
もちろんカレー以外も食べるのです。しかもメニューのラインナップにカレーがあってもカレーではない料理を頼むこともあるんだよ。
カレーなしよ。
神田カレーグランプリ決定戦が終わった夕方。大したことやっていないけど、それでも登壇の仕事はそれなりにすりへるのです。体力という問題ではなくてね。聞こえないしノイズだらけの耳の問題をカバーしつつステージの各人に気を使わせぬよう。なかなかにすり減ってしまうな。

それで、なんとなく遅い時間まで関係者と話したり挨拶したり、お店の方に労いの声をかけたりなんだり。とっぷり暮れていい時間になったな。普段あまり麺類を所望しないわたしですが、珍しくなにかすすってみるかあ、と思い至ったんです。ラーメンなどそれほど気にしないカレーばかりのわたしなんですが、この日は
「お茶の水、大勝軒」
が恋しくなったんです。おしるのしっかり出たダシやつるりとのどを通る麺の完食に気持ちが寄っているな。よし「お茶の水、大勝軒」に行こう。多分この時間、この曜日だと田内川さんはいらっしゃらないはずだけど。また今度平日の昼間にあいさつがてらお邪魔せねば。

そう思いつつ、土日の夜のオールドメンバーの手になる「お茶の水、大勝軒」の雰囲気はなんともすきなんですよね。きちんとした仕事ぶりは当然なのだが、なんだか穏やな空気が漂う感じ。歴戦・老練な名看板から集まった老兵諸氏のたしかな働きぶり、なめらかで心地よく、出てくるのが遅いことなんてことはこれっぽっちもないんですが、何故か心安らぐゆっくり感があるんですよ。これが実に心地よくてね。


お客たちも殺気立っておらず、皆静かにどんぶりを抱えています。休みの日の夜ならではの空気感と感じます。
さて、なんだかあまりに直球で気恥ずかしさもありますが、やはり外せぬ
「もりそば」
を注文。つけ麺のルーツのような一杯です。


酸味と旨みがつけ汁の底で固く手を結んでいて一体感が強いものです。つけ汁をすすると酸味がたつのですが、麺に絡ませて引き揚げてやると具合よくバランスをするんです。うん、実に実に、おいしいなあ。
海苔、いつもそのラーメン店での存在意義を考えてしまうんですが、なんというか、様式美、伝統かもしれないなあ、ラーメンの海苔は。ネギは多ければ多いほどうれしいわたしなんですが「お茶の水、大勝軒」では「足るを知る」という言葉をを思い起こさせてくれます。ちょうどいい量ってもんがあるよね、やっぱり。

気がつけば舌に乗っかっては変化する味のことについて考えています。いやそれは今夜はいいんだよね。仕事じゃないのだから黙って好きなスピードで、ただうまい、うまいとすすっていけばいいだけ。カレーではないんだからさ。
