スパゴに焦がれていたんですよ。あの鬼気迫る旨さのスパゲティを食べたかったんです。わたしの甲府方面を通りかかる用事だと、いつもどうにも時間が合わなかったんだよね。
カレーなしよ。
この日はスパゴのランチタイムにシリアスに時間調整をして高速道路を使って間違えのないよう、辿り着きました。ちゃんと狙わないとダメだな。
で、やはり素晴らしいものであると再認識するわけです。
「スパゲッティ カレッティエッラ」
を選びました。実は前回も同じメニュー食べてます。
シンプルなトマトソース、と説明にあるんですが、そんな単純なものではないね、これは。シンプルな作りで良いパスタと良いオリーブオイルと良いトマトを上手なバランスで組み上げてあります。
ガーリックがまったくもってこれ以上でも以下でもない分量を精密に効かせてあります。トマトとそれが合わさって強いパンチとなってファーストアタックとしてあります。が、ふた口目からはもう麺自体の虜になるんだよね。ああ、たまらない。
何をやりたいのかが食べるとわかるすごい料理で、スパゲティ自体、麺そのものを食べさせるために調味、調理のチューニングがあるといって過言ではない仕上がり、そう感じます。料理ですからどちらが主、ではないと思うんだけど、そう感じちゃう。
言葉にするのも馬鹿らしいんですが、まず、麺がうまい。
ひと口目でトマトとガーリックのファーストアタックがやってきて、ふた口め以降「そうではないぞ、ファーストアタックのあの味はしばし忘れて麺を噛み締めろ」と皿の上から声が聞こえてくるんです(妄想)。
強目の熱さ感じるパスタとトマトソース。その熱さも体験のうちで、温度、強い個性のソース(本当はソースとパスタを分離して語るのはナンセンスだとは思うよ)、麺の旨さと順番に気持ちを砕かれ、持っていかれます。ああ、もうね、くだらない言い方を敢えてしましょう。今まで食っていたスパゲッティと呼ばれるアレは、なんだったのだ、と。くだらなさに自ら呆れつつ、しかしそれが事実なんだよ。
スパゴのこれは本当に抗し難い魅力のあるスパゲッティなのです。シンプル、しかし簡素とか単純とかいうものと正反対の顔の向きがありました。
同行の妻は「ジェノベーゼ」。ついついよくあるアレを思い出すわけですが、否。ちっとも緑色ではなくて、繊細な調味でクセはないのにきちんと個性的でまたもシンプルという言葉の意味を考えさせられます。シンプルというのは簡素なのではなく豊かに削ぎ落とされたものなのだ、と。なるほど、要素の一つ一つを磨き上げて意志ある組み合わせで完成させたものには圧倒されます。
今回もカウンターの赤い招き猫に挨拶できなかったなあ。彼が佇むそこは常連さんの定席なのだよね。
とても丁寧な物腰のホール兼任の男性も、マスターの落ち着いた物腰も変わらずで大変心地よかったです。
裏の手洗いへの廊下の異空間さえも愛おしい。
ついつい頼む赤いスパゲッティ。
今回夜のメニューを初めてみたんですが、プッタネスカがあったよ。
あれが、食べたい。