カレーですよ4888(初台 初台スパイス食堂 和魂印才 たんどーる)ご無沙汰謝罪。

しばらく前の話。去年の春だったかな、塚本善重シェフのレシピブック「ニッポンのインドカレー」が刊行されたタイミングで献本をいただき、ちょうどいいよなあ、と思って私の連載の取材に行ったことがあります。少し目を通したらいてもたってもいられなくなって初台に向かったというのが正直なところ。

 

 

カレーですよ。

 

 

簡単にいうとね「これはダメじゃん」そう思ったから(笑)

何がダメだったか。それはね、初台にある小さなレストラン、

 

「初台スパイス食堂 和魂印才 たんどーる」

 

そのお店の全部を書いちゃっているからダメじゃんって思った(笑)。いや、だってさ。

梅カレー、和ッサム、黒ごまカレー。たんどーるの根幹たるオリジナルの大事なレギュラーメニューをほぼ網羅しちゃっててレシピをバラしちゃってるんです。あの本、買わないと損すると思う。チャイプリンなんて割と新しいメニューだし。

何か文句の一つでも言ってやらねば収まらないぞ!、ついでに取材すっかと(笑)鼻息も荒く店の扉を開けたんだけどね、当の本人はケロッとした顔。

「この本はたんどーるの10年分の集大成だよ」と言います。まあ、そうだよね。

あい変わらず一番肝心なことは口を割らないイケズな男ですが(笑)付き合いもずいぶん長くなってて、あのニヤニヤの向こうの腹の中も見えてきます。多分ね、その時の連載記事にも書いたんだけど、このレシピはもう人に見せても良いと判断したんだろうねえ。これを置いてまた先に進もうとしているんだね。わかるぞ。

「一旦10年分まとめたよ、じゃあね」

そう言ってまたもわたしたちを置き去りに進むわけです。我が道を淡々と進む塚本シェフ。レシピ本ってのはね、それを読んで真似ても同じものはできない。いくら腕が立つ人でも、です。それで、誰も追いつけやしないのをいいことに進んじゃうんだ、塚本さんは。

現在カレー店を営む若いシェフたちは直接にせよ間接的にせよ、塚本シェフの影響を受けていない人は少ないと思っています。それはインド料理、スパイス料理に和の食材を融合するスタイルの開拓者たる男であるから。何より大病をしてそこから超人的努力の果てに復活、というタイミングで和と印の融合に加えて「体に効く食」というテーマに舵を切ったんですよね。

大袈裟じゃなくそれがなかったら現在の日本のカレーシーンは進む方向もスピードも今とは違っていたはず。

そう思ってます。

この日食べた料理、ナポリタンが登場ですよ。本のレシピにあった「オトナのスパイスナポリタン」。アジョワンとセロリシードというあまり使わないスパイスが大変面白いやつです。実はスパゲッティは塚本シェフのスペシャリテなのです。けっこう昔から、たまのパーティーで披露してくれてカレーより美味しいとか言われてガックしている後ろ姿を見てきました(笑)

「豚肉の甘辛煮(ルーロー風)」もレシピから。八角を使わないのにちゃんと魯肉の味、香りに仕上がる不思議。フェンネルシードだそう。

すげえなあ、相変わらず頭を使わされる楽しい料理ばかり。

相変わらず塚本シェフの研鑽は止まっていないようです。

過去記事書いてないで、たまには顔出さないとな。