知る人ぞ知る、なのであります。地下駐車場に中華料理店があるんです。
カレーなしよ。
おおよそ、地下の駐車場に店が突然一軒だけぽつりとあるなんざ聞いたことがありません。
八重洲の地下街の駐車場とかああいう大きな飲食店街もある巨大地下街とそれに隣接する駐車場と、みたいな感じではないんです。
ゴリゴリのハードコアなデカくて薄暗い地下駐車場の階段脇に、ただもうおっつけたように中華料理店がひとつだけ出現するのです。あれ、ここ一般民間人が入っていいのか?と自信がなくなるようなシチュエーション。
そのインダストリアルな、いや、違うな。もっとなんか殺伐とした感じの天井の低いアナグラ的な場所。そういう場所にちょっと昭和の雰囲気をたたえた中華料理店が突然あります。
「中国料理 帝里加」
というここ、なかなかたまらないものがあるねえ。
人の話では知っていたんですが、行く機会がなかったのです。たまたまテレビ関係の仕事があって、築地に来るチャンスがありました。タイミングよく思い出して寄ることに。
お店に入ってみれば、いたって普通、、、じゃないよなあ。そういうわけないよなあ。
その天井の低さと、なんとなくですが地下駐車場の薄暗さがそのまま店の中まで続いてきているような雰囲気の店内。うむむ、これ、好きな感じ。今はなき香港・九龍の九龍城の中にあってもまったくおかしくないしね。いまなら彌敦道(ネイザンロード)の重慶大厦の3階に以下同文。
わたし的にはこういう感じ、ちょっと居心地が良い感覚があるんです。腰が落ち着くなあ。アジアの片隅で、という感覚です。吉田拓郎さん、若い頃にたくさん聴いたよ。
さてと、
「酢豚定食」
でも注文してみることにします。
至って普通の中華料理やさんの酢豚がやってきます。それがいい、それでいい。そういうことです。
ちょいと片栗粉多すぎの甘酸っぱい餡もなんだか嬉しくなるのです。いい意味で「ダサい中華」というものはそのシチュエーションと相まってたまらなく魅力的になるのですよ。悪口じゃないよ。愛を込めて、ということです。
辛い搾菜で白飯をやっつけてると東京汐留にいることが信じられなくなってきます。
これはなかなか良い場所だな。今度はクルマで横付けしてみたいね。
夢だったのかなあ、と振り返るとやっぱり駐車場入り口の扉の向こうには赤く光る提灯がぶら下がっていました。