カレーなしよ(菊川 Bistro234 / ビストロ234)ブイヤベース、世界第3位の味。

どうも勉強不足でいけない。いつでもそう思うのです。

 

 

カレーなしよ。

 

 

以前食べあるきスペシャリストチームに所属していた時は毎月ジャンル別担当(フレンチ、イタリアン、焼きそば、餃子、バー、カレー等)の持ち回りで色々なジャンルのレストランで最上のシェフの解説と極上の食事体験などをさせてもらっていました。忘れ難い経験です。あのチームが解散となった後、本当はそういうものを自分で維持せねばいけないところなんですが、これがなかなかに難しいわけです。

そういう経験は大事なもので、カレーというふわりとしたジャンルにおいても別ジャンルを知っていると味、香り、料理の手法などつながるものも多く、料理のルーツが見えたりします。経験、引き出しあるからこそのセレンディピティがやってきたりもするし、いろいろと知ると知らぬとでは自分の仕事の深度と解像度が変わってくると強く感じます。

そんなことを思っているとジャンル外のうれしいお誘い。しかも最寄駅から3駅、、というよりも自転車距離。菊川の、

 

「Bistro234」

 

へのお誘いでした。南仏料理のレストランらしいぞ。実はらしい、とかそういうお気軽な話しではなく、大変なお誘いだったのですよ。

「Bistro234」オーナーシェフ寺岡昌三さんが3月15日、フランス・マルセイユで開催されるブイヤベースの世界大会に日本代表として出場、そのGeneralprobe / ゲネプロ = 通し稽古という意味合いも兼ねて出発直前に大会で提供するメニューを提供しようという趣旨の貴重な席だったんです。いやあ、すごい会で驚いたよ。

そういう趣旨であるため、世界大会のチームメンバー、高崎のフランス料理店「オリヴィエ」の狩野永次シェフも同日キッチンに立っていらっしゃいました。

これは門外漢がホイホイ行くと火傷をするんじゃないかなど心配するも、こういう時はいつでもホイホイ乗っかる姿勢のわたしです。そういうのに臆面なくホイホイのっかって経験値を上げてきました。なんどきでもチャンスは逃さん、という姿勢です。誘ってくれたのは富士吉田「アーヴェント」のパティシエールにして紅茶のエキスパート・中国茶のインストラクター資格も持つ輿石さん。仲良くさせてもらっています。彼女とのご縁も友人が繋いでくれたものでした。

さて、「Bistro234」。雰囲気良い店でありました。こじんまりして光がたくさん入って快適。キッチンが大きく面積をとってあるのが期待をさせますね。壁面の掲示なども派手でも下世話にもならずいい気分です。

それでね、ブイヤベース。

わたしは知らなかったんですが「ブイヤベース憲章」というのがあるらしいの。いわゆるガイドライン的なものでね、大変厳格。しかし料理というのは幅が広いわけです。家庭料理にはその家庭ごとのルールがあるしね。どんな人がどんなスタイルで作ってもいいわけです。とはいえ今回は世界大会、憲章は守られて然るべき基準となるのは当然です。ここは伝統というものの強さが出ます。

お魚は以下から4種が入っていなければいけない。カサゴ、白カサゴ、赤カサゴ、足長ガニ、ホウボウ、マトウダイ、アンコウ、西洋アナゴ。イセエビとセミエビも使用可能。鯛、ヒラメ、オマール海老、ムール貝類、タコ、イカ、は入れてはいけない、となっていました。地域の魚介で伝統的なものということでありましょう。

ほかに材料はタマネギ、じゃがいも、トマト、胡椒、サフラン、ニンニク、パセリ、塩とオリーブオイルにスパイスはフェンネルだけ。ベースの出汁=スープは魚介でとるわけですがこれも決まり事があるみたいです。

とはいえ各レストランや各家庭にそれぞれのレシピがあり、料理というものはそういうものですから砂浜の砂粒の数ほどレシピとアレンジはあるもの。世界大会は伝統を守るという側面とその伝統の範囲を越えずに競い合う大会なのではと考えます。

お皿がテーブルに届きました。

まず1皿目にスープドポワソン。南仏料理コースのスタータースープとして記憶しています。いや、かなり昔だったから定かではない、、かな。でもそうだと思う。フランスの沿岸地域の魚のアラ煮込みうらごしスープ、でいいのかしらね。すごい乱暴な説明だけど。ああこれ、素晴らしいぞ。

一緒に出てくるぱりんぱりんの薄いバゲット、、いや、これはクルトンかしら。それとルイユが一緒にやってきます。オレンジ色のディップソースです。これまた乱暴にいうとチリとガーリックのマヨネーズソース。これがね、複雑な味でとても面白いんだ。力強いんですが、サフランの香りがそう思わせるのか、下品だったり粗っぽかったりしないのです。ははあ、カレー脳にはなかなかの刺激です。舌のいつもの場所じゃないところを押される感じ。

ではバゲットでたっぷりディップしてひとくち。ああ〜いいな。さらにその状態のままスープドポワソンにざぶんと放り込み、ひたひたに沈めてやって。それを引き上げて食べます。ははあ、これはたまらないなあ。

 

シェフの解説なども間に入りつつ、次は2皿目。

料理がスタートする前に鮮魚の状態でさなを見せてくださるのがすごくテンションが上がって楽しいです。美しく輝くカマスやホウボウ。それを蒸し調理かしら。仕上がったお魚をシェフ自身がデクパージュ(切り分けと盛り付け)してくださるこの贅沢よ。お魚とスープの伝統的な提供方法です。

いや、うーん、ものすごくおいしい。

カレー舌をリセットしてくれるような滋味深く、夢のようなサフランの香りと「ただ強くとればいいというものではない」という声が聞こえてきそうなバランスを意識させられる魚介の旨味。これはすごいものだなあ。わたしたち日本人が好きな「甘み土台の旨み」にも逃げていないのも凄みを感じます。これも自由に先ほどのクルトンとルイユを浸したり、そこから流れ出るルイユの味わいとの変化、融合を楽しんだり。

本当にシンプルに大会での流れそのままに料理を提供してくださる時間でありました。ただもう、感銘を受けたひとときです。

 

追記

そして。

マルセイユで行われた記念すべき第1回ブイヤベース世界大会。日本、アメリカ、メキシコ、デンマーク、スイスなど世界各国からのシェフのエントリー。競技ルールは大変厳格。地元の魚を使用、伝統的レシピに基づく、スープと魚の提供はセパレートにて、必ずカサゴを用いることなどが求められます。

 

結果は寺岡シェフと狩野シェフのチームが3位を獲得。1位フランス、2位スイスに続く3位が日本。表彰台に日本が乗ったのです。素晴らしい戦果です。うーんまったくもって素晴らしい。

大会入賞に先んじて世界3位の味を体感できちゃったという話し。至福の体験でありました。