの人だったかな。英語圏の人みたいなんだけど、若者。橋のてまえでなんだか困った様子でうろうろしています。クルマをとめて、どうしたの?と聞くとどうやら山歩きから戻ったみたいでバス停を探しているんだけどわからない、と言います。スマホは持ってるんだけど時刻表や場所の情報が日本語で困り果ててる。OK、じゃあ、とこちらで情報をを探してあげるとバス停まではもう1キロくらいでバスの時間にも間に合うみたい。ホッとした顔でありがとうを言って歩き出す彼。わたしも安心してクルマに戻りました。ちょっと走って振り返ると、おやおや、またキョロキョロして不安そう。方向は違うけど、よし、では。Uターンして乗りなよ、バス停まで行こう、と声をかけます。心から安心した笑顔が出ました。バス停で降ろしてあげて、もう20分もしないでバスがくるから、と告げて別れます。逆の方向に走りましたがちょっと心配。峰谷橋のたもとにクルマをとめてバスがくるのを見守りました。あ、きたきた、よしよし。バスが橋を渡ってきます。ではこれでお役目完了。よかったね。

ひとつはトラブル。

まだ日産のパオに乗っていた頃。峰谷橋を「峰谷橋無料駐車場」と逆側のたもとにクルマを停めて写真を撮ろうと思ったんです。それで、ひとしきり写真を撮ってひと段落してクルマに戻って。エンジンをかけようとキーをひねるもうんともすんとも言わない。うわーバッテリーか。しかも携帯電話の電波がないんですよ。なかなかの山奥にあるこの橋。さてどうしたものか。そうだ、と思い出して橋向こうのバス停に駆け寄るのですが間の悪いことにもう時間は終バスが出てしまったあとでした。山道をとぼとぼと歩いて3時間。時間はもうすでに21時。えーっと、終電、間に合わないよね。うちの奥さん、遅番で帰りは22時過ぎるし、、、結構なピンチだなこれは。さあ、困った。

それで、覚悟を決めてクルマで寝るかと腹を括ってしばらくして、地域のパトロールカーが通りかかったんです。手を振って止まってもらい事情を話したらジャンプコードを出してくれてエンジンをかけてもらえました。ああ、命拾い。クルマなんか通らないもんなあ、この場所。

そんなちょっと変わった記憶がいくつか残るこの橋。夜中に見るとなんだかおっかないんですが、心惹かれるものがあります。

ブレーストリブアーチと呼ばれるアーチ橋で、長さ123m。1957年建造。東京都水道局の管理下に置かれているようです。湖を沿う道路、カーブの後に赤い橋、トンネルと続くリズムの中で、あいだに突如山中で視界に飛び込んでくるこの赤い橋、というのはいつ通っても不思議な気持ちになります。

橋初心者のわたしなんですが、調べると奥多摩には「奥多摩湖5橋」というのがあとかないとか。峰谷橋もその一つと数えられるらしい。今度数えてみようっと。

近くには「麦山ドラム缶橋」という浮き橋があるそうです。現在ではドラム缶を使った浮子は使われず、専用のものを使ったより安全なものになっているよう。そういえば何度かみてるな。夜通ることが多いので記憶が薄いんです。

橋の袂にはさっき話に出てきたバス停があって、その向かい側に5〜6台が停められる小さな公営駐車場「峰谷橋無料駐車場」があります。トイレもあるのでいつも重宝しています。そう、わりといつも、なのよ。そうか、もしどうにもならなかったらここの車椅子マークのトイレに立てこもるという手もあったなあ。緊急なので。

奥多摩湖に沿うように走る国道411号線。田無、小平、瑞穂町のジョイフル本田など立ち寄ったりして、そののち青梅と走り、川沿いの411号、好きな道なのです。気が向くと走るためだけに峰谷橋にたどり着くこともあります。たもとの峰谷橋無料駐車場にクルマを止めて少し休んでまた走って。大月に降りてみたり、甲府まで走ってみたり。ここで引き返すこともあります。

 

ちょっとしたわたしの中のチェックポイントになっているんですよ。