日産の広報さんに、
「FIAフォーミュラE世界選手権第5戦東京E-Prix」
に招待をいただきました。さてこれ、開催場所はわたしの住む区内でした。驚くべきことです。超いつも帰り道で通ってる場所。
「東京ビッグサイト」とその周辺に特設コースを作っての開催。公道レースだぞこれ!!
ほらね、この通路。ギフトショーとかスーパーマーケットトレードショーとかそういうのに行く時に通るこの通路。ここを通ってるのに行く先はサーキット。フォーミュラカーレースを見に行くという不思議な感覚。おもしれえなあ。
筑波とか益子とか御殿場とかに苦労して足を運ぶんではなく、ましてや鈴鹿とか遠隔地ではなく。皇居の外周路、都庁の周辺とはいきませんでしたが、りんかい線やゆりかもめで楽にアクセスできる場所にサーキットが出現という驚き。辿り着くまでにへとへと、とかがないんだよ。これってかなり新鮮で面白い体験です。
青海のビッグサイト、実はたまたま数日前にクルマで通りかかって特設コースが作られてゆく様子を見ていました。この下の写真のスポンサーバナーが出ている場所そのもの。うちに帰る途中にそういうのを見られちゃう、都内で。日常の知ってる場所、知ってる道をフォーミュラカーが数日後にレースで走る。なんともはや面白い。ほらね、信号と横断歩道があるでしょ。これ、公道です。この日はサーキットのコースの一部になっていました。
それで当日。
たどりついてみればえらいことになってます。席はもちろん真っ赤なバナーが背中一面に広がる日産のスタンドなわけですが、その場所。そのスタンド、コースのコントロールタワー前、スタート/ゴールラインのまんまえなんです。とんでもない席だぞここ。なんかpixe8lProいっちょできたわたしは並み居るゴッツイ一眼持ちの中で肩身がせまい感じ、、、なんですが、彼らもストレートを駆け抜けるフォーミュラEに苦戦してたみたいでした。
ほらね、コースの向こうには東京ゲートブリッジが見えます。倉庫街だったり港だったりではありますが、みなさんがご存知の商業施設、公園などもある地域、都内での開催です。なんか感激するな。ここまで、都内開催、公道使用でのレースいうところに辿り着くまでに10年を要したそうです。
感激したのがね、考えるとそりゃ当たり前なんですがやっぱり感激するよね。スタート前のセレモニーが色々あるんですが、ここで当然「君が代」が斉唱されるわけです。国際レースだからね。開催国に敬意を表するわけです。ああ、ほんとうの国際レースが東京の公道で開催されるんだ、と思うと胸に沸々と湧き上がってくるものがありました。思想も何もない男ですが、やっぱ国歌斉唱があると強く胸に感じるものがあります。ちょっと色々な思いが絡んで涙ぐんでしまう。
そしてもうひとつ、こちらも驚くべきことに日本国首相、東京都知事もコースにやってきて挨拶のスピーチがあったんですよ。現政権の政策など政治の云々に関しては別と切り離して考えますが、こういうものがあってやはり積み重ねが文化の価値、資産になっていくのだな、と感じました。すごい、すごい。だから黒服が多かったのか。
スタートはセーフティカー(ポルシェのタイカンだったかな)が先導して静かに走行が始まり、ローリングスタートでいいんだっけ?セーフティカーがコースを離れてピットに入り、スタート。
観客席、とにかくがっちり盛り上がっていました。ニッサンのスタンドも、他も、お目当てのカーナンバーの車両が走り抜けるとどーっと歓声が湧き、旗が振られます。仮設のシティサーキットで見晴らし良い完璧なコースとはいかないのですが、どでかい屋外モニターがそれをフォローしてくれます。
観客は周回を重ねるごとにどのタイミングでマシンがグランドスタンド前に飛び出してくるかがわかってきます。あまり音がしないからね、車両が近づくの掴みづらいんだけどモニターの視覚情報でだんだんわかってくるのが面白い。なるほど新感覚だ。
ルールも面白いんですよ。予選は混走ではなくてコースを2台、1対1でタイムトライアルをする感じでマッチタイプの勝ち上がり予選(あ、そうそう、近藤監督の顔をスタンドで拝見しました。ふつうに一人で来て応援して楽しんでて好感度上がったよ。レース、好きなんだろうなあ、ほんとうに / そっちのマッチじゃない(笑))。デュエルマッチともいえます。
その結果でスタートグリッドのポジションが決まります。これがなかなかに面白かった。シティサーキットという特性上混走が大変(追い越しが難しい)なのでというところもありましょう。でもこれ面白かったぞ。その後決勝スタートという流れ。ニッサン、ポールポジション取った!!
フォーミュラEのマシンは実はシャーシはワンメイクなんです。すべてのチームが同じシャーシ(台車)をつかうワンメイクレースということですね。同じ車種で競うレースということ。ではどこで差を、というと最重要のチームの戦略ももちろん、エンジン=モーターやインバーターなどがチーム開発。サスペンションなど設計もできる幅があるそうです。
それと大きいのがバッテリーマネジメント。1%の差を強く意識して電費(燃費)をコントロールしながらゴールでピッタリ0%になるくらいフルパフォーマンスを使い切るような戦略が求められるようです。見づらいんだけど写真の屋外大型モニターにバッテリー残量とかが出てそれもおもしろい。それでハラハラさせられたりするんです。実況のアナウンサーもそこら辺すごく上手でね、うまく説明を入れてくれて楽しめました。
モーターの出力は350kW。そのなかで通常モード(300kW)とアタックモード(350kW)のフルパワーを使い切るモードがあって。駆動は後輪駆動。前輪にもモーターはあるんだけどそれは回生エレルギーを得るためのいわゆる発電機的なものです。タイヤもワンメイクでハンコック(韓国)の専用のものが選ばれています。そうかあ、ハンコック。最近はアゲのひととかオフの人が使うよねえ、軽バンとか。
それで、「アタックモード」ってのがなかなかおもしろくて通常モード(300kW)でレースが進みここぞのところでアタックモード(350kW)で勝負をかける感じ。ただそれを使う条件ってのがあってとあるコーナーに設定された「アクティベーションゾーン」という発動条件のコーナーを通過すると一定時間使えるというふうになってるんです。逆にそのラインを取らなければ「アタックモード」が使えなくてラインどりの瞬間なんかが他車が仕掛けるタイミングになったりする。いやなるほどねえ。これはなかなかに駆け引きが面白くなるな。
ニッサン、見せてくれたよねえ、本当に。予選でポールポジションを得て決勝スタート。バッテリーマネジメントとアタックモードの調整で本当に惜しくもマゼラーティのギュンターに刺されましたがローランド、興奮と熱狂をわたしたちにくれました。車体のカラーリング、桜が散らしてあってね。なんというか、そういうのも泣けてくる。誇りを持って世界に挑んでいる感がある。
はじめからいろんなところから聞こえてきた「予選で獲ったポジションから抜け出すのが大変」「前車をパスするポイントが少ない」たしかにそうですが、それでもちゃんとファイティングスピリットが見える闘争がありました。大きなバンプがあって1周ごとに車体が飛び上がったり、接触があったり。イエローフラッグ出るところまであった。そういうのを見て観客がどよめくのがやっぱりいい。モータースポーツの現場、なんだなあ。
音がしないとかどうのとかいう人もいますが、見にきてないんじゃないか。モーター音、あれは未来のレースという感じだし目の前を走るドライバー込みで840kgの物体が音無しで走れるわけがない。そういうことです。音と匂い、知っているモータースポーツとは違っていてそれが興味深いし面白い。モーターから出る高周波の音とスタンドの歓声。未来のレースだなあ、と感じます。マッハ号からマシンはやぶさの時代があって、そののちのアスラーダ(水素エンジンだが)からこっちの時代になってるんだなあ、と。おもしろい、おもしろい。楽しいぞフォーミュラE。
セミファィナルで、日産とマヒンドラが当たったんです。え、マヒンドラかよ!日印カレー対決か?!(笑)オレは断然カレーライス派!!そうかあ、マヒンドラかあ。イメージはトラックとかオートとか。あとジープのノックダウンのイメージだったんだけど。勉強した、驚いた。ピニンファリナ買収してるじゃない!えええ〜?!そうなんだ?あたしゃ昔の人だなあ、、、
そして表彰式。屋内なんだよねえ。屋内はチケットを持ってなくても入れる場所になっていて、ゲーミングコーナーやフォーミュラEジェネレーション3の車体展示とか、すごく広い休憩スペースとフードトラックがあったりで、何よりセンターステージのどでかいモニターでパブリックビューイングできるんですよね。それを見て、レースが終わるとウィナーがそのモニターの前にやってきて表彰式が行われて。なんか大サービスじゃんこれ。
こんなサービスもありました。わたしもちょっと優勝してみました(笑)
フォーミュラE、FIAフォーミュラE世界選手権第5戦東京E-Prixで分かったことがあったのです。
「モータースポーツ興味あるけどハードル高い。暑いしうるさいしサーキット山ん中だしわざわざいかないもん」という人が多いのだと言うこと。これはなんとなく思っていたんだけど、それが明確になった感がありました。楽ができることによって(屋内の飲食ブースや広大な休憩スペースでかなりラク。すごいいいとおもう)行こうという気になったり人を誘いやすくなったり。いいじゃん都市開催。そう思ったんですよ。
帰り道、改めて東京のど真ん中でFIA、国際自動車連盟のフラッグがはためいているコースを後にするときに何ともいえない感銘を受けました。
F1、WRC、WTCCなどのモータースポーツを統括する団体のフラッグです。
日本で初めての一般公道自動車レースの開催。チケットは3分で完売。そして日本メーカーで唯一気を吐くニッサンのレース参戦。「Nissan ZEOD RC」なんていう異形のレーシングカーをルマンで走らせるなんてことをやってくれてるメーカーならではだよねえと思うのです。電気でもスポーツ、なのです。
https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/131017-01-j
これまで日本での開催がハードル高かったものを打破してくれ、事例を作ってこれたことに大きな喜びと感謝を感じます。門前仲町に向かう帰りの都バスの中で、皇居の外周や都庁をバックに走るフォーミュラEの後ろ姿を想像してちょっと泣けてきたよ。
本当にありがとう、ニッサン。