弁当をいただいた。ちょっと、かなり、うれしいのである。そもそもこれを持ち帰る、弁当で食べる、という発想がなかった。
決めつけはいかん、といつでも思うが、やっぱり考えつかなかった。
カレーですよ。
弁当をもらった。お土産にもらったのだ。
お弁当をもらって帰る、という言葉。なんとなくイメージは「余ったので要りますか?」な感じ。
でもそれとは違うのだ。何しろこれは、
「デリー上野店」
謹製のカレー弁当なのだから。
ありがたいことにちゃんとわたしの好みを知ってのチョイスをしてくださった。
あれではない。わたしはカシミールではないのだ。一択、
「コルマカレー」
なんである。
しかしはじめて弁当として食べるコルマカレーはなんとなくよそよそしかった。
いつもの銀の皿に入ってくる黒いコルマとなんだか様子が違う。なんでだろう。なんとなくカレーソースの様子が違って見える。いやいや、コルマはコルマ。湯島からやってきたのだから本物だ。
ごはんにかけるとまた違和感。今度はなんだ。なんだろう。
なんか、うーん、言葉にするのはむつかしい。たとえれば風情、なのでであろうか。
食べればたちまち持っていかれるあのコルマカレーそのもの。おやおやこれは。
おもうにレストランは体験である。味ももちろん大切な要素だが、全部含めての体験だ。コックさんには怒られるのを承知で言うが、レストランは味は3割。それくらいではなかろうか。
あとは店そのもののパッケージ、それに人、店の人も客もその要素の中に入る。そこから出来上がる空気。そしてこちらの心もある。そのレストランを思い浮かべて、ではあの店に出かけよう、というところからが体験だ。
それこそがレストランで食べると言う意味であり、楽しさなのだとおもう。
あのシェフの顔を思い浮かべ、あの皿とあのカップに乗って出てくるいつもの料理があってあのウェイトレスが笑顔て持ってきてくれるのを楽しみに、あのいつもの落ち着く席を目指して出かけていく。
そう言う楽しみがあって、そしてその店のお弁当はその思いを少し補完してくれる。また店で席につきたいと思わせてくれる。
そこが意義だと思っている。
上野店のカウンターに着きたい。素直に今そう思っている。
追記
いただいたお弁当で言うのもはばかられるが、タマネギのアチャールはなんとしても添えて欲しいな、と切に願っている。「こっちじゃない」のだ。