今夜は久しぶりに曳舟の猫六。久しぶりに会う人と二人。どうも猫六と彼女はセットになるのです。それ、うれしいのだよ。
カレーですよ。
いろいろと感覚がズレるここ2年。外食のクセや飲み屋に出かけるクセが薄れていて自分自身で驚いたりガッカリしたりします。そして誰かに会ってテーブルを共にする楽しみを忘れかけている自分に気がついて動揺したりもします。でも大事な誰かと時間を過ごすとたちまちその忘れていた感覚を思い出します。これはいかん、こんな大事な時間を忘れるとは、と反省するわけです。
たしかに外食は前よりも面倒や手間(あえて書いてる)が増えました。自分の身は自分で守る時代です。しかしその手間を厭わなければ忘れていたものを間違いなく取り返せます。大事なものはやっぱり大事なのです。それは変わっていないね。
さて、
「猫六」
芳谷シェフの久しぶりの料理。楽しみにしていました。
前菜盛りのセンスがいつも通りでとてもいいのです。
ホタルイカのこれはアチャールというべきかな、マサラ和えと呼ぶべきか。大変よい肴です。フリッターにつくソースもいいねえ。ピックルの食感もうれしい舌触りです。
砂肝のコンフィは一度試してもらいたい良いものです。なぜあの砂肝というやつがこの柔らかさ、この舌触りになるのか、と驚かされるからね。口に含んでひと噛みして考え込んでしまったよ。ししとうを一本、焼いて添えるセンスも素晴らしい。
ソーセージも、よかったです。ソースはチリコンカンに仕立てられて頷かずには居れないのです。
やっぱり芳谷シェフのセンス、好きだわ。
ラムの串、いただいちゃった。これ、素晴らしかった。驚いた。香りもいいしスパイスの調味調合が抜群にセンスいいし言葉もありません。鬼気迫るものがあります。チャパーティを合わせるセンスなんざもうね。いやあ、芳谷シェフすごいなやっぱり。
そして〆はカレーです。
ホタルイカのカレー
カレーソース(スープ)は粘度を感じさないサラサラのもので酸味が印象的。爽快感感じる抜けのいい香りと味。このスープの中にホタルイカが入るのですがこれが不思議なほどよく合うのよね。焼きネギが食感、香り共に実に良い感じでホタルイカの存在を強く感じる出汁の要素と相まって和風の印象。なのにどこからともなくラッサムという単語が浮かび上がるおもしろさ。ああこれ、ほかにない持って行き方だ。すごいなこれ。
レモンチキン
見た目は濃厚なのではという感があるのですが、たしかに濃厚という言い方もできるのだけどおだやかでしつこくない、軽やかな仕上がりです。意外や柑橘の尖った感じがしないのが上手なやり方。これもいいねえ。単品でサラッとやるなら、カレーライススタイルならこれがいいかもなあ。
アヴィヤル
アヴィヤルという料理はヨーグルトカレーと訳されることが多いように感じているんですが、芳谷シェフのこれは温野菜やサラダの類に近いのではないかしら、など思ってしまう仕上げです。
カレーソース、グレイヴィの中に沈む具材、ではなく和え物に近い印象。ごぼうの断面のざらりとした食感がなめらかに絡んだソースのつるり感と背中合わせになっているのが楽しい、面白い。野菜カットが適切なサイズできちんとそれぞれが所長してくる楽しさがあります。たとえばグリーンサラダの上に乗せてもいいし、サンドイッチに挟むフィリングにしても良さそうなものです。
ビールも気になった楽しいものを幾つも嗜み、よい気分です。ライオンスタウト、こんなに美味しかったっけ。
お酒を選び、楽しみ、少しだけ酔っ払って。他愛もない話が実はとても大切なものだったと気がついて。そういう大事な夜を過ごしました。
東武亀戸線で帰れるのサイコーだな。電車はいいなあ。お酒飲めるもんね。そんなに飲まなくなりましたが、気の置けないガールフレンドと色々なおしゃべりをして生き返ったような、深い海の底から浮き上がって一気に空気を吸い込んだような、そんな気分でした。
たまに心をゆるめるのはいいことです。