なぜだろう、久しぶりに感激したカレーに出会いました。山帰りのことです。もちろん足で登っていないんだけどね。
カレーですよ。
なので、峠帰りと言った方が正確かもしれないな。クルマで峠とくれば、のアレ(D)ではないよ。多少そういうのを楽しむところもあるにはあるのですが(スポーツドライビングは楽しいよね。ポールフレール先生尊敬しております)、道中基本はのんびりドライブ。峠からの景色を楽しんだり、小さな空き地を見つけてはクルマを止めて写真を撮ったり。そんな、山帰りでした。
朝、秩父の町に降りてきたのです。昨日は楽しい夜だったな。
日野でガソリンを満タンにして八王子から入って陣馬街道、和田峠を越えて上野原へ出ました。そこから甲府まで下道で走り切り、夕食を済ませてからまた峠へ入ります。大菩薩、柳沢などいくつかの高低差を楽しみながら、少し眠くなってきたところでリアシートを畳んで寝床を設えました。それが道の駅たばやま。
車中でのんびりして、まだ暗いうちに起きて移動を始めるもまだまだ眠かったな。それで、安全をとって雲取山の登山道の入り口あたりでまた仮眠。その後奥多摩経由で青梅秩父線を走り、秩父に到着、と。楽しんだなあ。
それで、秩父。秩父はあまり詳しくなかったんですが、来てみるとなかなか趣のある町で路地などもちょっと気になったりして、クルマを降りて歩いてみたくなる魅力があるねえと感じました。
そこで見つけたのがカレーの専門店。
「カレー専門店マジョラム」
屋号にマジョラムの名前をつけるのは珍しいな、とかなんとか思いながらたどり着きます。
おお、洒落た一軒家レストランだね。建物のカスタードクリーム色と店頭を飾る大きなゾウさんの顔(良かった、ちゃんとアフリカじゃなくてアジアゾウの顔だ)が印象的。
扉を開けるとシックな店内。自然光が穏やかに入ってくるのもいいし、奥にピアノがあるのがちょっと気になる、どんなふうに使ってるんだろう。
いい感じ、いい空気です。
わたしとひと組いた客のオーダーが通り、しばらくするとおいしそうないいにおいが店中に広がり、おなかかぐうと鳴りました。
「季節のカレー カキとほうれん草のカレー ランチコース」
としたよ。
まずサラダ、きちんといいものが出てきます。野菜たちは新鮮でたっぷり。ドレッシングは過不足なくこちらもたっぷりで大変おいしい。和風の仕立てでもう少し食べたくなるあとひく感じがうれしいやつ。レンコン、いいな。タマネギのマリネも効果的に他の野菜と絡んでおいしさの幅が出ます。
カレー、これがまったくもって素晴らしいんだよ。おいしくてやられたなあ、の感があります。
仕立ては欧風。手が込んでいるのがよくわかり、香りが立体感を感じさせることに驚かされます。酸味甘味がまず感じられ、そのあとすぐにスパイスの複合的香りと程良い辛さがやってきて。
スパイスの香ばしさが鼻腔を刺激するからかな。思った辛さよりも口が辛くならないな、と驚きます。なのに刺激があると感じるんだよね。技を体感する思いです。しかし頭から汗をかかされる効き具合。ああ、スパイスがきちんと仕事をしている証拠だなあ。
カキとほうれん草はソテーされているものがカレーの上にのってきます。無造作に見えますが牡蠣の複雑な味がうまくまとまり、しかもクセを殺していない。そのクセとカレーソースの強さが組み合わせになるとすごい食体験となるんです。うむー、これにはまいった。
カレーソースというもの、いろいろな角度方向があると思うんですが、ここのこれは日本人が皆納得して尚且つこれは特別、と感じるものを持っているんじゃないかな。
日本人のカレー感は黄色と茶色。黄色は日常であったりノスタルジーであったりが補完してくれます。深い茶色はちょっと特別なカレー。日本人が好む西洋料理の手法が見える、高級感を想起させるもの。その特別の中の、さらに本物と受け取ったぞ。
静かに静かに、と意識したのですが、知らぬ間に唸り声が出てしまいます。恥ずかしいけど止められなかったよ。いやほんとうにすき、いい、おいしい。
驚いたのがデザート。パフェが出てきちゃったんですよ。えっ!頼んでないはず、、、と思って二度見しました。コースの説明にデザートとだけ書いてあって、もっと普通のものを想像してたんですが、驚きの手の込んだうれしいものが出てきてしまったよ。うう〜ん、驚いた。
チョコレートシフォンにクリームとシナモン。クリームはマスカルポーネとモカの味、かな。うわーこれまたたまらない。
会計で5000円札を出しました。本当は1800円、細かいのがある気がしていたんですが自信がなかった。なんの自信がなかったかというと、これが本当に1800円なのか、ということ。カレーの単品が1400円でそこにセットの1800円が追加なのではないかと思ったんです。違った。1800円だけでした。なんということ。あの高い高い満足感がわずか2000円切りで手に入ってしまったのか。いやこれダメだってば。
実はせっかく秩父まで足を伸ばしたのだから、とハシゴを考えていたんだよね。ダメだダメだ。そんな勿体無いことをしてはダメ。余韻も余すことなくからだとこころに取り込みたいもん。
少し町を歩いてみようかな。