甲府の「マサラアート」は記憶にいい印象が残っています。きちんとレストランスタイルのインド料理を出してくれる、甲府において貴重なお店。そういう認識です。
カレーですよ。
そして、たまに本当にいいお店なのかを確かめにいかねばいけないと思っています。人に薦めるなら間違っていないかを定期的にちゃんと確認しないといかん、など思っているんです。いいなとおもっているお店、おすすめしたいお店が膨大なのでいささか追いついていませんが。全部はなかなかカバーできないなあ。
甲府の中小河原にある、
「マサラアート」
にはディナーで訪れて気に入ったんですよね。その後、いちどランチのブッフェにお邪魔したことがあります。実はその時にちょいと疑問が残ったんだよな。それはいいお店なのでランチブッフェは勿体無いんじゃないかなと思ったこと。
どうしても客層、品質、店の雰囲気などでディナーのイメージからの乖離が少なからず起こるよね、ランチブッフェは。とはいえ営業と集客はとても大事なので、こういう施作も必要だということでしょう。
そんなわけでこの夜はディナーでやってきました。そういうところも経て「こなれてきている」という空気がお店の中にできていました。
メニューを見るとリコメンドが強くされる、
「カレー専門店の「チキンスープカレー」」
というのがあったので、それを注文。
ごはんは別になるのでピースプラオとしてみたよ。ピースプラオ、あれか、グリンピースのプラオか。良さそう、良さそう。好みに合いそう。
実はこのお店を気に入った理由というのがクラシックなインド料理のメニューラインナップ。それがきちんと美味しかったからなんですが、そういう中にこういうジャパナイズされたメニューが入るようになっていました。それが「こなれ感」に繋がったのかもしれないな。どちらのメニューもあるのだから悪いことではないと思います。
カレー、まず楽しいのがその量。
札幌のスープカレーなどではお馴染みのどんぶりいっぱい分のスープなわけです。インドレストランで小さなカトリにいくつか煮込み料理が出てくるスタイルを知っているだけに、カラヒなどの鍋よりももっと大きいどんぶりで出てくるのはなんだか面白い。なんかちょっと笑っちゃうんです、楽しくなってきた。
北インド料理を提供するこのお店でこれに出会うとなんでだろう、ちょっと下世話な感じがあって面白いんですよ。スープカレー専門店ではそんなこと一度も考えたことがなかったんだけどね。思うにムガル料理などの宮廷料理やレストラン料理のイメージが頭にあるからかもしれないなあ。宮廷料理で大鍋どーんと出して「王様、どうぞ」はないもんね。
ハーブやスパイス使いにキラリと光るハイライトを作りつつ、鶏出汁のいいところをぐっと前に出してきていて巧みです。なるほど、と思わせるものがあります。インドカレーではなくちゃんとスープカレーになっていることに感心してしまいます。そういうスープカレー然としたものにインド人コックさんたちのセンスも上手に乗せてあるのはいい。いいねえ。
スープカレー6、インド料理4くらいのバランスで、これはセンスがいいと感じさせます。
ごはんがなくなっても美味しいスープとして最後まで飲めるのは特筆です。
ごはんといえば、ライスはピースプラオを頼んだんですが。マタールジーラライス、とでも呼ぶとより近いかな。これが旨かった。薄塩でクミン炒めのプラオです。そこにグリンピースがたくさん入るんですが、これがどうにも旨くてねえ。単体で食べてもいいくらいで、スープカレーの方もただそのまますすってもおいしいというバランスで完成しているので、セパレート食べで全然いけるんです。
混ぜたり合わせたりしないで和食的に三角食べできちゃう。わざわざスープにプラオを浸す必要はなかったなあ。これまた面白いなあ。
以前はガチガチのインドレストランの感があったのですが、いい意味で裏切られる感じのジャパナイズメニューが増えていてわかりやすくなってました。これは大事なこと。
オーセンティックもクラシックも、お店が存続してナンボなのですから。
お店が存続するからこそ、その店の味が永続的に手に入るということだからね。
ちゃんと売り上げを立ててなお、矜持を失わないというのは大変なことだと思います。
良いお店に恵まれた甲府の諸兄に於いてはぜひ大切に通って欲しいレストランであります。