珍しくそんな気持ちになったんだよね。なんでだろう。喫茶店でカレーライスでも食べてみるかと考えました。
カレーですよ。
喫茶店のカレーという言い方で括るのはナンセンスだという人がいます。うん、それ間違ってない。でも、喫茶店のカレーで括ることもできるのが喫茶店のカレーというもので、禅問答的になってきましたが、でも言葉の通りだと思ってます。
神田神保町の交差点におりました。となればすぐ裏手の路地に入るわけです。正しく喫茶店文化が脈々生き続けるエリアです。
そしてここらへんでカレーを食べに喫茶店に入るとなれば、そりゃあ正解の中の正解、
「さぼうる2」
に行くことになるわけです。
カレーかナポリタンか、迷いながらも「さぼうる2」に着地、今日は地下に通してもらいました。あの仄暗い雰囲気は好きなんですよ。落ち着くよねえ。
そしてやっぱり当初予定を遂行。
「ビーフカレー」
を注文しました。
喫茶店というのはあれだよ。ランチだなんだで食事など摂ると前屈みになるんだよね。なんか前屈みになる。そうじゃないですか?テーブルが低いからかもしれないね。席が狭いからかもしれない。あ、わたしがカレーばかり食べているからかもしれない、カレー、服につけたくないから。
そんなことを考えながらぼんやりとカレーを食べるのこそ、喫茶店の、さぼうるの醍醐味だと考えるわけです。
さて、カレーライスがやってきたよ。
カレーソース、つかみどころがあるようなないような。むかし風のぽてっとしていかにもお腹にたまりそうな雰囲気を醸し出します。これが意外や牛肉の塊と一緒に口に運ぶとその真価を発揮するんだよ。バランスが出来上がり、うん、旨い。ごはんが親の仇のようにてんこ盛りになってやってくるんですが、それをやっつけるに足るパワーがあるね。いい、いいな。
牛肉、うまいです。ビーフカレーかくあるべし、そういう味。かたまりで嬉しさ込み上げる量と大きさで、カレーではなくお肉の仕上げがなんとなくエチオピアのビーフを思い出すところがあります。どすどすという感じでカレーソースに沈んでいるお肉。それが大量のごはん、カレーソースと揃って胃袋に襲いかかってくるこの快楽。満腹間違いなしでしょう。ひとくち目から予感がします。
さぼうるのコーヒーは大昔とちっとも変わらないんだよね。それがホントに嬉しいのです。
わたしの舌はどうやら昔よりは多少は経験を積み、進化をしたようで、変わらぬその味と香りを若い頃に「苦くて木の味がするなあ」と思っていたところを「ナッツの入ったビターなチョコレートに似る」なぞ表現してみることが出来るようになりました。だからなんだという話しでもあります。
その「ナッツの入ったビターなチョコレートに似る」コーヒーに、途中まで飲んでから砂糖を入れてみたりミルクを足してみたりするわけです。つまりそれは古い喫茶店の作法を楽しむというやり方なわけで、こういうのはやっていいとわたしは思っています。
最後の最後にもう少し残ったミルクを足してやり、キャラメルのような味にしてやったコーヒーを飲み干すわけです。
黙って喫茶店の味を楽しんで、少し考え事などして、お店を出ました。
払った分以上の価値をもらって帰る感があります。
大変気分がいいね。