カレーですよ4453(あざみ野 あざみ野うかい亭)なぜ「うかい」にカレーが?驚きのお弁当。

うかいグループのカラーというか、一貫した柱としてその揺るぎのない世界観の構築というのがあると感じています。特に郊外店の世界観の作り込みには毎度気持ちを揺さぶられるものが大きくあるんですよ。ものすごいものだと感じています。

 

 

カレーですよ。

 

 

で、おやっと思う方もいらっしゃるはず。なぜ「うかい」がカレーですよ。のくくりの記事になってるの?って。「うかい」の各店にはカレーというメニューがありません。もう少し知っている人は「ああ、レトルトカレー のことを書くんだね」と思われると思います。どちらの方も、食通でお金持ちだわ(笑)「うかい」のことをわかってらっしゃるから。

ところが、なんですよ。カレー、あるんです。

仲良くさせていただいている大好きな広報さんがいらっしゃいます。彼女のお声がけで、この日はお弁当体験ということであざみ野の

 

「あざみ野うかい亭」

 

にご招待をいただきました。

 

お弁当ということだったのでピックアップがメインだったのですが、やはり初めに書いたようにあざみ野うかい亭のテーマ、世界観を見ていかねばならないでしょう。そういうお時間をいただきました。

うかい亭の郊外型店舗はわりとクルマ以外でのアクセスが難しいという感があるかもしれません。わたしもいつもクルマでおじゃまするんですが。(八王子大和田の「とうふ屋うかい」には電車とタクシーでうかがったことがあります。お酒、飲みたかったから)

とはいえ元祖である高尾山の山中にある「うかい」と「竹亭」もシャトルバスが出ていたりタクシーで数メーターと辿り着くのは容易いものなのです。怯まずいきましょう。

ここあざみ野うかい亭も多分に漏れずあざみ野の丘の上、というイメージの住宅街の中にあります。

エントランスを入り、凝った導線を持ってより深く広く見せているお庭を抜けてレセプションにたどり着きました。ここまでで十分にうかいの世界の中に入っていく感があるのが素晴らしいのです。

仲良くさせていただいている広報担当さんの顔を見つけてほっとします。やはりほんの少しだけ敷居が高いんです。実はそこが大切で、特別な体験をしにきたのだという思いを、そのほんの少し敷居が高く感じさせてくれる部分でちゃんと受け止めてくれていると感じるんです。背筋が伸びる、といえばいいかもしれません。

わざわざ店長が挨拶をくださり、館内を案内をしてくださいました。なんという贅沢。

うかいのエクステリアや調度品、展示されている宝飾などのコレクションはいつ体験しても素晴らしいものです。

ここあざみ野うかい亭のハイライトかもしれない、圧巻の出来事はエントランスを入ってすぐの筒型の建物で起こりました。梁の色や高い天井、雰囲気のあるヨーロッパの田舎風のいい空間だな、と思っていたら「実はこの建物、南仏で代表が一目惚れして解体、移築してきたものなのです」と店長が教えてくださいました。背中を電流が走ります。なんということだ、建物丸ごと南フランスから持ってきてしまったのか!

わたしごときでもこの雰囲気の良さを気が付かざるを得ません。そりゃあそうだ。だから「あざみ野うかい亭」のテーマは南仏です。

そのなかに和のテイストが少しだけ滲み出していたり、でもそれはインテリアではなくて日本人の美点である細やかな気遣いから感じられるものであったり。それはもう、幸せな空間なわけです。

さらに贅沢なことにシェフも同席してくださりひとしきり料理へのこだわりや取り組みなどについて伺うことができました。

うかいとくれば鉄板焼き料理のイメージも強くありますが、あの個室、半個室のカウンタースタイルの魅せる鉄板焼きのオープンキッチンの話しがすごかった。

 

驚いたのが、お弁当のガーリックライスの調理、あの客席のオープンスペースの鉄板で調理をしているのだとか。

ええ、なんで調理場でやらないのかしら。お話しを聞くとシェフの強い思いがあの場所での調理につながっているそうなのです。

 

1階の鉄板焼きの個室やホール的に使えるお部屋などの場所を見せていただいた後は2階へ。2階はスイーツブッフェとカフェが楽しめるラウンジ的な雰囲気の場所でした。

ここも素晴らしいです。光がたくさん入る室内なのにテラスラウンジ的な気分があって素敵です。

スイーツのブッフェがね、とっても魅力的なんですよ。うーん、これはいちどプライベートでお邪魔しないといけない。

さて、自宅に帰ってうかい亭のお弁当体験です。

まるでケーキを買って帰るような気分の素敵なバッグにお弁当を入れてくださいました。

 

そして、ふたたび、ですが、なぜわたしがレビューを仰せつかったのか、というと、カレーなのです。

驚いたよ。うかいがカレーとはこれいかに、なわけです。以前いただいた、うかい謹製のレトルト高級カレーは素晴らしかったなあ。

しかしあれはあくまでレトルトという範囲の中でのもので、お店ではカレーの調理と提供はしていなかったはずです。

 

聞けばこのカレーはお弁当の企画のためにゼロからメニュー開発をしたものなのだとか。驚かされます。

しかもカレーがセットされるこのコースとも呼べるお弁当は八王子うかい亭とあざみ野うかい亭2店舗でだけの取り扱い。希少なものなんですよ。

この「うかい特選牛ハンバーグセット」は¥5,400(税込)。セット内容を見るとこれはやはり洋食のコースと言えましょう。

うかい特選牛ハンバーグ、スパイスカレー、ガーリックライス、ピクルス、スープ(オマール海老のビスク または 牛コンソメ)という構成。

 

これらはお店では出していないお弁当専用のメニューなのです。わずかに名物のガーリックライスだけがその名前を共通としています。

さあ、おたのしみ。レンジアップの方法を丁寧に記載された説明を読んでその通りに温めて。

お弁当の箱から出したトレーがそのまま食卓にあげても全く遜色ないというか、それがあってうかいの世界観、的なもので。敷紙、カトラリーなども含めてお弁当といえどもいろいろと工夫を凝らしてその世界観の堅持というこだわりをまったくあきらめていないのが驚かされます。まったく素晴らしい。

オマール海老のビスク

ビスクであるのにミネストローネ。そんな感を覚える面白さがあるスープです。ビスクはクリームを強く使うものが多い中、純粋なエビのエキススープがうつくしく透明なままたっぷりとはいり、そこにたくさんの野菜を合わせてあります。香りと深いコクにうっとりさせられます。これ、雑炊にしたいな。別で白ごはん用意してちょっとやってみようかな。

ピクルス

野菜の食感がきちんと残っているバランス良い味のピクルス。酸味ばかりに振っておらず旨味が強いのが美点です。レンコンなど、サクサクと食感楽しく、他の料理とフォークが行き来する間に挟んでやるとよいリセット役をしてくれて、各料理の味が引き立ちます。プチオニオンなど食感も綺麗に残してあって、風味もタマネギのそれがちゃんとありもう少し欲しい、と思わせる良いもの。うーん、もうすこしほしい。香り良く、少しピリッとするマリネの調味も心地よい、しあわせピクルス。

スパイスカレー

さあ、カレー。うかいの作るカレー、いったいどんなものだろうと興味深かったのです。カレーソースは華やかな酸味を前に立てた刺激的で辛さもきちんとあるもの。おおっと思わされます。が、舌にピリッとくるのに辛さが口中に長く残らずに程よい間をおいて消えていく巧みな作り。深い旨味の土台を味わいながら目を閉じると遠くにハヤシ的、シチュー的なものがうっすら、ほんのうっすら見えます。なるほど、これはフォンドボー的なものからなのかしら。西洋料理の出汁感じる深みがあります。

そして、肉。お肉だよ。これがとんでもないんだよ。下品な表現をわざとします。「吸える」んですよこれ。

半固形と言い換えてもいいでしょう。それくらい舌触り柔らかでまあなんというか、官能的ともいうべきな仕上がりで、ものすごい。牛肉の脂の甘みと食感がセクシーで、ちょっと言葉にならないくらいです。驚くべきものがカレーに入っていると感じました。カレーソースとの組み合わせやソース量を考えるとごはんにそのままかけるのもいいですけど、このカレーソースですばらしいお肉をいただく、というスタイルで食べるのが合い相応しいのじゃないでしょうか。

ちらりと耳に挟んだんですが、調理長がカレーは作らないんですか?ととある方に聞かれたときに「カレーをなめちゃいけない。専門店があまたあり、そこの職人さんが身をすり減らしながら作っているものなんだから、おいそれと他のジャンルの人間が手を出して作れるものじゃない」というお話をされていたそうです。カレーという料理の幅やどこまで深く作れるかということを分かっての発言、そんなシェフもいらっしゃるうかいグループが初めてその厨房で作り上げたカレー。体験しない手はありません。

ガーリックライス

ガーリックライスがまったく素晴らしいのです。わかってました。リビドーにくる、と表現したいガーリック摂取の快感と、上品と下世話の際を下世話側に絶対にころばせない味の強さの絶妙なコントロール。これが、なんとあのうかい亭のいつもの鉄板で調理されているのだから恐れ入ります。

そう、美しい調度でまとめられたあの客席の鉄板、あるじゃないですか。シェフがそのパフォーマンスをわたしたちに見せつけてくださるあのステージ。あの鉄板、あの場所そのものでこのガーリックライスは調理されているんです。

実際目の前で見せていただきましたが、圧巻でした。

先ほども書いたのですが厨房でもできるはずの作業では?とマネージャーに伺うと笑いながら語ってくれました。当初やはり当然厨房の中で調理されると考えていたガーリックライス「シェフの強いこだわりで、お客様の前で調理するお店体験と同じものを持ち帰りのお客様に差し上げたい」とこの場所の調理を譲らなかったそうです。

その真面目さと心意気とこだわり、なによりも顧客に向き合う真摯さがこのガーリックライスを、このコースの持ち帰りを本物たらしめているということです。

 

これはうかいの各店が作り上げる「世界観」に大きくつながっていると感じられます。全く圧倒的だなあ。

うかい特選牛ハンバーグ

ハンバーグ。とにかくまず、ふくよかな香りが口の中いっぱいに広がるのがすごいです。

きめ細かく挽かれた肉がふわっと柔らかで、細かい挽き故に強く芳香をあげる幸せ。赤ワインの深みあるソースも効いています。

黒毛牛肉の旨味と脂の甘みが口に広がる至福の時間。なのに旨味と香りの引きが早いと感じます。

いや、ちがうな。旨味の余韻は残るんです。でもじゃまな脂っぽさはまったく口の中に残らない、そういうことだ、そうだ。

旨味の爆発とその爆風を風が吹いて一掃するという強弱のリズムが楽しくてフォークが進み、止まらない感じ。

 

付け合わせのソテーされた野菜も美しく、美味しく、ぬかりがないんですよ。ああ、これは至福。

とにかく素晴らしい。

なるほどうかい亭でいただくコースをそのままお家に持って帰った感がありました。これはかなり嬉しいものではないでしょうか。

コロナの影響もあるとは思いますが、それを外して考えてもあのうかい亭の料理をおうちで楽しめるというのは大きな嬉しさがあります。

たとえば高齢の方がいるご家庭などは、うかい亭へ出向くのが難しいこともあるかもしれません。

そういうときにこのお弁当は有効でしょう。何しろその世界観を丸ごとパッケージングしているようなものだからね。

 

お弁当のパッケージはそのまま食卓に並べてもなんらその価値を下げるものではない美しい意匠。そこに敷き紙(ランチョンマット)まで入っていて、さらにカトラリーは一瞬金属製かと思うようなデザインの美しいものが入っています。

まったくもってうかいの世界観をそのまま、完璧なわけですよ。

お弁当は難しいものです。外に持って出られれば、どんなシチュエーションで、どんな風に食べられるのか、お店はそれ以降そういう部分をお客さんにに委ねるしかないわけです。そういう中で、世界観の構築やサービス、レストラン体験をとても大切にしているうかいグループの各店は本当にここの部分を悩んだのではないか、と想像できます。

それを乗り越えてのパッケージとこの品質、味。

きちんとうかいの世界観が形作られているのです。これはほんとうに素晴らしい。体験、してみるべきものです。