一度食べて通おうと決めたお弁当屋さんが両国にあるんです。仕出し屋さんのお弁当。町の弁当店などとは一線画す、なんて言い方はほかのお弁当屋さんに申し訳ないですが、しかし。
格が違うよな。ここは。格、というより品格、かもしれない。
カレーですよ。
根っこが違うな、と感じるところがあるんですよ。それはお弁当を温かい状態で食べる想定がないということ。
ない、と言い切ってしまったんですけど、おおよそ間違いではないと思うよ。仕出し屋のお弁当は、基本的には温かくないままで食べるでしょ。再加熱という線もあまりないと思われます。だからこそその状態で美味しく食べられなければならないものです。それが仕出し弁当の当たり前。
「お弁当処つるや」
は両国駅の少し手前にあります。
古い仕出し店でカレーもやってるのが珍しいよね。そう、カレーがあるんです。そしてこれがまた出色の出来なの。まず、キーマカレーではなくドライカレーというのがいいよね。
「ドライカレー」
を買って帰りました。
これ、すごく価値があるお弁当なんだよね。なので、盛りつけ直しをしてみました。
うん、いいな、この盛り付け。
おうちでお皿に移してやったらなんだかあそことかアレとかを思い出すような見てくれになりました。
ドライカレー(ドライキーマ的)とかカレーピラフ(炒めごはん)の線引き論争なんてのがありますが、これを盛り付けたらどこらへんにそのラインがあるのか、なんとなくわかった気がします。
ちょっと粘度の高さと旨みから味噌などを思い出すんですよ。おもしろいなあ。〇〇餡とか〇〇味噌とか、そのものとは違う料理を餡とか味噌とかで例えて呼ぶことがあるでしょ?これ、ちょっとカレー味噌など呼んでみたくなるような食感と旨みなのです。
甘さ辛さの均衡に妙味がある良いお味です。甘め土台にピリリと辛く決めてきます。その甘さ旨みの向いている方向はカレーではなく、和食の鶏そぼろからやってくるものだとわかるんだよね、なんとなく。このお店の売りが何しろそぼろ弁当であるからして。和風な感覚があるなあ。まったく文句なしにおいしいです。
当然冷めても美味しい調整になっています。ペースト的ドライ仕上げで、たとえば惣菜として瓶詰めにしてもよかろうし、いや、そんなの売ってたら買うし買い占めるし。おにぎりの具材としても優秀です。まったくの逸品だよ。試しに完全に冷まして食べてみたんですが、脂っこさはまったく感じず、白メシはばさつかず。うむむ、本当にいうことのない状態でびっくりさせられます。
シンプルな構成、控えめなお値段。なのにこの美味しさと存在感。価値があるねえ。
わすれがたいお弁当というものはあるもんだなあ、と独り言。