【コラム】夏の旅のメモ 前編

今年の夏は楽しかった。ちょっといつもより遠出の旅に出られたから。

SNSでガリガリと書きましたがSNSだと流れて行って検索しても出て来ずに見えなくなっちゃうからね。そのままをブログに載せておきましょう。SNSには出さなかった写真も入れていこうかな。少し加筆や修正もするかな。

 

【旅のメモ】そもそも。

そもそもなにが目的の旅か、そんなことを聞かれるたびにその質問を馬鹿にしていた。旅に理由などいらず、あるとすればみんな後付けだ。しかし、今回は違った。行きは飛行機で、帰りは自分のクルマで。

ちょっとおやっと思われるはず。そりゃあそうだ、自分のクルマ、なぜ飛行機で出かけた帰り道に乗って帰れるのか。ごもっとも。手元にある軽バンではない2台目のクルマ、遥か800キロの彼方に用意されているのだ。クルマとまだ直接会っていないのだ。そういうこと。クルマを取りに行く旅なのだ。珍しく目的がある。

 

【旅のメモ】出発。

飛行機、久しぶりだ。covid19の蔓延、並行しての感音性難聴、それら影響での仕事の減少といいことなしの数年間だった。それでも明日はやってくる。そうやっているうちに遠くへ旅する欲が薄れていった。そういう人も多いのではないだろうか。外食なんかにもそういう傾向があると思う。

それはともかく何年経っても変わらないのは成田の第3ターミナルが遠いのと途中の吹きっ晒しの場所は異常に暑い(冬は激寒)のと、第3ターミナルのメシはイオンのフードコートみたいだということ。とにかく自分はいま貨物みたいなもんなのだから、と言い聞かせてタラップ(これも「!」なのよ)を登るのである。

そんなであるが、空からの眺めはやっぱり楽しい。20年前の自分と違って視点が増えたから楽しみも増えた。紙の地図で見ていた日本の沿岸、実際に飛行機から見る景色。そのあいだに、Googleマップで俯瞰する日本が頭の中に作られて、Googleマップの画像を自分の目で改めて確認するような感覚がある。あれはやっぱりほんとうにあの形でここにあるんだなあ、的な感覚。楽しい。クルマと言えば山道、峠道でGoogleマップをみて次のカーブを予測しながらハンドルを切るなんてクセもついた。不思議な時代になった。

ふと機内誌を見れば、知り合いの顔が。プロはそのプロの力を持って色々なところに現れる。かくありたい。猪俣さん、お元気だろうか。いつもお世話になっている。

そうそう、機内のギャレー付近にあるあの箱、写真だと動かすなのオレンジのシールが貼ってあるが、あれ、持ってる。もったいながって使ってないが、使うことにしよう。

#旅のメモ #高知 #成田空港第3ターミナル

 

【旅のメモ】人に会う旅。

四国、高知に着陸。今回、目的は「人に会う旅」。クルマっていったじゃないか、というのもあるのだが、とにかくやっぱり人なのだ。そしてまた、高知にも知人の顔が。カレーを追いかけていくと必ず知人の顔に行き当たる。カレーは人を繋げ、もはや国境はない。

耳を患ってから人と会うことを極端に控えてコントロールしてきたため、人と会う機会も少なくなり行動範囲も狭くなった。わかってくださる方だけに会えればいい。会いたい人がいたらこちらが無理をすればいい。それだけなのだ。

妻とわたしの共通の友人に高知で会った。短いが楽しい時間だった。ずいぶん会っていなかったが彼女は時でも越えてきたように変わりなく、会話は昨日の続きというようなこれも時をかけるような変わらなさ。なんと楽しいことか。

食事をした店はいい店だった。「european kitchen MIRA」は各国料理を上手にミックスしてあり新しく洒落た店だがお値段控えめ。普段使いにとてもいい。

ホテル、前回も泊まった「7days hotel」。前回はよりデザイナー志向が高いプラスだったが今回は本館。こちらもいい。コンパクトでお手頃だが行き届いていて快適。

高知はなんだかとてもしっくりくる。街のサイズ感、街角の古い建物や、観光でも土産でもない生活の道具が売られる実直な店、路面電車。改めて東京という街の歪みが見えてくるような穏やかさがある。

ホテルへの帰り道、アーケードや辻々で、もうすぐ来る「よさこい」の練習が見られた。大勢が集まって熱心に振りを練習して美しいシンクロが見える。そういうものを見るにつけ、いろいろな報道があるが「日本は全然大丈夫なんじゃないか」と思ってしまう。

経済は先行き見えないが、ちゃんと人の心が残っていれば日本は大丈夫なのでは。東京での選挙を見るにつけ、とにかく東京はお取り潰し。それで日本はよくなりそうな気持ちになってしまう。

もう少しこの場所で時間が欲しい。が、明日はまた高速バスと列車で移動だ。

#旅のメモ #高知 #よさこい

 

【旅のメモ】高知のスーパーマーケット。

スーパーマーケットには相変わらず足を運んでいる。市場やスーパーには「その土地の生活」がつまっており、それを眺めるのは本当に楽しい。そんな数々をみた後に町を歩くとその土地がより深く見えてくる。

高知は魚。今回は魚を食べるチャンスはなかったのだが。売っている魚が美しい。明らかにわたしの家のそばのスーパーマーケットに並ぶ魚たちと輝きが違う。こういう場所で育ったら生の魚を嫌いにならなかっただろうな、とよく思う。

魚は食べなかったが寿司は食べた。スーパーマーケットで2割引き。370円ほどの「土佐の田舎寿司(ゆず入り)」というもの。野菜寿司、田舎寿司など呼ばれるこれ、どうにも旨いのだ。柚子を使った酢飯が特徴で爽やか、なんというのだろう。このセンスはたとえば「アンドシノワーズ」に近いんじゃなかろうか、など思う。アジアの暑い地域の感覚を感じる。すごく面白い。

いたどり、筍、茗荷や椎茸など。ハヤトウリや大菜などを使うものもあるそうだ。ごはんには米酢にゆずをたくさん絞って混ぜてある。これをシャリとして握り、野菜とまとめる。まったく素晴らしい食文化だと思う。ヴィーガンの人はこの寿司のことを知っているだろうか。

スーパーマーケット、楽しくて仕方ない。この寿司を買ったコーナーではかますの姿寿司などあって500円ちょっとで目玉が飛び出そうになる。ああ、端から全部買って帰りたい。ホテルでスーパーマーケット寿司祭りでも全然構わない。みんな美味しい。

ご当地パンも楽しみのひとつ。地元企業のヤマテパン、とてもいい。高知の帽子パンは有名。

ありがとう、毎日屋。

#高知 #土佐 #帽子パン #毎日屋 #田舎寿司 #ヤマテパン 

 

【旅のメモ】都市間移動。バスと電車。

東京の湾岸地区に住んでいながらついついクルマを使ってしまうわたし。よって電車に乗るチャンスが少ないのだが、それでも電車は好きだ。

高知、松山、今治はいずれも路面電車が走っている。これが街の風景のアクセントとしてとても強く記憶に残る。写真に電車が写っていなくても架線と線路が街の印象を強くする。空がごちゃついて、というのは昔からよく聞くし、そういうものを地下に埋める事業も自治体で多く行われていると聞くが、あのごちゃごちゃはその街の印象、記憶として残っていてもいいような気がしている。

事実、アニメーションなどでも電線でごちゃつく空を上手に使って印象的な画にまとめているものがいくつかある。うまいなあ、と思う。新海誠作品やエヴァンゲリオンなど何気ないシーンで印象を残しているのではないか。あと、インドの街角のメチャクチャな電線掛がわりと好きだから、かも知れない。

それはさておき、路面電車も都市間特急も心高鳴る乗り物だ。残念ながら路面電車に乗るチャンスが作れなかった。その代わり、ではないが少しだけ特急列車に乗ることができた。四国は鉄道での横断路線は多くない。高知から松山まで高速バスを使った。トンネルが多く、山の中がほとんど。なるほど、という感。

そして松山から今治までを特急しおかぜ18号に乗車。この路線、素晴らしい。海沿いを走る特急の窓の向こう、遠くに島がいつくも見えていかにも瀬戸内海に沿って走っている感じがとても良い。気分のいい列車の旅だった。

#旅のメモ #高知 #松山 #路面電車

 

【旅のメモ】クルマ。

ふとしたきっかけでクルマを譲り受けることになった。

詳細は端折るが、そのクルマを愛媛まで取りに行くことになった。クルマ自体も驚くべきものであったが(走行性能の高いコンパクトハッチだ)、それ以上に遠くにあるそのクルマを譲り受けるために出かけていく、自分の運転で持ち帰るというのがとても魅力的だった。

クルマをいただいた、というよりも1000キロのグランドツーリングの体験を、長距離にうってつけのクルマとセットでもらった、という感覚が強い。小さな軽バンで一晩で200キロほど、月に3〜4回ほどだろうか。そんなふうに走ることも少なくない日常なのだが6〜7年前の北海道半月のクルマ旅からこちら、まとまった距離をまとまった日数で走ることをしていなかった。大変に楽しみだった。

蓋を開ければいうことのないドライブ体験。先方のおうちで心温まる歓迎を受けしばしの歓談。この時間がかけがえのないものだった。友人でもあり恩人でもある尊敬する男。彼のお母様とお姉様のおしゃべりのひと時。何気ないおしゃべりばかりだったのだが、どうにも心に残る時間だった。なぜだろう。東京に生まれて田舎がなく育った人間の望郷だろうか。それともお母様自体のおしゃべりの魅力だろうか。

預かるのはお母様のクルマということで改めての緊張。コックピットドリルの時間を少しいただいてののち、出発した。まずは市街をすこし流す。

外国の車特有のハンドルは右に移設されるものの操作系はそのままというかたち。ウィンカースイッチが左にあるなどちょいと慣れが必要。コラムシフトのレバーが右についており、うっかりウィンカーを出すつもりでギアを抜いてしまうことも。とはいえ上手に調教されたクルマでそんなミスがあっても鷹揚に受け止めてくれて危険がない。手応えがあるいいクルマだ。

さあ、都市間移動にはいろう。

#旅のメモ #愛媛 #今治 

 

【旅のメモ】今治。

いい街だった。正直あまり時間を取れずにあまりみられなかったのが残念。珍しく海がいいと思ったのだ。わたしはどうも海に苦手意識があるのだが、今治の海はなんだか穏やかであった。海岸の向こうに島々が見える瀬戸内海という部分もあったのかもしれない。のんびりとした空気に魅了された。

その海岸に行ったのも偶然で、目的はあの有名な日本食研の世界食文化博物館とKO宮殿工場をみたかったから。残念ながら休館日であったがゲートの守衛さんが「せっかくきてくれたのだから」と焼肉のタレを2本、くださった。なんというか、こういう感じもいいなあ。人の気持ちがおおらかだったり優しかったり。生まれて育った場所であるが、東京は空気や人との距離などもういろいろとダメだな、と感じてしまう。

例によってスーパーマーケットにも寄ったのだが、豊かな土地であることがすぐにわかる。柑橘の類がたくさんあった。美生柑、みしょうかんと読むそうだ。地元産の大きな柑橘で東京ではあまり流通していない。食べたいなあ、買うかなあと思ったがあいにくのあと数日のクルマ旅、我慢をした。

大きくて美味しそうなスイカも我慢。赤、黄色、緑のグラデーションが美しい魚なども土地のもの。そうそう、のり。味付けのりがスタンダードだという話をうかがってプレゼントにもらったのだが、確認ができたのも楽しかった。たのしいぞ、「生鮮市場まるひろ」。

少しお腹が空いて、おやつがわりに太巻きを買った。これはおすすめをいただいた「さいさいきて屋」にて。この巻き寿司が異常に美味しい。魚が美味しいのだ。生魚、すっかり苦手となったのは、東京に生まれてロクな生魚を食べていなかったのが理由。一次産業に近い場所の素材はいうことなく別格だ。目から鱗がポロポロ落ちる。

写真を見てほしい。太巻きに入った魚が透き通ってる。こんなもの東京ではあり得ない。それが300円台とか。まったく豊かな土地なのだ。ああ、いろいろと楽しい。発見がある。必ず戻ってきて時間をたくさん使いたい街だ。

#旅のメモ #愛媛 #今治 #生鮮市場まるひろ #さいさいきて屋

 

【旅のメモ】しまなみ海道。

例えてみるなら、小さなモーターグライダーでアドリア海の上空を低く飛ぶイメージ、そう、あの映画のワンシーンのような感覚。なんて気持ちがいいのだろう。一つ一つの島に着陸してみたい。今回は先を急ぐ旅路、残念。写真、撮れなかったなあ。運転してるから。助手席にも乗ってみたい。

 

【旅のメモ】尾道。

ここも本当に15分くらいしかいなかったが(ひどいのだが)、でも立ち寄った。映画で強く記憶に残った場所だから。耳がよく聞こえなくなって映画を見ても昔のような感覚にはならなくなった。大切な場面でそれを盛り上げる音楽が流れても音階が全部狂うから。

でもそれとは関係なくいい空気の場所。必ずもう一度来よう。

 

【旅のメモ】奈良。

写真の一枚もないという、本当に寝て出発だけという有様。大切な用事が行先にたくさんあるから。もうすぐ三重に着く。すまないね、鹿の皆さん。

 

 

後編に続きます。