
ここのところ甲府昭和にあるお気に入りの中国料理専門店に縁がなかったんですよ。何度か行こうとしたんですがその度にタイミング悪く早仕舞いや定休日に当たっていました。
カレーですよ。
蓼科での静養の帰り道、ふと思い出して出掛けてみると営業中!おお〜これ幸いとお店に入ります。うれしいなあ、ひさしぶりだよ。

相変わらずの個性的な外観が好ましいのです。ネオンのストライプで彩られた建物の屋根の輪郭がかっこいい。お店の前は駐車場になっており、お店が道路から少し引っ込んでいるんですよね。暗い駐車場の奥でネオンが灯るその外観はなかなかに魅力的なのです。
「錦記飯店」
といいます。店内は落ち着いた雰囲気。あまり飾り気がないのがいい。大衆向けの中華料理のざっくばらんな店よりももう少しだけ中国料理のレストラン寄り、というところか。畏まるような店ではなくカジュアルに楽しめる空気がある。

実はここ、特別なお店でね。初めてきたときは何も知らずに、だったのですが、入り口の看板や壁の新聞の切り抜きで知ったんです。20年ほどの営業を続けるこのレストラン、オーナーシェフ易錦燊さんは腕のある料理人。周富徳氏の弟子筋に当たる方なのですよ。

香港のトップクラスホテルでの調理経験を持っての来日、そこから聘珍樓池袋店料理長、御殿山ラフォーレ中華料理長という誰もが知る中国料理の生え抜き店のシェフを務め、それらを経て周富徳氏の店「広東名菜富徳」で彼の片腕とも呼べる料理長を務めあげたというね。燦然たる経歴を持った方なのです。食べると納得がいくんです。
土曜の19半にお店に入るもお客さんは一人。あらら、、少し心配になったんですが、それは杞憂。ちょうど凪の時間だった様子です。後からどんどんお客さんが入ってきていました。
ここで頼むものとくれば決まってます。
「特製咖喱牛腩飯」
だよ。これがここでのカレーライスの名前。中華カレーであるぞ。いいものなのです。厨房からカンカンと鍋をお玉で叩く音が聞こえてきます。湯気が大量に上がったり炎が上がるぼわっとくる音也圧が伝わってきて期待が高まります。

「特製咖喱牛腩飯」は大皿で結構な量が出てくるので思わず笑顔になってしまうのです。大盛り具合とごはんがみえないほどたっぷりとかけられたカレーソース。カレーライスと言う以外何も言えない堂々とした姿だねえ。愚直な茶色いビジュアルにやる気が湧き起こります。よし!いくぞ。

まずはカレーソース。中華スープの包容力と奥行きにクラシックジャパニーズカレーの味わいが重なるという味わい。酸味も少々、後ろに行けば行くほどその酸味が効いてくる面白さと不思議があります。独特で面白いなあ。
そして強烈にうまい牛バラ煮込み。舌をさわさわと撫でくるような柔らかで繊細な食感と強い旨み。うーん、気持ちも舌もグッと持っていかれます。下味、別調理の手間を感じさせる美味しさで凄みさえ感じさせてくる調味。きちんと煮込んで片栗粉でコーティングして旨味を閉じ込めて。噛むと柔らかで実にいいんだこれが。主役はこいつであったかあ。スプーンが止まらないよ。

レンコンのパリパリとした感じ、タマネギのシャッキリとしんなりのメリハリ感、マッシュルームの食感、ピーマンの苦味、ナス、タマネギの火入れなど具材も楽しいものばかり。各野菜に味や食感の分担があるな、と感じさせます。
そして食べ進める中で気がつくこと。酸味が前に出て主役を張る感じがとてもおもしろいんです。咖喱にしてカレーにあらず。なにかカレー味のカレーに似たものなのか、という感が面白いの。これぞ中華咖喱なのではと思わされます。なんというか、ちょっと自分の舌の力試しをされているような気分なのですよ。ああ、楽しい。

餃子もいいんだこれ。こういうお店なら本来は蒸しやスープに入ったものを選ぶべきなのでしょうけど、ね。でも好みだし、焼き餃子だと安易か他のお店との比較の基準になりそいうというのもあってね。なので焼き餃子を頼むんです。これも良かったぞ。

キャベツの自然な甘み旨みで舌を掴まれる感じ。優しい味でパンチ方面には振らず、味付けも肉汁も上品に上品に決めてきます。でもちゃんと個性があって忘れ難い。うーん、焼きでこれだけの美味しさということは水餃子であったら、なぞ想像させられます。いいねえ。

酢豚も頼んだよ。実はこの日の一等賞じゃないかと思ったんです。酢豚、実に素晴らしい。酸味を鮮烈に利かせてしかし甘さと合わせてまったく破綻無しの幸せと凄み。酢のとんがりを上手に生かしつつキツすぎない。舌からの味の引き上げも素早くて軽やかなんです。いくらでもいけるぞ、これは。いいなあ、酢豚。

そしてついて来たスープがものすごく上品なよいものでした。中華コーンスープ、素晴らしい味です。きちんとした中国料理店で出てくる端正なコーンと卵のスープ。ほぼあれで、もうすこし親しみやすく寄せてあります。別注文でフルサイズを頼みたくなるよこれ。こういうところからシェフの実力がひしひしと伝わってくる感があります。杏仁豆腐までしっかり上品。いうことがないなあ。

黙って食べるだけで「中華屋のメシ」ではなく「中国料理店での食事」と気がつくことができる味だったなあ。飾らないカジュアルな雰囲気で料理の品質の高いこれらが出てきて。しかも値段もカジュアル、いうことがないよ。


久しぶりに来れて良かったです。また来なくっちゃなあ。
