せっかく海にいるのでなにかお魚を、とやってきた定食屋さん。地元の人しかやってこないという感じの空気感に気持ちを掴まれてここに決めました。
そういう場所に他所者としてそーっと場所をもらう醍醐味。そういうのあるんだよね。これが楽しくて足で稼ぐ店探しがやめられないわけです。
「吉原食堂」
は銚子駅至近なんですが正直周りに盛り上がる感じのお店があるとか、そういう要素の少ない通りにあって、枯れた感じの雰囲気ある良店。これは心惹かれます。
お魚、どうするか考えたんですが煮魚が食べたいな、と思い黒板を見ます。煮魚は日によって魚の種類が変わる様子。それで、値段も連動するようですね。時価、ですよ。
この夜の煮魚は、皮はぎ。いいじゃないですか。定食でもらうことにします。
日は落ちましたがまだ早い時間で、お店もがらんとしています。これからお客さんが来るんだろうね。いいタイミングに入りました。ぼんやりとテレビのニュースを眺めます。外でこうやってテレビをやってると見入ってしいます。テレビ、もう15年どころじゃなく持っていません。
さて、出てきた盆を見て嬉しさが込み上げてきます。なんだろうこの小宇宙は。
ごはんはボリュームあるどんぶり飯で、定食かくあるべしという風情を湛えています。小鉢が縦に整然と、しかも3つも並び、その上その小さな器の中で別種がせめぎ合うものまであるという嬉しさ。
お魚、これまたいい。
濃い茶色に煮付けられた皮はぎはいかにも甘そうです。それが所望です。箸を動かせば骨離れ良く、身がぽろりと大きなまま骨から外れてくれます。洗濯板のような肋骨があるけれどこれもさらりと落ちてくれるのがうれしいですね。口に持ってゆくと甘さ強めなんですが優しさたっぷりの味でたまらない。これはたまらないよ。
骨からの身離れよいこともあるし甘い煮付けでもあるしで箸が忙しいんです。ごはんをどしどし求めてしまうからね。嬉しかったのは子持ちだったことほくほくして大事にいただきました。ああ、うれしい。
添えられたこんにゃくがまたいいの。同じ味で煮付けられていて土産に口の中を泳がせたまま店を出たくなる味です。
小皿、タマネギとニンジン、しゃけの酢の物が素晴らしかった。とても好みです。とてもいいな。甘酢仕上げでやんわりした酸っぱさで箸休めにちょうどいい。なますと酢の物の中間くらいの酸味だと感じます。しゃけがなんとも嬉しい。しゃけで生で酢の物。いいではないですか。
厚揚げ、しめじ、じゃがいもの煮付けがじつに上品。ほんのりした味付けにこれでなくては、と舌鼓を打つわけです。ほっとします。
ほうれん草のおひたしは醤油をたらしてやることに。流石のお膝元。醤油はヤマサでありました。銚子はヤマサの城下町なのです。
そんな場所でおひたしに醤油というのはなかなか感慨深いものがあります。
その脇にザーサイが添えられて味にアクセントをつけるのも、納得。
どうにも雰囲気の良い店で、ラフではあるが荒っぽいところがないのがよいね。もう少し海のほうに行くと漁師さんたちが通う荒っぽいがうまい店もあるそうです。
駅前だからか、ホールのお母さんの物腰からか、他所者がリラックスして満腹になれる良い空気でありました。
またこなくちゃね。
だって、メニューにカレーライスがあったし。それ、我慢したし。