すごい店が目の隅にちらりと入ってきちゃったのです。Uターンせざるを得ないものすごい吸引力。なんだろうあのオーラ。致し方なし、突入であるぞ。
カレーですよ。
いやこれいいな。好きな感じだな。いい看板だねえ。なんか謎のオーラ出てると思う。入るのはちょいと勇気がいるけどさ。
千葉でありました。八街。千葉にゆかりのある人でないと読めない、やちまたという場所。電車が走ってない旧街道の、またもう少し奥の細い道沿いという風情の場所。なんでだろう、見てくれはそういうふうではないのだけれど、昔の西部劇を思い出すんです。軽自動車がまるで馬のように店の前に並んでいます。
看板には
「美味テラス」
とありました。あとでラーメン評論家の山路力也さんが教えてくれたんだけど「びみてらす」ではなくて「みみてらす」らしい。
さてここでわたしの立場です。知らない土地にふらりとやってきた流れ者、それがわたし。爺さんばかりの客は小さなこの町の荒くれの連中か。ほら、想像ができるぞ。
わたしが入っていくと店の中の和気藹々として空気がシンと凍りつき時が停まります。すぐに喧騒が戻ってくるんですが、わたしは空気のように無視される存在。カウンターに近づきでバーテンに「カレー」というと「カレー?そんな名前の食べ物はここら辺じゃあ聞かねえなあ」といわれ放っておかれる、、、なんとこともなくですね、このあとの荒くれとの撃ち合いもなくですね、にこやかなねえさんがカレーを運んできてくれました。
さてやってきたこのカレー、実に、実にただしきカレーなのです。これぞカレーライスであるよ。
もったりして、チキンがたっぷり入って、もうこれ以外ないという王道、中庸の味。これでいいの。こういうお店で出てくる、期待されるカレーライス像がこれなのです。そういう寸分の狂いもないジャスト・ア・カレーなカレーライスが出てきました。喜びが込み上げます。こうこなくっちゃいけない。
カレーなぞ食べ歩いていると無意識にこういう正しいカレーライスを避けていたりすることが多いんです。面白いもの、珍しいもの、見た目がすごいもの、人の食べていないもの。そういうものをついつい優先するようになってしまいます。
そうではないの。それじゃダメ。これでいい、こういうのがいい、がここにありました。
ついていたテレビがね、すごかった。
大場久美子さんがインタビュアーで老人ホームを訪れその施設の設備を見たり入居者にインタビューしたりします。これはあれか、1社提供の紹介番組だったわけね。いや、他も少しスポンサーついてるのか。とにかくすごかったよ。謎の若々しいこぎれいな老人とかいっぱい出てきたし高尚なホビーとかクラフトのグループとか。
番組自体もそうだけどコマーシャルも相続関係、法律事務所、お墓、土地の売買、空き家処分と老人向けサービスばかり。途中で「このあとは大岡越前」とテロップが入ってとにかくライフを削られる。おもしろかったが削られる。いやわたしもぼちぼちそっち側ではあるけどさ。
いやはやどうにもおもしろ体験。
いいお店じゃないか。またこよう。